【バリアフリー社会の実現=東京五輪を視野、経団連が検討】

2016年10月22日
時事通信

経団連は21日、2020年東京五輪・パラリンピックに向け、社会のバリアフリー化を加速するための提言を行う方針を決めた。世界でも先進的で障害者や高齢者を含め誰もが安心して生活できる都市を目指す。11月に検討を始め、17年3月にも具体策を盛り込んだ中間報告をまとめる。

国内のバリアフリー化については、鉄道や小売りなど企業単位で取り組んでいる。ただ、鉄道であれば駅周辺に限られ、「障害者や高齢者が活動しやすい社会に必ずしもなっていない」(経団連幹部)のが実情だ。

経団連は1300社以上の会員企業を抱えている。11月に20社程度による検討組織「ユニバーサル社会部会」を設置。個別企業の取り組みにとどまらず、異業種が知恵を出し合い、街づくりの視点で検討することにした。

検討に当たっては、障害者の支援者や製品デザイナーなど専門家の意見を聞き、日用品から公共インフラまで幅広い分野の課題を洗い出す。中間報告をまとめた後、街づくりのための基本計画を策定する考えだ。

高齢化社会を迎える中、バリアフリー社会への関心が高まり、企業は関連商品やサービスなどで一定の収益が見込める環境が整いつつある。障害者や高齢者が外出しやすい社会ができれば消費の拡大も期待できそうだ。

【ご参考】一般社団法人 日本経済団体連合会(提言・報告書)

【ご参考】一般社団法人 日本経済団体連合会(会員企業)(PDF:160KB)

ユニオンからコメント

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、経団連が社会のバリアフリー化に団体として取り組む方針を決定したというニュースです。

鉄道や小売業などの個別企業が行っているバリアフリー化から、組織的に知恵を出し合って大掛かりな取り組みの視点で検討していくということです。
都道府県や国土交通省などの行政機関ではなく、経団連が組織的にバリアフリー化に取り組むことには大きな期待が持てます。

経団連の会員企業およそ1300社は、ほとんどが大手企業といっていい会社です。
大まかな推定ではありますが、会員企業の社員数は500万人以上いるはずですから、その2%に近い約10万人の障害者がはたらいている計算です。
経団連は(障害者の支援者や専門家の意見を聞く)だけでなく、会員企業ではたらく10万人の障害者の意見を聞くことから始めるべきでしょう。

例えば、ソーシャルハートフルユニオンは東京都の豊島区にあります。
ユニオン事務所の最寄り駅である池袋駅は、1日平均の利用者数が約250万人で、乗り入れているJR東日本では新宿・渋谷に次ぐ第3位、東武・西武・東京メトロでは第1位の乗客数を誇る大規模な駅です。
ところが、池袋駅には構内を通って駅の西口から東口に車イスでスムーズに移動するルートがありません。大規模な駅の周辺でも、これが現実です。

駅の改築工事ではなく、車イス移動の最短ルート表を作成するなどの、費用負担が少ないバリアフリー化はすぐにでも出来るはずです。
それには、普段、駅を利用する障害者からの意見を聞くことが近道です。
経団連には、会員企業ではたらく10万人の障害者からの知恵を上手に活用して、実践的な街づくりの視点で取り組むことを期待します。

出典元:時事通信・日本経済団体連合発表