【厚労省〝ブラック企業リスト″にヤマト運輸が追加 計476社に】

2017年10月16日
産経新聞

厚生労働省は10月16日、労働基準関係法違反の疑いで送検された国内企業のリストを更新した。初公開は5月で、電通やパナソニック、HISなど大企業も名を連ねる〝ブラック企業リスト″として関心を集めていた。

10月の更新では49社を追加し、掲載企業数は476社となった。

新たに、宅配便最大手のヤマト運輸が追加された。
これまで同社の支店が掲載されたケースはあったが、9月に福岡労働局が、労働基準法違反の疑いで法人としての同社を書類送検したため、リスト入りとなった。同社の博多北支店(福岡市)が配達ドライバー2人に残業代の一部を支払わなかった疑いがもたれており、残業代未払い問題では初めての書類送検となった。

運輸業者では、大宝運輸(名古屋市)がドライバーに最長月197時間に及ぶ残業を課したとして、9月に愛知労働局から是正勧告を受けたため、新たに追加された。

そのほか、労働者9人に約1年7カ月間にわたって定期賃金計約1483万円を支払わなかった、動物保護関連のNPO法人(新潟市)などが加わった。

休業259日の労働災害が発生したが、労働基準監督署に労働者死傷病報告書を提出しなかったケースや、労働基準監督官が臨検を行った際、虚偽の運転日報を提出したケースなど、必要事項の届け出に関する不正も目立った。

ユニオンからコメント

厚生労働省が、「労働基準関係法令違反に係る公表事案」を更新したというニュースです。

【ご参考】【労働基準関係法令違反に係る公表事案】厚生労働省(PDF:424KB)

厚生労働省の公表する企業リストが、通称「ブラック企業リスト」と呼ばれているようです。流行語にもなり定着した呼び名ですが、本当に重要なのは違反の再発防止や抑止効果ですから、ブラック企業とレッテルを貼って非難することに何の意味もありません。大切なのは、一度ここに掲載された会社がその後改善したかどうかです。同じ違反を繰り返しているのか、劇的に改善したのか、そのような情報も併せて公開するアイデアも検討されるべきでしょう。

罰則を強化する議論が具体的に進まない中、ひどい会社だと社名を公表するだけでは信用失墜くらいで終わってしまいます。その会社では、再発防止より信用回復こそが重要課題になるでしょう。いずれ経営者の感覚がマヒしてしまい、これだけ多くの有名企業でさえ違反するのだから「うちの会社が違反しても仕方ない」と変な安心感を与えてしまわないかという懸念も生れます。

厚生労働省は自らの手柄を誇るのではなく、本来の目的に照らして逆効果になってしまわないような施策も検討していくべきです。同じ会社が違反を繰り返した場合には厳しく、改善に取り組んだ会社には名誉挽回の機会を与える、公表後の経過もどこかで公表しなければ高い抑止効果は望めません。そして、違反を猛省し真摯に取り組み、改善した会社が「いつまでもブラック企業と呼ばれている」ようでは、その会社ではたらく従業員の尊厳や名誉が守られない現実にも目を向けるべきでしょう。

出典元:産経新聞・厚生労働省