【ハローワークで違法求人自動検出 最低賃金対象、秋に導入へ】

2017年4月23日
東京新聞

厚生労働省は今秋、求人票の時給が最低賃金を満たしているかどうか、自動的にチェックするシステムを全国のハローワークに導入する。最低賃金を下回る違法な求人を受理していたとして、5年前に総務省から勧告を受けていたが、改善が進まず、昨夏の調査では、パート職で66件の最低賃金未満の求人が見つかっていた。

厚労省によると、今回チェックできるようになるのは、時給で募集するパート職の求人票。将来的には、月給で募集する正社員などの求人票にも対応できるようにするという。現在、ハローワークでは、求人票が寄せられると、職員が内容を目でチェックしている。

総務省が2010~11年に31カ所のハローワークを抽出調査したところ、6カ所で最低賃金を下回る求人が見つかった。総務省から改善勧告を受けた厚労省は、全国の労働局にチェックの徹底を指示。しかし、厚労省が昨年7~8月に改めて確認すると、最低賃金を下回る求人を受理したケースが全国で66件あった。

最低賃金は都道府県ごとに異なり、毎年改定される。雇用主は基準を下回る額で働かせると最低賃金法違反に問われる。厚労省によると、判明した66件は、いずれもハローワークのチェックミス。改定額に気付かなかったり、勤務先が他県だった場合に基準額を勘違いしていたりするケースが多かったというが、結果として、公的な職業紹介所が、違法な低賃金労働にお墨付きを与えていた格好になる。

新システムは今年9月の稼働を目指す。ハローワークの職員が受け付けた求人の時給をデータに読み込む際、最低賃金を下回る額だったら端末画面にエラー表示が出るようになる。
ハローワークに寄せられる求人は増加し、15年度は全国で500万件を超えた。求人増に伴い、職員の仕事量は増加している。厚労省職業安定局の担当者は「職員の目視だけでは限界がある。求人の適正化のため、自動チェックに踏み切った」と説明する。

■虚偽条件で募った企業に罰則 改正法成立
近年、実態と違う好条件で労働者を誘う「求人詐欺」が社会問題化している。ハローワークでは15年度、求人票の内容と実際の労働条件が異なっていたケースが3926件あった。不正求人の防止のため、今年3月末には、ハローワークに虚偽の求人を出した企業に罰則を設けることを盛り込んだ改正職業安定法が成立した。

若者が求人トラブルに巻き込まれないように、啓発に力を入れる動きもある。
浅倉むつ子・早稲田大教授らは、就職活動が本格化する前の2月、「大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A」(旬報社)を出版。「残業代込みの月給、これってあり?」などとテーマごとに対応策を解説している。学校で労働法を学ぶワークルール教育にも注目が集まる。労働組合や弁護士らによる出前授業の取り組みが広がるほか、義務教育段階での導入に向け、法制化を目指す動きが出ている。

ユニオンからコメント

最低賃金を下回る求人内容になっていないかを自動的にチェックするシステムが、全国のハローワークに導入されるというニュースです。

これまで、虚偽求人・求人詐欺については、厚生労働省の有識者会議で「厳罰化すべき」との議論が繰り返されてきました。職業安定法が改正されることで、虚偽求人の根絶に向けた対策が進むことに期待します。

【雇用保険料率、来年度から下げ 法改正案が衆院通過】

2017年度からの雇用保険料率の引き下げなどを盛り込んだ雇用保険法改正案が16日、与野党の賛成多数で衆院本会議で可決された。育児休業を最長2年間に延ばすための育児介護休業法改正案や、ブラック企業の取り締まりを強める職業安定法改正案などとの一括法案で、今月中に成立する見込みだ。倒産や解雇で離職した30~44歳の人の失業給付も延長する。職業安定法改正案にはブラック企業の求人をハローワークで受けつけない仕組みの導入を盛り込んだ。(2017年3月16日 日本経済新聞)

【ご参考】【雇用保険法等の一部を改正する法律案(概要)】厚生労働省(PDF:96KB)

【虚偽求人に罰則 ブラック企業対策、懲役刑も】

厚生労働省の有識者検討会は3日、公共職業安定所(ハローワーク)や民間の職業紹介事業者に労働条件を偽った求人を出した企業と幹部に対し、懲役刑を含む罰則を設けるべきとする報告書をまとめた。過酷な労働で若者らの使い捨てが疑われる「ブラック企業」と求職者のトラブルを防ぎ、求人詐欺への牽制(けんせい)を狙う。
報告書では、待遇のほか、正社員での採用や残業がないことなど、実際よりも好条件をうたった虚偽の求人を出す企業への対策として、「罰則の整備など求職者保護の強化を図ることが適当」と結論付けた。(2016年6月4日 産経新聞)

ハローワークの求人を見て応募したのに、「入社したら話が違っていた」という相談は、いっこうに減少しません。「ハローワークで見た求人内容と違った」のに加え、「入社面談で話された内容とも違う」会社。雇用保険に加入させない会社、雇用契約書すら渡さない会社もあります。

虚偽求人・求人詐欺に対する罰則が強化されることは歓迎です。しかし、求職者が自らを守る意識と知識も必要です。「会社の説明はおかしいのではないか?」「どう対応すればいいかわからない」、そのようなときはユニオンの相談窓口や労働相談会を気軽に活用してください。

【ご参考】【守られない最低賃金】

出典元:東京新聞・日本経済新聞・厚生労働省・産経新聞