【自動運転、誤差数センチ 衛星活用、三菱電機が公開】

2017年10月18日
朝日新聞

準天頂衛星「みちびき」から受信する精度の高い位置情報を使った業界初の自動運転の様子を17日、三菱電機が公開した。常に日本の上空にある「みちびき」を使えば、位置情報の誤差が数センチにまで縮まる。政府がめざす自動運転の普及に向けた一歩となりそうだ。

兵庫県赤穂市にある同社のテストコースで同日、「みちびき」の信号を受ける実験車「xAUTO(エックスオート)」の走りが披露された。通常のGPS(全地球測位システム)とあわせて「みちびき」から受信すると、車はひょうたん形のコースに沿って道の真ん中を走り、障害物で幅を縮めた場所でもまっすぐにすり抜けた。誤差の大きいGPSだけでは、こうはいかないという。

地球全体をカバーするGPSに対し、「みちびき」は日本やその周辺だけを対象とする軌道を飛ぶ。常に日本の真上に衛星がいることで精度の高い測位情報を出し、誤差はGPSの約10メートルに対して静止した車で6センチ、走行中でも12センチにまで縮められる。信号が届きにくいビルの谷間や山間部などにも強い。

誤差の少なさには、三菱電機が開発した高精度な受信機も貢献する。衛星信号は大気の状態により乱れがちだが、国土地理院が全国に持つ「電子基準点」の情報を使って信号のぶれを解析し、補正できるようにした。三菱電機の赤津慎二・自動車機器開発センター副センター長は「ずれをセンチ級にまで抑えたことで、車がレーン中央から外れずにいられる」と話す。人が運転に関わらない完全自動運転に向けた制御技術としても期待する。

政府は今月10日に4機目の「みちびき」を打ち上げており、実際の測位システムの運用は来年4月から始まる予定。三菱電機は今後、国内外の自動車メーカーに自動運転システムの採用を働きかけ、2020年の実用化をめざすという。

■五輪での実現目指す

政府は、東京五輪が開催される20年までにバスやタクシーなどの無人運転サービスを地域限定で始めたり、25年に高速道路で自家用車の完全自動運転を実現したりする目標を掲げる。自動運転には、車につけたセンサーで周囲を確認して操縦する「自律型」のやり方もある。ただ、「みちびき」の信号と正確な地図を組み合わせれば車がコースを外れないため、センサーの数を減らして1台あたりのコストを減らせる。雪など悪条件にも影響されない利点もあるという。

「みちびき」と組み合わせる地図については今年6月、三菱電機や地図大手ゼンリンなどが参加する会社が発足し、「ダイナミックマップ」の作成を始めた。三菱電機などの日本勢は地図ビジネスでの海外進出も狙うが、この分野では米グーグルや欧州の地図情報大手ヒアなどがしのぎを削る。ヒアが9月、国内のカーナビ地図で3割のシェアを持つパイオニアとの提携を発表するなどの動きもあり、主導権争いは混沌(こんとん)としている。

ユニオンからコメント

2020年の「自動車の自動運転実現」を目指し、企業の取り組みが加速しています。

【ご参考】【自動運転技術搭載車「xAUTO」の実証実験を高速道路で実施】三菱電機株式会社(PDF:248KB)

政府の未来投資会議で、「2020年までに、運転手が乗車しない自動走行によって、地域の人手不足や移動弱者を解消します」と決まったことで、自動運転実現に向けた環境整備が整い始めたのでしょう。自動運転技術に加えてAIを応用した「人を理解する」自動車も、2020年の公道実験を目指すことが発表されました。

【ご参考】【自動走行 政府が実験へ】

【ハンドルやアクセルなし・・・AI搭載の電気自動車】

トヨタ自動車は16日、人の感情を理解する人工知能(AI)を搭載した電気自動車(EV)の試作車3車種を、27日開幕の東京モーターショーに出展すると発表した。今年1月に公開した「コンセプト愛i(アイ)」のシリーズとして、2人乗りの「RIDE(ライド)」と、1人用で立ち乗りタイプの「WALK(ウォーク)」を世界初公開する。米国の家電見本市「CES」で公開済みの4人乗りEVも展示する。ライドは、車いすでの乗降を容易にし、障害者や高齢者などにも使いやすくした。ハンドルやアクセルがなく、運転席にある2本のスティックで操作する。(2017年10月16日 読売新聞)

