【実質賃金、確報値もプラス 16年0.7%増】

2017年2月22日
日本経済新聞

厚生労働省が22日発表した2016年の毎月勤労統計調査(確報値)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年より0.7%増えた。速報値と同じで、5年ぶりにプラスに転じた。名目賃金にあたる同年の現金給与総額は0.5%増と3年連続でプラスとなった。物価の下落が実質賃金を押し上げた。

16年の現金給与総額(月平均)は31万5590円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は前年比0.2%増の24万256円で堅調だった。ボーナスなどを示す特別に支払われた給与は前年比2.4%増と大幅に増えた。

求職者1人当たりにどれだけの求人があるかを示す有効求人倍率は16年に1.36倍と1を大きく上回っており、1990年前後の水準になっている。従業員をつなぎとめるため、企業は待遇の改善に動いており、一時金の大幅増で対応した。

厚労省は「賃金動向は基調としてゆるやかに増加している」とみる。

2017年の春季労使交渉はデフレ脱却に向けて政府が経営側に賃上げを要請する「官製春闘」の色彩が濃い。基本給を上げるベースアップやボーナスなどの一時金は増加する公算が大きい。ただ働き方改革では長時間労働の是正も求められており、残業代の減少が賃金全体を押し下げる可能性がある。

足元では原油高や円安で物価に上昇の兆しがみられ、実質賃金に下押し圧力がかかっている。16年12月の名目賃金(確報値)は前年同月比0.5%増だった。

ただ、原油高や円安の影響で16年4月から半年間下落が続いていた消費者物価指数は10月に上昇に転じ、12月は前年同月比0.4%上昇した。その結果、12月の実質賃金(確報)は0.1%増にとどまった。名目賃金が物価上昇に追いつかなければ実質賃金は上がらない。

ユニオンからコメント

厚生労働省が2016年の毎月勤労統計調査の(確報値)を発表したというニュースです。

【ご参考】【毎月勤労統計調査 平成28年分結果確報】厚生労働省(PDF:844KB)

厚生労働省が2017年2月6日に発表した(速報値)との誤差はほとんどありませんでした。

【ご参考】【実質賃金先行き懸念】

確定した値は、給与総額で「正社員が0.9%の増加、非正社員は0.1%の減少」、総労働時間は「正社員が0.1%減の168.7時間、非正社員は1.6%減って87.5時間」でした。
非正社員の時給は上がっていますが、はたらく時間が短くなったことで給与が減っています。雇用者数は2.1%増加、内訳は「正社員が1.8%増、非正社員は2.9%増加」でした。

物価が下がっていることで押し上げられてきた実質賃金ですが、雲行きが怪しくなってきました。働き方改革では、長時間労働の是正が議論されていますが、労働時間全体が短くなったり、残業代が少なくなったりすることで給料が下がってしまう可能性があります。また、原油高・円安の影響で消費者物価指数も上昇し始めています。

為替・原油価格の変動や、政府・日銀が目指している物価上昇率2%の達成は、実質賃金に直接影響を与え、賃金を下げてしまいかねません。政府は同時に「はたらく人全体の給料アップ」に取り組まなければ、多くの人の生活が苦しくなってしまいます。「対策が後手に回っていないか」「政策のバランスに問題ないか」一人一人が注目していく必要があります。

出典元:日本経済新聞・厚生労働省