【障害者支援 ボランティア数百万人】

2017年2月20日
読売新聞

2020年東京五輪・パラリンピックに向け、障害者が暮らしやすい社会の実現を図るため、政府が策定する行動計画案の概要が19日、分かった。

障害者や高齢者を支援するボランティアを20年までに全国で数百万人育成することなどが柱だ。

行動計画案は障害者への考え方を変える「心のバリアフリー」と、障害者や高齢者に配慮した「ユニバーサルデザイン」の街づくりの2本立て。20日に関係閣僚会議を開いて正式決定する。安倍首相は会議で、政策立案段階から障害者に参加してもらい、必要な法改正を行うよう指示する。

「心のバリアフリー」の柱の一つは、ボランティア制度の創設だ。障害者支援に関する研修をインターネットで受けてもらい、修了者には障害者を手助けする意思があることを意味する「統一マーク」を配布する。マークを着用したボランティアは、障害者や高齢者へのサポートに加えて、外国人観光客への道案内を行うことも想定している。数百万人の目標を達成するため、複数の大手民間企業と連携することも検討する。ボランティア制度は18年度から運用を開始する。

「ユニバーサルデザイン」の街づくりでは、国土交通省の省令などを改正し、全国の駅や空港などの交通機関や宿泊施設のバリアフリー化を推進することを盛り込んだ。

ユニオンからコメント

2020年を目標にした、共生社会の実現に向けた政府計画案の概要がわかったというニュースです。

【障害者接遇手引き、来年度中に=東京パラへ行動計画―政府】

政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向け、年齢や国籍の違い、障害の有無などに関係なく誰もが暮らしやすい共生社会の実現を図る「ユニバーサルデザイン(UD)」化の取り組みを強化する。20日に関係閣僚会議を開き、障害者らへの接遇マニュアルを17年度中に策定することなどを盛り込んだ行動計画を公表する。
UDの推進は、安倍晋三首相の1月の施政方針演説にも盛り込まれた。政府は世界中から多様な人々が集まる五輪を機にUDの理念を定着させ、五輪のレガシー(遺産)の一つとしたい考えだ。
行動計画は「心のバリアフリー」と街づくりの2本柱。接遇マニュアルは前者を推進するもので、交通事業者や観光・流通・外食業界を対象に、障害者団体を交えて業界単位で策定。18年度から普及を図る。盲導・聴導犬を連れた障害者の乗車・入店拒否といった差別的扱いをなくす狙いがある。学校教育や企業研修などを通じた啓発も促す。
障害者らを支援したい人を可視化するため、18年度をめどに統一のマークも作成する。
街づくりに関しては、五輪・パラリンピックの競技会場だけでなく、周辺エリアの駅や公園、成田・羽田両空港などのバリアフリー化を進める。公共交通分野については、バリアフリー法上の基準の厳格化も検討する。(2017年2月19日 時事通信)

ユニバーサルデザインは、日用品から公共インフラまで、応用が見込めます。高齢化社会やバリアフリー社会への関心と共に、企業は関連商品やサービスなどで一定の収益を見込んでいます。つまり、素晴らしい理念ではなく、ビジネスチャンスだということです。

【ご参考】【バリアフリー社会の実現=東京五輪を視野、経団連が検討】

ビジネスの視点で取り組むことは、実現を早くするという効果が期待できますから、ユニバーサルデザインに於いては歓迎すべきことでしょう。さらに、これからのバリアフリーは、「段差をなくす」ではない、あらゆる技術との柔軟な融合が求められています。

【「歩きスマホ」地面のLEDで注意喚起 信号と連動、蘭で実証実験】

歩きながらスマートフォンを操作する「歩きスマホ」が世界的に問題となるなか、オランダの町で今週、信号機と連動させたLED(発光ダイオード)ライトを横断歩道の前に埋め込み、歩行者に注意を促す装置の実証実験が始まった。
下を向いて歩いている人でも信号の色が分かる仕組みで、実験が成功すれば国内の他の自治体でも導入される見通しだ。オランダ企業のHIGトラフィック・システムズが手がける「Lichtlijn」(光の線)というこのシステムでは、地面に埋設した細いLEDライトが信号に合わせて赤や緑に点灯する。実験が成功すれば国内の他の町のほか、自転車専用道路でも採用される可能性がある。(2017年2月17日 AFP通信)