【ご参考】【「未来の愛車」を具現化したコンセプトカー】トヨタ自動車株式会社

急速なAIの進化によって懸念されるのが、「AIが仕事を奪う」といわれる「AIで代替されるかもしれない業種や職種」についてですが、そうなっても人手不足が解消しないという予測が厚生労働省から公表されました。そして、AI技術者そのものが不足するという民間予測も発表されています。

【自動化進展でも人手不足解消しない 労働経済白書が指摘】

人工知能(AI)やロボットによる自動化が進んでも、人手不足は解消しない――。
厚生労働省が29日発表した2017年版「労働経済の分析」(労働経済白書)で、こんな見方が示された。自動化で働き口は減るが、それ以上に労働力人口が減るためだという。
白書は、自動化の進展で30年に就業者が今より161万人減るとする経済産業省の試算を紹介。そのうえで、技術者や介護職など専門技能やコミュニケーション能力が求められる仕事は増えるが、工場のラインでの仕事や単純な事務作業は大幅に減るという。一方、少子高齢化が進み、労働力人口は225万人減ると分析。「失業は増えないが、(経済成長には)AIを使いこなす理系人材の育成が欠かせない」とする。(2017年9月29日 朝日新聞)

【ご参考】【平成29年版 労働経済の分析】厚生労働省(PDF:1.75MB)

【「AI人材」6割不足~関西で25年、民間予測】

りそな総合研究所は19日、人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTなどの技術を活用できる人材が今後関西で大幅に不足するとのリポートをまとめた。2025年に関西で必要な人数のうち確保できる割合は4割弱にとどまると予測。経済産業省のIT人材に関する全国ベースの調査・推計を基にまとめた。
関西では25年に6.8万人のAI人材が必要と予想。これに対して実際に確保できるのは38%の2.6万人にとどまり、6割が不足することになる。関東では25年時点で必要数の69%を確保できるとみており、IT企業が関東に比べて立地していない関西の状況はより厳しい見通しだ。(2017年9月20日 日本経済新聞)

【AIでも人手不足 影響受ける職種の対応急げ】

技術開発は日進月歩である。とりわけ期待がかかるのが人工知能(AI)だ。
話しかけるだけで家電などを操作できる「AIスピーカー」が登場した。
自動運転車の精度も向上している。AIはわれわれの暮らしを便利にするだけでなく、働き方を変え、社会や経済に大きな影響を及ぼすだろう。少子高齢化に伴う労働力不足を解決する有力策として挙げられることも少なくない。
今後どういう人材を育てたらよいのか。まずはAIを正しく理解するための基礎知識を習得し、AIを取り入れた新たなシステムやツールを使いこなす能力を身につけることである。AIを正しく理解する人を増やすことは、AIの普及を加速させることにもなる。多くの人々が使いこなすようになって、はじめて社会に定着するからだ。さらに、AIによって仕事を奪われる人たちが別の仕事にシフトするための再教育も重要だ。教育機会を逸しないよう時間の確保と費用の支援が求められる。人口減少が深刻化する日本にとって、AIをはじめとするイノベーションは不可欠である。AIが一般化する時代に備え、個人や企業はもとより政府の対応が急がれる。(2017年10月16日 産経新聞)

人が運転しない自動車が街中を走り、あらゆるものが飛躍的に便利になる時代はもう目の前です。私たちがAIを社会の一員としてどのように受け入れるのか、一人一人の立場で考え、それぞれが意見を持たなければならない時期も近づいているのでしょう。

出典元:朝日新聞・三菱電機株式会社・読売新聞・トヨタ自動車株式会社・厚生労働省・日本経済新聞・産経新聞