【都内IT会社、裁量労働の社員 残業月87時間超 労災認定】

5月17日
毎日新聞

東京のIT会社で裁量労働制で働いていた男性会社員(当時28歳)が昨年、くも膜下出血で死亡し、池袋労働基準監督署が今年4月に過労死として労災認定していた。遺族代理人の川人博弁護士が16日、記者会見して明らかにした。

労基署は亡くなる直前の2カ月間で、過労死ラインとされる月80時間を超え、月平均87時間45分の残業があったと認定。また、裁量労働制が適用される前には最長で月184時間の残業があったとした。

川人弁護士によると、勤務先は東京都豊島区の「レックアイ」。男性は不動産会社向けのシステム開発を担当していた。昨年7月、チームリーダーに昇格した際に専門業務型の裁量労働制が適用された。みなし労働時間は1日8時間だった。

男性は裁量労働制が適用される前から、長時間労働が常態化していたが、適用直後の7月上旬には納期に追われ、徹夜を含む連続36時間の勤務もあった。同月下旬には家族に「頭が痛い」と訴えた。翌8月の中旬に都内の自宅アパートで倒れているのが見つかり、死亡が確認された。両親は10月に労災申請した。

男性は昨年6月から7月にかけて、ツイッターに「仕事終わるまであと22時間」「社会人になってから36時間ぶっ通しで働いたの初めてやがな」などと投稿している。

川人弁護士は「男性の過重労働は裁量労働制の適用前からだが、適用直後には徹夜勤務があるなど、裁量労働制が過労死に悪影響を及ぼした可能性は高い」と指摘した。

男性の母(58)は、「今後、息子と同じような犠牲者が出ないように会社に求めます。若いときは二度とないから、休日もきっちりとれて、リフレッシュできる時間を若い人につくってあげてください」とコメントした。

ユニオンからコメント

裁量労働制ではたらいていた人の過労死を労働基準監督署が認定したというニュースです。

「裁量労働制」とは、実際の労働時間ではなく、あらかじめ決めた「みなし労働時間」をべースにした賃金(残業代込み)を支払う制度で、仕事の進め方や時間配分を自分で決めることができる労働者に限定して適用することができます。弁護士など専門性の高い業務をする労働者が対象の「専門業務型」と、企業の中枢で企画立案などをする労働者が対象の「企画業務型」の2種類があります。

「働き方改革」では裁量労働制の対象を営業職に拡大することが議論されていましたが、厚生労働省のデータに異常値が多く見つかり、今回の法案からは外されています。

【労働時間調査、2割削除 2492事業場 働き方改革の根拠】

裁量労働制に関する厚生労働省の調査に異常値が見つかった問題で、厚労省は15日、精査結果を公表した。一般労働者の労働時間は966事業場で異常値が確認され、すでに撤回した裁量労働制のデータと合わせて2492事業場を調査から削除した。削除後の再集計で、一般労働者の1日や1カ月の残業時間は元のデータより短くなり、野党はデータが働き方改革関連法案の根拠の一つになっているとして批判している。(2018年5月16日 毎日新聞)

【ご参考】【厚労省ずさん調査 異常データ新たに117件】

この問題の本質は、「裁量労働制を営業職にまで拡大する」という結論ありきの議論を進めるために、厚生労働省が根拠となるデータをねつ造していたということに他なりません。仕事の進め方や時間配分を自分で決めることができたはずの労働者が過労死してしまう現状を踏まえ、対象範囲の拡大より過労死予防の議論が優先されるべきであることは言うまでもありません。誰もが一度立ち止まって、労働者目線での「働き方改革」になるよう、冷静な議論になっていくことを期待します。

【テレ朝男性社員、労災認定】

テレビ朝日(東京都)でドラマを担当していた男性プロデューサー(当時54歳)が2015年に心不全で死亡したのは長時間労働による過労死だったとして、三田労働基準監督署が同年に労災認定していたことが16日、明らかになった。
テレ朝によると、男性は13年7月、出張中にホテルで心臓の病気を発症し救急車で搬送された。男性は裁量労働制を適用する制作部門に所属し、直近の3カ月は時間外労働が月に70~130時間に達していた。三田労基署は、過労死ラインとされる月80時間を超えていたため、過労による労災と認定した。(2018年5月17日 毎日新聞)

もう一つの「結論ありきの議論」である憲法改正についても、丁寧な説明や冷静な議論がないまま、実現に向けた準備は着々と進んでいるようです。

【国民投票法改正案 月内審議入りの方針】

自民党憲法改正推進本部は16日、党本部で幹部会合を開き、憲法改正手続きを定めた国民投票法の改正案について、今月中の審議入りを目指す方針を確認した。17日の衆院憲法審査会の幹事会で野党側に改正案を示し、今国会成立へ協力を呼びかける考えだ。
自民、公明両党は15日の実務者協議で改正案について合意した。16日の幹部会合では改正案に関する与党の法案審査を25日までに終え、28日前後に法案を国会提出したい考えで一致した。6月初旬にも衆院を通過させたいとしている。(2018年5月17日 毎日新聞)

例えば、自衛隊を憲法に明記するのであれば、当然、一定数の自衛隊員を確保する必要があることは明白です。自衛隊の任務を、高齢者や外国人が担うことは現実的ではありませんから、現在の社会情勢や今後の推計を考えると徴兵制の議論は避けて通れないはずです。

【総人口、7年連続減 高齢者3500万人突破】

総務省は13日、2017年10月1日現在の推計人口を公表した。在日外国人を含む総人口は前年比22万7000人(0.18%)減の1億2670万6000人で、7年連続の減少。65歳以上の高齢者人口の割合は27.7%と過去最高を更新し、初めて3500万人を突破した。高齢化の進展ぶりが一段と鮮明となった。65歳以上の高齢者は3515万2000人。このうち75歳以上は1748万2000人とほぼ半分を占めた。一方、0~14歳の年少人口は12.3%の1559万2000人となり、いずれも過去最低を記録した。働き手となる15~64歳の「生産年齢人口」の割合は、ピークの1992年から10ポイント近く低下して60.0%となった。50年の59.7%に次ぐ低水準で、労働力不足が深刻化している。(2018年4月13日 時事通信)

【ご参考】【人口推計(平成29年10月1日現在)】総務省統計局

安倍政権は、成年年齢を18才へと引き下げる民法改正についても国会で盛んに議論しています。アメリカやドイツやオーストラリアなど、多くの国々では成年年齢の18歳引き下げと徴兵制導入をほぼ同時に行ってきました。安倍政権の狙いが、まず憲法改正をして自衛隊を明記してしまえというものであれば、今後も「ねつ造されたデータ」を基にした議論は繰り返されてしまうのかもしれません。

【ご参考】【近年成年年齢の引下げを行った主な国】法務省(PDF:124KB)

出典元:毎日新聞・時事通信・総務省統計局・法務省