これは、「歩きスマホ」での歩行者事故防止の技術ですが、視覚障害者や聴覚障害者のバリアフリーに応用が可能です。このような異業種・異分野の技術を取り入れるには、会議の「メンバー選び」が重要になります。

当事者からの意見を聞いているだけでは、他の当事者の不便に気づけない可能性があります。国家的なプロジェクトで取り組むのであれば、「政策立案段階から障害者に参加してもらう」や「交通事業者や観光・流通・外食業界を対象に、障害者団体を交えて」だけでなく、科学者・文化人など、先入観を取り除いてあらゆる可能性を探るべきでしょう。

例えば、障害者雇用促進法の改正を受け、職場の「合理的配慮ガイドライン」を作成した際には、(政・労・公・使)での話し合いが繰り返し行われました。政は政府、労は労働者側ということで連合、公は関係省庁として厚生労働省、使は使用者側としての経団連です。そして、様々な障害者団体が出席しました。

誰もが当事者と言えば当事者ですが、この会議では、(はたらいている障害者)からの意見が出されませんでした。その結果、ガイドラインに盛り込まれた内容は、「スロープ・手すり等を設置する。移動の支障となるものを通路に置かない。業務指示に際して、筆談やメール等を利用する」と、これまで多くの職場で行われてきた内容に止まっています。

もちろん、当事者不在ではいけませんが、当事者だけでもうまくいかないケースがあります。現在、議論されている「働き方改革」でも、(政・労・公・使)による話し合いが行われています。「働き方改革実現会議」では、残業時間規制で労・使の意見が対立するなか、実際の現場では着実に「働き方改革」が進んでいるようです。

【「働きがい実感、社員の8割に」 味の素・西井社長】

食品大手、味の素の西井孝明社長が17日、朝日新聞のインタビューに応じ、2020年度までに世界のグループ社員約3万3千人を対象に「働きがいを実感できる社員の割合を80%にする」と話した。働き方改革を進め、生産性向上につなげるシステム導入に3年で計約67億円を投資する。今後、グループ全社でアンケートを実施し、働く環境への社員の満足度を細かく測る。改善点を探り、人材獲得につなげる狙いだ。
国内では今年4月から、1日の所定労働時間をこれまでの7時間35分から7時間15分に短縮。社員1人あたりの年間の労働時間を15年度の平均1950時間から同1800時間に縮めることを目指す。(2017年2月18日 朝日新聞)

【営業時間短縮、全国で加速へ ロイホが方針】

ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(福岡市)の黒須康宏社長は17日、全国で営業時間の短縮をさらに進め、3月末までに平均の営業時間を前年より1時間20分ほど短くする方針を明らかにした。
深夜・早朝営業の見直しを加速する。17日時点で全国に約220店あるうち、3月までに155店で営業時間を短くする。人手不足で賃金が上がっているほか、生活スタイルの変化もあって、深夜や早朝の売上高がコストに見合わなくなっているためだ。黒須社長は17日の会見で「思い切って短縮することで従業員の働く環境を整備し、サービスをより充実させる」と説明した。(2017年2月18日 朝日新聞)

法定労働時間より短い労働時間で生産性を上げることに、多額の予算を計上する。コストに見合わなければ、店舗の営業時間を見直す。報道されていない多くの企業でも既に行われているでしょう。制度変更や法改正には(政・労・公・使)での話し合いは不可欠です。しかし、それだけに頼っていると、当事者不在だったり、議論がそれたりしがちになり、実効性に乏しい案しか出てこないこともあるのです。

政府のいう「心のバリアフリー」とは、「数百万人規模のボランティアを生み出すこと」のようです。研修や、修了者への「統一マーク」配布。大手民間企業との連携などに言及していますから、当然、莫大な予算が計上されるでしょう。「心のバリアフリー」と銘打った以上、新たな利権ビジネスを生み出すだけのものになってしまわないことに期待します。
そして、本当に必要としている人からより多くの意見を聞き、それが反映された本当の意味での「心のバリアフリー」になることを願っています。

出典元:読売新聞・時事通信・AFP通信・朝日新聞