【最低賃金上げ、目安超え4県 新潟・鳥取・宮崎・沖縄 ほかは目安通り】
2017年8月18日
朝日新聞
2017年度の最低賃金(時給)の改定額が17日、全都道府県で出そろった。全国加重平均の時給は今より25円(3%)高い848円になる。
引き上げ幅は前年に続き、比較可能な02年度以降で最大となったが、人件費増が中小企業の経営の負担になるとして経営者側から反発も出ている。
最低賃金は、企業が働き手に支払わないといけない最低限の賃金。
厚生労働省の中央最低賃金審議会が7月、都道府県ごとに引き上げ額の目安を示し、これをもとに各都道府県の審議会が改定額を議論していた。
新潟、鳥取、宮崎、沖縄の4県は目安額を1円上回る額で決まり、他の都道府県は目安額通りだった。大阪は初めて900円を超えた。9月30日以降順次改定され、賃金に反映される。
全国加重平均の引き上げ率は安倍政権の意向に沿って、2年連続で「3%」の目標を達成して決着した。働き手にメリットがある一方、コスト増を懸念する企業側の反発は根強い。
朝日新聞のまとめによると、都道府県別の議論では、少なくとも14府県で経営者側が改定額に反対した。鳥取では、経営者側の委員が「昨年に続く大幅な引き上げに耐えられるほど景気は回復していない」と強く反発したが、都市部との賃金格差の是正を重視して多数決で決着した。
ユニオンからコメント
すべての都道府県で最低賃金の改定額が答申されたというニュースです。ほとんどの都道府県で、厚生労働省中央最低賃金審議会が示した目安そのままが答申されました。
決定した改定額は、2017年9月30日~10月中旬にかけて順次発効されていく予定です。
「いつから、いくら上がるのか?」については、都道府県別の改定額と発効予定日を確認してください。
【ご参考】【平成29年度地域別最低賃金額答申】厚生労働省(PDF:204KB)
政府主導の「官製」最低賃金引上げに、経営側から「引き上げに耐えられるほど景気は回復していない」と強い反対の声が出始めました。中小企業から漏れる「とても、ついていけない」との悲鳴も、大都市より地方のほうが深刻なようです。
【都内最低賃金958円に 26円引き上げ】
東京地方最低賃金審議会は東京都の最低賃金を現行より26円(2.79%)引き上げ、1時間当たり958円にするのが適当だと東京労働局長に答申した。引き上げ率が2%を超えるのは5年連続となる。厚生労働省の中央最低賃金審議会では全国平均で25円(3%)、東京を含めた大都市部では26円の引き上げを目安として示した。東京地方の審議会は目安通りの引き上げを求めた形だ。最低賃金は常用やパートなどの属性や性別、国籍、年齢に関係なく都内の事業所で働くすべての人に適用する。(2017年8月10日 日本経済新聞)
【京都の最低賃金「25円増」時給856円に】
京都府内で働く労働者の最低賃金について、京都地方最低賃金審議会は7日、京都労働局の高井吉昭局長に対し、時給を現在より25円(3%)多い856円にすることを求める答申を行った。新たな最低賃金(時給856円)は早ければ10月1日から適用される見通し。同局によると、府内で働く労働者の13.7%は時給が新たな最低賃金を下回る状況で、10月以降は時給アップにつながるとみられる。(2017年8月8日 産経新聞)
【最低賃金 22~24円上げ 3県上げ幅最大 高知同額】
四国4県の地方最低賃金審議会の答申が17日出そろい、最低賃金(時給)が22~24円上がる見通しになった。労働者の待遇改善や消費押し上げへの期待がある一方、企業からは経営への影響を警戒する声が上がっている。企業の経営側からは「毎年この水準が続くと厳しい。扶養控除の対象から外れるパート従業員が出てくる」との声も出ている。徳島県タクシー協会は「売上高が伸びないなか、大幅な上昇が相次ぐのはタクシー会社には大きな負担」と話す。最低賃金の上昇は零細な製造業や郡部の小売業などで多いとされる。高知県土佐清水市のスーパーの店長は「人口減で賃上げしても人が集まらない状況も年々強まっている」と話す。(2017年8月18日 日本経済新聞)
最低賃金の引き上げに中小企業が苦しむのは、景気回復や保護政策が不十分なだけでなく、大企業による買いたたきなど「下請けいじめ」にも原因があることが指摘されています。
【生産性向上が伴う最低賃金引き上げに】
平均賃金に対する最低賃金の比率がフランスは6割あり、英国も5割を超えているという分析がある。日本は4割にとどまっており、国際的にみて低い水準にある最低賃金を引き上げていく必要があるのは確かだ。非正規社員の待遇改善にもつながる。ただ12年末に第2次安倍政権が発足してから、最低賃金の上げ幅は今年度を合わせ計100円近くになる。急激に最低賃金が上がることで中小企業の倒産が増える懸念もあるだろう。大企業が中小企業に過度な値下げ要求をするなど、不公正取引の監視もいっそうの強化が求められる。仕入れ代金を不当に安くする「買いたたき」などが残ったままでは、中小企業は賃金の原資を確保しにくくなる。(2017年7月27日 日本経済新聞)
安倍政権は、最低賃金「全国平均1000円」を目指すと公言しています。そして、1億総活躍プランには「2020年に達成する」と書かれました。それぞれ耳障りのいいフレーズですが、その実かなり大雑把な目標だと言わざるを得ません。
2017年度の最低賃金(全国平均)で、法定通り1日8時間、週40時間はたらいても年収は180万円に届きませんから、「ワーキングプア」と称される年収200万円以下にとどまります。本当に「目標1000円」でいいのかが検討される時期ですし、(下請けをいじめる)大企業との賃金格差を放置したままなら「1億総活躍」は到底不可能です。
【上場企業628万1000円 7年連続で平均給与が増加】
上場企業の2017年3月期の平均年間給与が前期比0.65%増の628万1000円となり、7年連続で増加したことが東京商工リサーチの調査で分かった。東京商工リサーチが2172社の有価証券報告書を基に算出した。(2017年8月11日 毎日新聞)
また、東京や大阪などの大都市以外では、政府の掲げる年率3%の最低賃金引き上げが続いても、2020年で900円台前半にしか上がりません。大都市が1200円、地方が900円で、全国平均1000円になるのであれば、地域格差はますます広がります。
欧米に比べて低い最低賃金を引き上げるには、「下請けいじめ」や「買いたたき」、最低賃金を下回る違反を厳しく取り締まることが前提なのは言うまでもありません。さらに、地方経済の実情に目を向けつつ、貧困対策や格差是正とのバランスを考えた政策を立案しなければいけません。安倍政権の意向に沿って10数人が多数決で決めてしまう乱暴さではなく、大小様々な声に耳を傾けながらの緻密な作業こそが求められます。
出典元:朝日新聞・厚生労働省・日本経済新聞・産経新聞・毎日新聞