【AI開発ガイドライン、総務省が公表・意見募集】

2017年6月20日
朝日新聞

総務省情報通信政策研究所は、人工知能(AI)の研究や開発にあたって考慮すべき9項目からなるガイドライン案を公表し、来月7日までパブリックコメントを募集している。

目的は、AIシステムの便益を増やし、リスクを抑えることで利用者を守ること。
(1)連携(2)透明性(3)制御可能性(4)安全(5)セキュリティー(6)プライバシー(7)倫理(8)利用者支援(9)アカウンタビリティー(説明責任)――の9原則からなる。

同研究所は7月中に案を確定。9月の主要7カ国(G7)情報通信・産業大臣会合や、10月にパリで開催予定の総務省と経済協力開発機構(OECD)共催の国際シンポジウムなどでの議論のたたき台とし、国際社会で共有するルールを作っていく。

ユニオンからコメント

総務省が、AI開発のガイドライン案について世間一般から広く意見・改善案を求めているというニュースです。

【ご参考】【AIネットワーク社会推進会議 報告書2017(案)に関する意見募集】総務省

【ご参考】【意見募集要領】総務省(PDF:268KB)

【ご参考】【AIネットワーク社会推進会議報告書2017(案)】総務省(PDF:2.08MB)

【ご参考】【AI開発ガイドライン案】総務省(PDF:250KB)

より良い「ガイドライン案の作成」を目指し、多くの人から意見を聞き、その結果を反映させることが「パブリックコメント募集」の本来の目的ですが、総務省のホームページから該当ページに辿り着くことは至難の業です。

総務省は「AI開発ガイドラインを策定すること」そのものに対する論点について、意見募集(平成28年12月28日~平成29年1月31日)を行っていますが、寄せられた意見に「辛辣な反対意見が多かった」ことが辿り着きにくくなった原因かもしれません。

【ご参考】【「AI開発ガイドライン」の策定に向けて整理した論点に関する意見募集に対して提出された意見】総務省(PDF:1.1MB)

「AI開発がどのように行われるべきか?」は、私たち一人一人の生活に関わってくる問題ですから、誰もが考えなければならない課題です。現実には、あらゆる場面でのAI活用が模索され始めています。

【AIで変わる採用選考 「活躍予測」もとにPC面談】

来年春に卒業する、大学生向けの採用選考が今月から本格的に始まった。人工知能(AI)の活用が広まるなか、採用で使う企業も増えている。採用にかかる時間や人手を減らすことができ、学生にとっても交通費や宿泊費の負担を抑えられる利点がある。ただ、「最後は人が判断した方がいい」という声も根強い。就職活動に詳しい千葉商科大学専任講師の常見陽平さんは「AIの導入で、企業の採用活動は効率化が進み、学生も出身大学などでなく、個人を見てもらえるようになる可能性がある。ただ、どこまでAIに頼るのか、倫理の問題も含めて考えるべき課題も残っている」と指摘する。(2017年6月5日 朝日新聞)

【ソフトバンク、選考にAI利用】

ソフトバンクは29日、来年4月に入社する新卒の総合職採用者の選考に人工知能(AI)を使うと発表した。インターネットを通じて提出するエントリーシートにある二つの設問への回答のうち、一つを日本IBMのAI「ワトソン」が採点する。IBMによると、採用活動にワトソンを使うと公表するのは初めてという。AIが採点するのは、昨年12月から受け付けているエントリーシートのうち、5月中旬以降に提出されたもの。約400人が対象とみられる。(2017年5月30日 朝日新聞)

ソフトバンクが採点に使う「ワトソン」の中身を日本IBMは公開していませんから、採用基準が明示されないということになります。1500人分のデータでは複雑な判断は不可能で、正しく評価されるのか疑問が残ると指摘する専門家もいます。就職の合否判断にAIが使用されるのであれば、高い透明性や説明責任が求められるのは当然です。AIの不正使用や独占対策への取り組みも始まっています。

【ビッグデータ独占防止 公取委、独禁法適用も視野】

世界中から集めた個人情報などのビッグデータを特定の企業が独占することを防ごうと、公正取引委員会が6日、新たな見解をまとめ公表した。人工知能(AI)技術の高度化を背景に、ビッグデータを活用した新たな商品やサービスの開発が広がる一方、ネット業界の巨大企業などが不当にデータを集めたり、データを囲い込んだりした場合、競争がなくなり消費者が不利益を受けることのないよう、独占禁止法の適用も視野に検討を進める。
昨年3月、ドイツ連邦カルテル庁がフェイスブックに対し情報収集の手法を問題視し調査を開始。こうした事例を背景に、公取委は1月、ビッグデータについて、競争政策上の課題を検討する有識者の検討会を設置し、議論を進めてきた。6日に公表された報告書では、個人情報保護法などに違反する「不当なデータ収集」は、独禁法適用の可能性もあると指摘。「不当な囲い込み」は、ネット上のサービスに限らず、顧客や事業者に正当な理由がなくデータを開示しないケースなどを想定している。(2017年6月7日 産経新聞)

【ご参考】【「データと競争政策に関する検討会」報告書について】公正取引委員会

AI技術はIT企業や研究者など限られた一部の人たちの所有物ではなく、いずれは多くの人の生活に直接関わりを持つはずです。私たちがAI社会を受け入れるために、高い倫理を要求し、セキュリティーやプライバシーへの配慮を心配するのは当然です。専門的な知識を持たない人が、自分の考えを発信できるのは開発段階にある今だけかもしれません。誰もが関心を持って、あらゆる立場から、一人でも多くの人の意見を届けることが必要です。

出典元:朝日新聞・総務省・産経新聞・公正取引委員会