【2017年度予算成立 過去最大の97兆4547億円】

2017年3月28日
毎日新聞

一般会計総額が97兆4547億円と過去最大の2017年度予算は27日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。予算の年度内成立は2年連続。

安倍晋三首相は「未来をひらく予算が無事に成立した。来月から雇用保険料率が下がり、働くみなさんの手取りが増える。デフレからの脱出速度を上げていきたい」と記者団に語った。

17年度予算は、年金、医療などの社会保障費が32兆4735億円に膨らみ、全体の3割超を占める。防衛費は5兆1251億円で、5年連続で過去最大を更新した。地方の財源不足を考慮し、地方交付税交付金を7年ぶりに増やし、15兆5671億円を計上した。歳入では、新規国債発行額を34兆3698億円と、16年度当初とほぼ同じ水準に抑制した。

民進党など野党は、大阪市の学校法人「森友学園」(籠池(かごいけ)泰典理事長)への国有地売却問題や、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣した陸上自衛隊部隊の日報問題などを引き続き追及する方針。民進党・新緑風会の舟山康江氏は参院本会議での討論で「政治への信頼を根底から覆す問題が相次ぎ、政府の不誠実な姿勢が疑惑を深めている」と批判した。

ユニオンからコメント

過去最大の総額97兆4547億円に上る、来年度予算案が国会で成立したというニュースです。新年度予算案の内容については、ユニオンでも解説しています。

【ご参考】【プレミアム金曜 皮算用と言われぬよう】

安倍首相が語った「来月から雇用保険料率が下がり、働くみなさんの手取りが増える」について、その内容を詳しく見てみましょう。

【雇用保険料引き下げ・・・3年間、賃金の0.6%に】

政府は26日、失業手当などの給付に充てる労使折半の雇用保険料に関し、現在賃金の0.8%となっている料率を2017年度から3年間、0.6%に下げる方針を固めた。
労働者と企業の負担を0.1ポイントずつ減らし、消費や賃上げに回せる分を増やす狙いがある。(2016年11月26日 毎日新聞)

この引き下げを、年収400万円の人で考えると、およそ「3年間に限り、毎月300円安くなる」ということです。これで手取りが増えたと実感する人は少ないでしょう。
いっぽう、負担が増えることについてはあまり触れられていません。

【保険料軒並み負担増 4月、年金や後期高齢者医療】

公的年金や医療、子育てなどの分野で4月から保険料の値上げや給付の引き下げが実施される。
国民年金の保険料は、段階的な引き上げにより230円増の月1万6490円となる。厚生年金は加入対象が広がり、500人以下の中小企業でも労使合意があれば、一定の条件を満たしたパートなどの短時間労働者が加入できるようになる。(2017年3月26日 東京新聞)

国民年金の保険料だけでなく、2017年9月からは厚生年金保険料も引き上げられます。保険料率が17.828%から18.182%に引き上げられ、以後はこの率で固定されます。厚生年金は賞与でも支給額に保険料率をかけて引かれますから、大幅な負担増といえます。

この引き上げを、年収400万円の人で考えると、およそ「これから毎月577円高くなる」ということです。もし、安倍政権が目指している「配偶者控除をなくす」が実現していた場合、年収400万円の人で、およそ「毎月5900円の負担増」になるはずでした。

つまり、安倍首相は「(毎月300円手取りが増えるので)未来がひらかれる、デフレからの脱出速度を上げたい」と語ったのです。もしかすると、今後(毎月800円以上手取りが減る)ことをうっかり忘れてしまったのかも知れません。

みなさんの給与明細には、厚生年金・社会保険料・税金など、給料から天引きされている金額が「控除欄」に記載されています。厚生年金保険料は毎年4月~6月の収入で計算されるので、8月分で引かれる保険料は前年4~6月の収入、9月分からは当年4~6月の収入で計算されています。

厚生年金以外にも、雇用保険や健康保険、(40歳以上では)介護保険料などを合計した(社会保険料合計額)と記載されていることもあります。控除欄には、所得税・住民税も記載されていますが、控除される項目のなかでも厚生年金保険料はかなり高額です。

給与に対する比重の重い厚生年金保険料や国民年金が引き上げられ、光熱費や食品の値上げが続きます。どのくらい負担が増えるのか、改めて給与明細をよく見比べて、「何が上がって、何が下がったか」を知らなければ実際の収入の増減は把握できません。

安倍首相が言う「雇用保険料率が下がり、手取りが増える」ことはありません。負担増のなか手取りを増やすには、賃金アップしか方法がないのです。政府には、都合のいい箇所を切り取って自画自賛するばかりでなく、「みなさんの手取りが増える」につながる(働き方改革)に取り組むことを強く望みます。

出典元:毎日新聞・東京新聞