【平成28年度「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」を公表します】
2017年8月10日
厚生労働省
~新たに、過労死等が多く発生しているとの指摘がある自動車運転従事者、外食産業の企業と労働者や、法人役員、自営業者に対する調査を実施~
厚生労働省では、このたび、平成28年度「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業」の報告書を取りまとめましたので公表します。
この調査研究は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」において、過労死等の発生要因は明らかでない部分が少なくないため、実態解明のための調査研究が早急に行われることが重要であるとされていることから、平成27年度より実施しているものです。
大綱では、過労死等の全体像を明らかにするためには、雇用労働者のみならず法人役員・自営業者も調査を行う必要があることや、自動車運転従事者、教職員、IT産業、外食産業、医療など、過労死等が多く発生しているとの指摘がある職種・業種について、より掘り下げた調査研究を行うことが必要であるとされています。
こうしたことから、平成28年度は、自動車運転従事者、外食産業、法人役員、自営業者についてアンケート調査を実施し、あわせて平成27年度の委託事業で実施した労働者に対するアンケート調査について、再集計・分析を実施しました。
厚生労働省では、今回の調査結果等について、今後とりまとめ予定の「平成28年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況」に反映させていく予定です。
ユニオンからコメント
厚生労働省が、「過労死の実態を解明するため」に実施した調査の結果を公表しました。
【ご参考】【平成28年度過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書(概要)】厚生労働省(PDF:1.5MB)
調査結果から、「労働時間を正確に把握すること」と「残業手当を全額支給すること」が、「メンタルヘルスの状態の良好化」に役立つと分析しています。また、「週の残業時間が30時間以上」「ハラスメントがある職場」は、「メンタルヘルスの状態の悪化を招く」傾向にあると指摘しました。運送業や外食産業への調査では、長時間残業の原因は「人手不足」で、労働者の(ストレス・悩み)は「長時間労働の多さ」でした。
つまり、「働かせ過ぎと給料の未払いをなくせば、職場が健全になる」、「パワハラが横行する職場では、従業員に精神的被害がある」、「人手が足りないから無理をさせ、従業員は苦しんでいる」ということですから、当然と言えば当然の結論です。
解決すべき課題は、「多くの会社が違法行為を行っている」ことに尽きます。「人手不足だから、法律なんて守っていられない」といわんばかりの調査結果が厚生労働省から公表されました。
残業代の未払いを指摘され、支払われた残業代は、およそ10万人分の127億円以上に上ります。トラック・バス・タクシーなど運送業や旅客業に対する調査では82.9%の会社で違反が確認され、外国人技能実習生を受け入れた実習機関への調査では70.6%の職場で違反が確認されています。運送業でも外国人技能実習でも、もっとも多い違反が(労働時間・割増賃金の未払い)でした。
【ご参考】【平成28年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果を公表します】厚生労働省
【ご参考】【自動車運転者を使用する事業場に対する平成28年の監督指導、送検等の状況を公表します】厚生労働省
【ご参考】【外国人技能実習生の実習実施機関に対する平成28年の監督指導、送検等の状況を公表します】厚生労働省
過労・パワハラによる自殺が労災認定されたと大きく報道されても、違法な長時間労働や残業代未払いを繰り返す会社が一向に減りません。国内外から批判される外国人実習生についても、門戸を広げる議論ばかりで、現場の悪質化は深刻なようです。この現実から目を逸らしてしまえば、労働者の生命・健康を守ることはできません。
「会社は法律を守る」が大前提なのは「高プロ」や裁量労働制の議論にも共通しますから、労働者代表として政・労・使協議に臨む連合の責任は重大といえるでしょう。その連合が、「高プロ」をめぐり、「条件付きで容認」「容認を撤回」と新聞報道されました。一連の経緯について連合会長がインタビューに答えています。
【連合会長が大反論! 新聞はでたらめ】
――とにかくおかしな報道が重なっていて驚くばかりです。まず、はっきり言っておきますが、連合は一度も「高プロ」の導入を容認したことはありません。しかし政府は、労働基準法の改正に、過去2年間塩漬けにしていた「高プロ」などを一緒くたにして改正しようとしている。この「高プロ」は極めて筋が悪いもので、連合としては一貫して反対しています。というのも、結局は「残業代ゼロ」の方が正しいネーミングという内容だからです。長時間労働を是正するどころか、逆に助長させかねない代物です。これでは、連合が最も問題意識を持っている過労死や過労死自殺を防ぐことなんかできません。
