第3030号【第8回 身体(上下肢体)②】

欠損見えない工夫を
社外と接点少ない配置へ

安易な同情が問題に発展

上肢奇形の身体障害者B(先天性)は、様ざまな資格を取得しており、パソコンのキーボードを体に合わせて加工するなど工夫もして、職場では会社の協力も得て健常者と同等の業務をこなしていた。しかし、来客があるたびに視線を感じてしまい、ときには「大変だね」などと声をかけられることが精神的に苦痛だった。思い詰めて、「本当はみんな私を馬鹿にしているのではないか。影で笑われているのでは」との相談を上司にしたが、「そんなことはない」と一笑に付された。その後、何かと当たり散らすなどたびたび問題行動を起こすうようになってしまった。それが原因で同僚がうつ病になり休職するほどだったが、会社もどう対応して良いか分からない状態だった。

欠損や奇形などといった見た目で分かる肢体障害者は、通常の業務に関して独自のアイディアを出し、努力もして健常者と同等の能力を発揮しているだけでなく、非常にスキルが高い人が多い。会社も丁寧に配慮している場合が多いものの、ひとたび奇形や欠損箇所をみて「同情された」と感じてしまうと、深刻な問題に発展してしまう。小耳症や指の欠損など業務には支障がない障害の場合にはとくにこの傾向が強いと思う。

この障害に対する配慮としては障害箇所を隠せることが必要である。社外の人間と業務で会うことが少ない部署への配置をすることや、社内的にも作業として障害箇所が気にならない工夫―パーティションや前面に覆いのある机を使うなど―をすることである。障害を機能的な問題として考えて、その障害上できないことをさせないのではなく、外見上の問題と捉えて、その障害を双方が気にしないで良いような環境を整備する配慮が必要だと思う。

教育し差別なくす努力を

先天性にしても事故や病気が原因にしても、障害者になったことそのものが不本意であり、自身の病気や障害を受け入れることが難しいのが、この障害である。その日を境に不自由な毎日を送ることになり、肉体的にはもちろん、精神的なストレスを抱えている人がほとんどだ。私に「過酷なリハビリを経て、残酷な社会に出た」といった方がいたが、本当にそう感じるのではないだろうか。普段の生活で大きなストレスを感じる人たちが、会社で働くことは大変なのだろうと想像し、せめて職場では障害を意識しないで済むようにとの視点で作り上げていく細やかな配慮が求められている。

アルバイトやパート従業員と一緒に仕事をすることが多い職場などで、驚くほど子供じみた差別や壮絶な虐待の被害に遭っている障害者がいるのも、残念だが事実だ。実際に大手企業で行われていた暴言による差別や暴力を伴う虐待の事例もみている。

もちろん個人の資質や性格に問題があるのだとは思うが、このような行為が許されることは絶対にない。失職をおそれて我慢をしてしまう障害者も多く、問題が表面化しない場合もあるが、いずれ深刻な事態を招く。会社は防止できなかったことで社会的制裁を受けることもあり、刑事罰を科せられる可能性もある。従業員への教育や差別虐待行為に罰則を設けるなど、企業も意識を改革していくことが求められていると感じる。

出典元:労働新聞 2015年9月7日