【ソフトバンク、全国販売店の7割を元日休業に ドコモも年末年始の休み奨励】

2017年11月9日
産経新聞

ソフトバンクは9日、働き方改革の一環として、全国の携帯電話販売店の約7割で来年の元日を休業日にすると発表した。傘下のワイモバイルの店舗とあわせた約3500店のうち、ショッピングモールなどに入っている店舗などを除く約2500店が対象。
販売代理店に委託した営業が9割を占めるため、休業の強制はできないが、休業補償にあたる支援金を支給して休みを促す。勤務環境改善で、離職率を下げる狙いもある。

一方、NTTドコモは今年12月31日から来年1月3日までのうち、1日は休業日とするよう全国の店舗に奨励している。ドコモは今年の元日、全国約2400店のうち、東京都内を中心とした約400店を試験的に休業としていた。

全国に約2500店をもつKDDI(au)は、来年の元日営業については「検討中」としている。

ユニオンからコメント

大手通信各社が年末年始に休業日を設ける方針を発表したというニュースです。

このような動きは今後、あらゆる業種・業界に広がっていくでしょう。なぜなら、経団連が改めて行動憲章に書き加えた、SDGs(目標8)「すべての人々の働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」に取り組むことにつながるからです。

【企業行動憲章にSDGs 経団連】

経団連は8日、企業が守るべき指針を記した「企業行動憲章」を7年ぶりに改定した。企業にとって最も大切な経営理念に、国連が採択した持続可能な開発目標(SDGs)を採り入れることを求め、事業を通じて貧困や環境など地球規模の課題の解決に貢献していくよう呼びかけている。新たな憲章では企業の役割について、「持続可能な社会の実現を牽引(けんいん)していくこと」と明記。SDGsが目指す社会の実現が企業の発展にもつながることへの理解を深め、経営者に対し、高い倫理観を持って責任を果たすことを求めている。これまでは人権についての条項はなかったが、「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」との内容を盛り込んだ。国連が2011年、企業も人権を尊重する義務と責任を負っているという「指導原則」を採択したことを踏まえた。(2017年11月9日 朝日新聞)

2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連で採択されてから遅れること6年、経団連も「健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を整備する」「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」ことを目標に明記しました。

【ご参考】【企業行動憲章】日本経済団体連合会(PDF:216KB)

【ご参考】【ビジネスと人権に関する指導原則】国際連合広報センター

経団連に名を連ねる有名企業にとっては、ESG投資の急速な規模拡大や、人権問題が企業に与えるリスクを無視することができなくなっているのが実情なのでしょう。SDGsへの取り組みはこれからますます強まっていくはずです。

【ご参考】【経団連、国連の開発目標実現へ】

【ESG投資、債券で検討へ 社会への貢献で企業判断】

環境や社会問題に貢献する企業などに対して積極的に投資する「ESG投資」をめぐり、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が世界銀行グループと、債券分野への投資を見据えて共同研究に乗り出すことが分かった。GPIFは3月末時点で約145兆円を運用している。今春、国内株式への運用分のうち約1兆円をESG投資に振り向けた。株式に比べて債券分野へのESG投資は進んでいないとされ、共同研究を通じて、運用資産の約45%を占める債券への投資効果を見極めたい考えだ。世界銀行グループは途上国支援や地球温暖化対策などの投資資金にするため、08年度以降に計約49兆円分の債券を発行し、ESG投資を促進してきた。(2017年10月12日 朝日新聞)

【日本の企業も無視できない「人権マーケット」その拡大傾向】

従業員や会社に関わる人員の「人権」を軽視した結果、とてつもない損害を民間企業が被ることになるケースが相次いでいる。「民間企業が『人権リスク』についてより敏感にならなければ、今後、日本経済に大きな損失が生じる可能性がある」と指摘するのは、デロイトトーマツコンサルティングのコンサルタントである石井麻梨氏だ。

■日本企業はいまだ「人権リスク」に鈍感

「人権」という言葉から、みなさんは何をイメージするでしょうか。「途上国における子どもの人身売買」「紛争地域における少数民族の迫害」などのように、日本人にとっては日常生活とは離れたところにある問題を頭に浮かべがちかもしれません。しかし、人権問題とは、私たちにとって、もっと身近なものなのです。報道などでも頻繁に目にすることのあるセクハラやパワハラは言われなく人の尊厳を傷つける行為です。長時間労働や待遇の差別のような労務トラブルも不当に人を拘束したり、貶めたりする行為として立派な人権問題のひとつです。もし、自社のオフィスに障がい者が通行しづらい段差や物理的に入りづらい場所があるのならば、それも権利を侵害していると見なされる可能性があります。

