【最低賃金、今年も3%上げ 平均848円、25円増】

2017年7月26日
朝日新聞

2017年度の最低賃金(時給)の引き上げ額について、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会は25日夜、全国の加重平均で25円上げるべきだとの目安をまとめた。目安額としては比較できる02年度以降で最大の引き上げで、実現すれば全国平均は848円になる。

引き上げ率は「3%」。2年連続で安倍政権の目標通りに決着した。賃上げで景気浮揚を狙う安倍政権は「1億総活躍プラン」で、最低賃金を毎年3%引き上げて全国平均1千円とする目標を掲げた。16年度は目標通りの「3%」を実現。3月にまとまった「働き方改革実行計画」にも同様の目標を明記し、17年度も政権の意向に沿って高い上げ幅を確保した。

最低賃金は、企業が働き手に支払わないといけない最低限の賃金。労使の代表と、大学教授ら公益委員で議論して毎年見直し、引き上げ額の目安を示す。

物価や所得水準などの指標をもとに都道府県をA~Dの4ランクに分け、ランクごとに目安額が提示された。東京など大都市部のAランクは26円。Bは25円、Cは24円、Dは22円。この目安を参考に都道府県ごとに引き上げ額を決め、秋以降に順次改定される。

ユニオンからコメント

2017年10月1日頃に改定される最低賃金が大幅に引き上げられることが決まったというニュースです。全国平均で、現在の823円から848円に引き上げられる予定です。

【ご参考】【中央最低賃金審議会((中央最低賃金審議会)】厚生労働省

【ご参考】【最低賃金について】

【景気回復に最低賃金引き上げを~経済同友会】

企業経営者らをメンバーとする経済同友会の小林喜光代表幹事は、景気回復のためには最低賃金を年率2%から3%程度引き上げていくことが必要だとの考えを示した。小林代表幹事は、他の先進諸国と比べて日本は賃金が安いと指摘した上で、最低賃金が上がれば、消費が喚起されるほか、中小企業も不採算事業を見直すなど経営の効率化を進めるので、「悪いことではない」と述べた。小林代表幹事はまた、賃上げにつながる物価の上昇について、特にサービス関連の業種で業界全体として価格を底上げしていこうという雰囲気になりつつあるとの見解を示した。(2017年7月25日 NNN)

経済界からも歓迎されている最低賃金の引き上げですが、安倍政権が目標に掲げる「全国平均1000円」は妥当なのでしょうか。もちろん現在の最低賃金に比べれば大幅なアップですが、おそらく人気取りのために掲げた数字にしか過ぎません。日本のあらゆる問題を解決するなら、いっそ「時給1200円」を目指すくらいが適正でしょう。世界的な企業では日本のどこでも「時給1250円」を払い、若者を中心に結成された団体(エキタス)は「時給1500円の実現」を目標に掲げて活動しています。

【「従業員の時給1250円」コストコ賃金は世界標準】

会員制大型量販店のコストコは世間相場よりも高い時給を従業員に全国一律で導入して話題になっています。ホームページを見ると、パートタイムの項目に「アシスタント」という呼称で時給1250円で募集されています。「1000時間ごとに64〜82円の幅で昇給し最高1800円まで昇給」するとの注記もあります。一般的に、パートの時給は法定最低賃金とほぼ同額からスタートするケースが多いでしょう。最低賃金は、現在714円(宮崎、沖縄県)~932円(東京都)です。コストコの賃金はパートとしては破格といえます。同社の時給1250円で日本企業の平均的な所定労働時間である1カ月164時間働くと、月給は20万5000円。大卒初任給の全国平均とほぼ同額です。労働条件をガラス張りにして、求職者が応募するかしないか迷う手間を省いて人材獲得を有利に進めるのがコストコの戦略なのでしょう。同社のホームページには「有給休暇100%消化を奨励」「残業代は必ずきちんとお支払い」と明記されています。これはある種の「踏み絵」で、ライバル企業には憂鬱なことかもしれません。(2016年10月4日 毎日新聞)

【最低賃金一律1500円 なくせ貧困】

「エキタス」は米国の労働者が時給15ドル(約1600円)の最低賃金を求めた運動「ファイト・フォー・15」に刺激され、大学生らが2015年9月に結成。最低賃金1500円を要求してきた。「ファイト・フォー・15」のデモなどによって米国のワシントン州シアトル市やニューヨーク州、カリフォルニア州で最低賃金が15ドルへ段階的にアップし、ニューヨーク市のファストフード店などは先行して昇給した。「経済が回らないのではという不安があったが、昇給で客が増え、売り上げがアップした。欧州でも時給を上げて地域経済が活性化している」。(2017年6月21日 毎日新聞)

SDGsの採択に関わったトーマス・ガス氏(国連経済社会局事務次長補)は朝日新聞社のインタビューに「これからは、簡単に最大の効果が出るよう求めて、富が上から下へ滴り落ちるように広がるトリクルダウン効果を狙うだけではいけません。最底辺にいるのが誰なのかを明確にし、彼らを強くしていくことに最初から注力するのです」と答えています。

つまり、まず最低賃金を引き上げてしまうことは、SDGsが掲げる持続可能な目標に合致しています。もし「最低時給1200円」を実現させると、政府が中小零細企業を保護し、大手企業では知恵を絞りだす必要に迫られるでしょう。しかし、物価上昇率2%を目指す日銀は「賃金が上がらないから物価が上がらない」と繰り返し弁明していますから、言い換えると「賃金さえ上がれば、物価が上昇する」ということです。

トリクルダウンを待つのではなく、大幅に最低賃金を上げてしまう。これは、労働力減少への対策として検討されている外国人労働者にも喜ばれるはずです。政府が目指している消費拡大へとつながり、貧困解消や自殺防止にもつながっていきます。人口減少など、日本に山積みになっている様々な問題が一気に解決へと向かう可能性も少なくありません。

出典元:朝日新聞・厚生労働省・NNN・毎日新聞