【精神障害者、職場に支援役】

2017年6月5日
読売新聞

厚生労働省は、職場で働く精神障害者を同僚が支援する「精神・発達障害者しごとサポーター」を創設し、今年度中に2万人を養成する方針を固めた。

来年4月に施行される改正障害者雇用促進法に基づき、身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者の雇用も一定規模以上の企業や公的機関に義務づけられることに合わせた措置で、職場定着を支援する狙いがある。

サポーターは、職場内での見守りや声かけを通じてトラブルを事前に防止する役割を担う。精神障害者の行動の特徴や、仕事を続ける上で留意すべき点について、各地のハローワークにいる精神保健福祉士や保健師らから講習を受ける。

同法で障害者の雇用義務がある「従業員50人以上」の企業は全国に約9万社ある。厚労省は今年度から養成を始め、来年度以降も講習を続ける方針だ。

厚労省の調査によると、従業員50人以上の企業で働く障害者は昨年6月時点で47万4374人で、前年より4.7%(2万1240人)増えた。中でも精神障害者は前年より21.3 %増の4万2028人で、伸びが大きかった。

精神障害者は、職場になじめなかったり、心身の調子をコントロールできなかったりして、短期間で退職するケースも多い。厚労省には企業から「採用しても半分はすぐに辞めてしまう」といった声が寄せられており、職場定着に向けた支援策を検討していた。

ユニオンからコメント

厚生労働省が「精神・発達障害者しごとサポーター養成制度」を作り、今秋から講座をスタートさせます。

この事業の趣旨には「企業内において、精神・発達障害者を暖かく見守り、支援する応援者となる(精神・発達障害者しごとサポーター)を養成し、発達・精神障害に対する正しい理解を促進する。また、当該サポーターを増やしていくことにより、職場における精神・発達障害者を支援する環境づくりを推進する」と書かれています。

具体的には、精神保健福祉士や保健師を講師に招き、「精神障害者の行動の特徴や、仕事を続ける上で留意すべき点について」の講座を実施、受講者には「自分は精神・発達障害に関して一定の知識、理解がある」と職場で意思表示するための、パソコンやデスクに貼るシール・名刺に貼るシール・ピンバッジ・缶バッジなどのグッズを配る予定です。

つまり、精神障害者がはたらきやすい職場を作るため、職場から有志を募り、専門的な知識を身につけてもらい、支援に一役買ってもらおうという制度です。職場定着が大きな課題である精神障害者雇用において、職場の理解は不可欠です。制度が広く浸透して、効果をもたらすことに期待しています。

新たに創設される「精神・発達障害者しごとサポーター養成事業」の説明には、全体を通して「精神・発達障害者を暖かく見守り」や「精神・発達障害者に寄り添い」といった福祉的な視点からの言葉が登場します。これまでユニオンでも何度か取り上げてきましたが、障害者への虐待は、障害者支援の専門家が揃う福祉・医療の現場でも起きています。

【障害者施設でまた 一条協会、3度目の改善勧告】

四万十市の社会福祉法人・一条協会が運営する障害者施設で今年3月、入所者の女児が職員から髪の毛を引っ張られていたことが16日、分かった。県は4月に虐待行為と認め、改善勧告を出した。一条協会に対しては、昨年5月と11月にも虐待事案があったとして県から改善勧告が出されている。(2017年5月17日 毎日新聞)

【障害者に暴言吐き、ベッド蹴る・・・看護師3人が心理的虐待繰り返す】

独立行政法人国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)で、療養介護サービス利用者で難病による障害がある患者に看護師が暴言を吐いたりベッドを蹴ったりする虐待行為を繰り返していたとして、京都市は28日、同機構に対し、障害者総合支援法に基づく改善勧告と3カ月間の新規利用者の受け入れ停止の行政処分を行った。市によると、虐待行為が確認されたのは患者3人に対して看護師3人が計4件。虐待行為があるとの通報を受け、市が昨年9月29日、障害者虐待防止法に基づいて調査したところ、同8月31日夜に女性看護師が女性利用者に「いじめられたくないんやったら黙っててよ」「患者って立場を忘れんときや」などと暴言を吐いていたことが確認された。(2017年3月29日 産経新聞)

精神障害者を受け入れた職場が、福祉的な視野だけに偏り過ぎると、小さな思い違いや勘違いが大きなトラブルになってしまうケースがあります。もちろん、合理的配慮の提供や定着支援には、職場の正しい知識や理解が必要です。とはいえ、養成講座を受けた人にすべてを押し付け、その人任せになってしまわないような注意も必要です。

来春から本格化する精神障害者雇用の現場では、「暖かく見守り、寄り添う」だけになってしまわない、一人の社会人として向き合う(対等な労使関係)の視点で取り組むことが求められます。そして、はたらく精神障害者の側にも、職場に理解・配慮を求める工夫、安心して長くはたらくための努力が求められています。

出典元:読売新聞・毎日新聞・産経新聞