――長時間労働をめぐって、真逆のものを一つの労基法改正という法案で決めようとしているなんて冗談じゃない。だから一貫して反対しているのです。そもそも、新たに法律で定めなくても、多くの企業で、企業側の努力で成果に応じた体系をつくり対応することができるし、やってきているわけです。それを無理に法改正する必要はないと考えています。
――もう一つ問題視しているのが「課題解決型提案営業への裁量労働制の適用の拡大」です。「高プロ」ばかりが注目されて、あまり知られていないかもしれませんが、今回の労基法改正には、「課題解決型提案営業」にも裁量労働制を拡大しようという内容も潜り込んでいます。今や、顧客の課題解決をしない営業なんてありません。したがって、約350万人もいるといわれている営業従事者が裁量労働制の網にかけられる危険性があるのです。
――そもそも、現在ですら、本来の裁量性の有無が疑われるような危険な運用が横行しています。勝手に「あんたは裁量労働制なんだから」とか言って、何時間もただ働きをさせるような事業者が、既にいっぱいいるんです。その結果、過重労働になったり過労死に至ったりするケースもあります。
──われわれも、コミュニケーション不足できちんと情報共有できていなかった点は大いに反省すべきところはあります。しかし、傘下の組合員は、報道ベースで知ったことに基づいて発言している。その報道自体が間違っているのだから、誤解がどんどん広がっていってしまったのです。それくらい今回、一部の新聞報道は間違いだらけでひどかった。問題は朝日新聞です。
──連合は是々非々だし、擦り寄ったわけではありません。言うべきことは言っているし、自分たちが思っている政策を実現するために主張は一貫しています。我々にしてみれば、政府の方がスタンスを変えてきたのです。
──連合としてやることはたくさんありますから、粉骨砕身でやっていくつもりです。また、今回の反省でもあるのですが、傘下の組合組織にも同時並行できちんと知ってもらう必要があると思っています。(2017年8月10日 ダイヤモンド・オンライン)
【残業代ゼロ、容認していない】
「残業代ゼロ法案」と批判してきた高度プロフェッショナル制度を巡って混迷を極めた連合。唐突な執行部の判断に対し、組織の内外から今なお疑問の声が尽きない。混乱の背景に何があったのか。続投が内定した神津会長に聞いた。
――高プロについて政府、経団連と「政労使合意」を結ぼうとした。連合が思い通りの合意を結べる可能性は低かったと思う。見通しが甘かったのでは。
「そうは思わない。最低限必要なことを要請して、筋を通すべきだと考えた」
――高プロの政府案に対して働き過ぎの防止策を講じる部分的な修正を求めたのに、高プロに反対したまま政労使合意を結ぶのはわかりにくい。「条件付き容認」と言わざるを得ない。
「修正に関する合意を目指したのであって、(高プロを)『容認』したとは全然思っていない。容認と報道されたが、それは誤解だ。『容認撤回』とも書かれたが、容認していないのだから撤回のしようもない」
――合意を結べば、連合が法案を容認したと見られる。そのリスクを考えなかったのか。
「『1強』政治の中で、我々としてどう対処していくかを考えていた。もちろんリスクを考えながらやったが、念には念を入れる必要があった」
――政労使合意の見送りは、責任問題にならないということか。
「そうだ。財界や政界で辞めるべきだと言ってる人がいるようだが、誤解に基づくもので、心外だ」(2017年8月9日 朝日新聞)
著名な作家は『グローバルスタンダードでは、専門職が成果報酬と引き換えに「残業代ゼロ」なのは常識で、そうなっていない日本の雇用慣行が異常なのです。報酬が成果にもとづいていないなら、能力以外の要素で給与や待遇を決めるしかありません。それは正社員という「身分」や男性という「性別」、日本人という「国籍」や勤続年数という「年齢」でしょうが、高い能力をもつ人材がこのような制度に魅力を感じるわけはありません』と週刊誌に寄稿しました。既得権にしがみつく連合こそが、日本社会を「破壊」し腐らせている張本人だと批判します。
連合本部にデモが押し寄せ、傘下の労組から不満が漏れていたのは事実です。しかし、連合が的外れな批判や政財界から上がる不満の声に耳を傾ける必要はありません。安倍政権がすり寄ったのか、連合がすり寄ったのかより、大切なのは現実をどう変えていくかです。
運送業者の8割以上、外国人実習生を受け入れている機関の7割以上で違法行為が確認されたのですから、多くの会社に「法令順守の意識がない」ことが浮き彫りになりました。
70~80%の会社が守らない法律は、既に有名無実になっているということです。
「まじめにルールを守っている会社がバカを見る」なら過労死が減ることはありません。連合は「どのように法律を守らせるか」「守らない会社にどう対処するか」を具体的に模索すべきでしょう。それは必ず労働者を守ることにつながります。
出典元:厚生労働省・ダイヤモンドオンライン・朝日新聞