【SDGs採用促す 経団連が方針】

2017年10月7日
朝日新聞

経団連は、企業が守るべき指針を記した「企業行動憲章」で、国連が採択した持続可能な開発目標「SDGs」を、最も大切な企業理念として採り入れることを促す方針を固めた。

環境破壊など、地球規模の課題解決につながる取り組みを強化するよう、経営者や従業員に求める。

憲章の見直しは2010年以来、7年ぶり。
翌11年に国連は「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択し、企業にも人権を尊重する義務と責任を指摘。15年には地球温暖化対策のための「パリ協定」も採択されており、国際社会で重視されるようになったこれらの課題を盛り込む考えだ。

経団連は、15年の国連総会で採択されたSDGsを重視。地球環境や気候変動に配慮しながら持続可能な暮らしを続けていくため、貧困や格差など17分野ごとに、世界共通の目標への取り組みを、憲章の柱に据える。

ユニオンからコメント

経団連が、「企業行動憲章」に掲げる企業理念として「SDGs」を採り入れる方針を固めたというニュースです。

従業員の過労自殺・粉飾決算・巨額の残業代未払いは、「SDGs」の視点からも問題があることは明白です。電通・東芝・ヤマト運輸のような巨大企業といえども、社会からの批判に抗うことができませんでした。「企業行動憲章」に「SDGs」を採り入れることは、当然の流れなのかもしれません。

2010年に見直された経団連「企業行動憲章」では、「企業は、所得や雇用の創出など、経済社会の発展になくてはならない存在であるとともに、社会や環境に与える影響が大きいことを認識し、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)を率先して果たす必要がある」として、「会員企業の自主的取り組みをさらに推進するため、企業行動憲章を改定した」と書かれています。

【ご参考】【企業行動憲章】日本経済団体連合会

経団連の会員企業は、「企業行動憲章の精神を尊重し自主的に実践していく」ことが求められていますが、今回の見直しでは「SDGs」への取り組みを「従業員にまで求める」ようです。もちろん経団連の会員企業のような大企業に勤める従業員であれば、率先して取り組むべきでしょう。一人一人が取り組める課題は決して少なくありません。

【ご参考】【教えて!SDGs】

一つ気になるのは、SDGsには「目標8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する」のように、労使が対立してしまう課題があることです。SDGsの目標や項目によっては、それぞれ違う立場から取り組まなければならない課題が少なくありません。一つの行動憲章で立場の違う労使双方への取り組みを求めるのは、まだまだ「SDGs」への理解が不十分であり、単なるアピールに過ぎないものと疑わざるを得ません。

【最低賃金1万ウォン・・・大企業が社会に利潤を還元すれば可能】

韓国労使政委員会(※日本の労働政策審議会に該当)のムン委員長が最低賃金を1万ウォン(約950円)まで引き上げる財源確保策として「大企業の労使が相対的に優越な地位を持って確保した利潤を社会に還元すること」を提示した。先月25日に就任したムン委員長は「同じ仕事をしても正規職に比べて差別される非正規職、大企業に比べ差別を受ける中小企業、このような差別をなくす第一歩は最低賃金問題を解決すること」だとし、このように述べた。ムン委員長は「差別の最も代表的な問題は最低賃金の問題だが、来年度の最低賃金として決定された時間当たり7530ウォン(約720円)を1万ウォンまで押し上げるためには15兆ウォン(約1兆4300億円)が必要だ。この財源を工面するためには、社会的合意が必要だ」と話した。(2017年9月10日 ハンギョレ新聞)

「SDGs」には、最低賃金の引き上げなど、経団連に連なる大企業なら独自に、そして率先して取り組める課題がたくさんあります。SDGsの目標8-5には、「2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する」と書かれています。経団連会員企業が、この目標を「いつ、どのように達成するのか」期待を込めて注視していきましょう。

出典元:朝日新聞・日本経済団体連合会・ハンギョレ新聞