■誰もが賛成、のはずなのに

さて、人権問題の解決には誰もが総論で賛成です。それでありながら企業における人権問題について政府や消費者、そして企業自身の取り組みが十分でない理由のひとつは、人権問題のビジネスへのインパクトがリアリティある形で理解されていないからでしょう。しかし近年、不幸な事件をきっかけとしながら、人権問題がビジネスにおいて極めて大きなインパクトを与えるものであることが認識されはじめてきました。違法残業労働で書類送検された大手広告代理店の株価は下落し、公的機関が同社の入札資格を停止しました。人権問題は「従業員や労組との小競り合い」のような軽い問題ではなく、経営者や株主にも直結する大きなビジネスインパクトあるものだという認識が出てきました。SDGsは政府だけではなく企業を主要な実施主体のひとつとして位置付けており、今後ビジネスにおいて人権課題への取り組みが強く要求されることは論をまちません。

■「ビジネスと人権」を巡る世界的な潮流

近年、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとした国際的な枠組みや「英国現代奴隷法」などの各国の法令策定に見られるように、企業がサプライチェーンにおいて人権に配慮することがますます求められています。世界的に人権対応の重要性が高まる中、日本企業においてはサプライチェーン上で人権侵害が発生した場合のビジネスインパクトに対する意識が低く、人権尊重への対応を行っていない企業が多いと考えられます。従来、人権保護は「国家の義務」として捉えられてきましたが、近年企業にも人権を尊重する義務があるとの考え方が世界的な潮流となりつつあります。こうした考え方は国際的な枠組みの指針になっているとともに各国の法令にも反映され、日本企業にも影響を及ぼしつつあります。

■人権侵害のビジネスインパクトを試算する

(日系自動車企業の事例)日系自動車企業のインド工場で2012年に暴力的行為や差別的発言をきっかけに従業員が暴徒化し、1ヵ月以上もの工場停止にまで至る労使紛争が発生しました。当該事例は、インド工場に勤務する労働者と班長との間での仕事のやり方についての口論がきっかけとなりました。班長がカースト名で労働者を呼び、労働者に対して暴力的行為や差別的な発言をし、これに対して労働者が暴力を振るいました。企業側は作業現場で労働者が班長に暴行を働いたことを理由に、事件を調査することなく労働者を停職処分とし、班長への処分はありませんでした。組合側は労働者の停職処分の取り消しを求めましたが、企業側が拒否しました。このような会社の対応に対して暴徒化した労働者が事務所を放火し、機材設備が損傷したことに加え、逃げ遅れた人事部長が死亡しました。結果、インド工場は1ヵ月以上もの間生産停止となり、大きな機会損失が生じました。仮に工場が稼働していたと想定してこの機会損失を算出すると、同日系自動車企業のインド子会社が失った売上高は約1,330億円で、2012年インド子会社単体売上高の約16%相当となります。(2017年10月12日 現代ビジネス)

「持続可能な社会の実現」や「高い倫理観を求める」と言うと、あまり身近に感じることができませんが、「年末年始に休む」はわかりやすいSDGsへの具体的な取り組みです。
「食品ロスを減らす」のような、簡単な取り組みから始める企業も登場し始めました。こちらも、SDGs(12-3)「 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」への立派な取り組み事例になります。

【イオン「食品ロス」削減へ取り組み】

イオンは16日、自社企画ブランド「トップバリュ」の加工食品の一部で、賞味期限を年月日表示から年月に改めると発表した。まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」の削減のほか、管理の効率化にもつながるという。イオンは、グループ傘下の約6000店舗全てで、食品廃棄物の発生量を2025年までに半減する目標も明らかにした。売れ残り食品や、トップバリュ商品の製造過程で出た廃棄物を肥料にリサイクルして直営農場などで活用し、農作物を店舗で販売。地域に応じた具体的な取り組みを今後、策定する。イオン以外にも流通業界では、食品廃棄物を減らす取り組みが加速している。セブン&アイ・ホールディングスは、イトーヨーカドーの店舗で売れ残った賞味期限前の食品をNPO経由で生活困窮家庭などに寄付している。ローソンでも売れ残った食品を肥料にリサイクルして地域の農家に供給し、収穫物を店舗で販売する取り組みを始めている。(2017年10月17日 産経新聞)

【ご参考】【食品廃棄物削減に向けた目標を策定】イオン株式会社(PDF:816KB)

出典元:産経新聞・朝日新聞・日本経済団体連合会・国際連合広報センター・現代ビジネス・イオン株式会社