【働き方改革法案見送り 衆院選後に閣議決定 審議遅れの懸念】
2017年9月20日
毎日新聞
安倍晋三首相の衆院解散の意向を受け、政府は19日、「働き方改革関連法案」の閣議決定を衆院選後に見送る方針を固めた。法案の審議は来年の通常国会になるとみられ、残業時間の上限規制が当初予定の2019年4月から実施できない可能性も出ている。
政府は28日召集の臨時国会に法案を提出し、高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入と裁量労働制拡大の施行を19年4月からと見込んでいた。
しかし、自民党厚生労働部会は19日に予定されていた法案の了承を見送った。出席した元副厚労相の木村義雄参院議員は取材に「(解散に関する報道が相次ぎ)衆院議員が出て来られない状態。法案了承とはいかない」と説明した。
厚労省幹部は「通常国会は来年度予算の審議が最優先」と語り、法案審議が遅れることを危惧する。成立が遅れれば、19年4月予定の施行がさらに遅れる可能性が高いためだ。
連合の神津里季生会長は「法案審議の先送りは問題だ。過労死をゼロにするため、残業規制は一刻も早く措置すべきだ」と述べた。
ユニオンからコメント
安倍首相が衆議院解散を決めたことで、働き方改革関連法案が先送りされたというニュースです。労働者の過労死を防ぐことより、自身が権力の座に座っていられるチャンスを逃したくないということなのでしょう。国家より政党、政党より自身の当選が何より大切な人たちは、審議を放り投げて地元に帰ってしまいました。
【働き方改革法案、宙に=了承手続き先送り】
自民党は19日、「働き方改革」関連法案の臨時国会への提出を了承する手続きを見送った。28日召集予定の臨時国会冒頭にも衆院解散が行われる情勢となったためで、来週にも行われる予定だった閣議決定も先送りされる。働き方改革をめぐる法案審議は、臨時国会の最大の焦点とされてきたが、当面、宙に浮くことになった。法案審査のため19日に開かれた自民党厚生労働部会は、出席議員がまばら。総選挙に向け、衆院議員の多くが地元に戻ったとみられる。(2017年9月19日 時事通信)
衆議院を解散した後に行われる総選挙には莫大な費用がかかります。都道府県や市町村への選挙執行管理費用、投票用紙の印刷や投票所の運営、開票作業に携わる人件費、選挙カーや選挙ポスター、選挙違反の取り締まりにかかる費用にも税金が使われます。これらの費用以外にも、各政党は選挙運動に政党交付金を使いますから、総額1000億円以上の税金が一回の選挙で使われることになります。
【総選挙の費用対効果はいかに】
衆院議員を選ぶ「総選挙」にかかる費用は1回で約800億円といわれる。国民1人当たりの負担は約600円。そんな大金をかけて選んだセンセイ方は、サッカーW杯のどさくさに紛れるように今月22日で国会を閉じると、さっさと長い長い夏休みに入ってしまう。費用対効果を考えるといかがなものか、だ。(2014年6月9日 産経新聞)
(働き方改革の実現を後回しにして)行う総選挙にかかる税金の額をみると、「同一労働同一賃金の取組(16億円)」、「時間外労働の上限規制など長時間労働の是正(72億円)」など、働き方改革に関連する予算はずいぶん見劣りします。これが、安倍政権の優先順位に沿った税金の使い方なのでしょう。
【ご参考】【平成30年度予算概算要求のポイント】厚生労働省(PDF:1.91MB)
衆議院の解散を決定する権限は内閣にあります。内閣総理大臣は閣議を開き、全閣僚の同意を得た上で、衆議院解散を行うための閣議書に署名してもらわなければなりません。しかし、内閣総理大臣はいつでも自由に大臣を罷免することができますから、事実上、解散は総理大臣個人の権利といえます。つまり、安倍首相には身勝手に解散する権利が認められているということです。一方、私たちに認められている権利は、投票に行けることと、1000億円もの税金を無駄遣いするような行為に憤ることくらいです。
【10月衆院選へ 大義なき「身勝手解散」】
安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。首相は、8月の内閣改造後、「働き方改革」のための法案などを準備したうえで、召集時期を決めたいと語っていた。だが解散すれば、肝いりの働き方改革は後回しになる。首相が「仕事人内閣」と強調した閣僚メンバーの多くは、まだほとんど仕事をしていない。国民の信を問うべき差し迫った政策的な緊迫があるわけでもない。総選挙が必要な大義は見当たらない。
なのになぜ、首相は解散を急ぐのか。自身や妻昭恵氏の関与の有無が問われる森友学園や加計学園の問題をめぐる「疑惑隠し」の意図があると断じざるを得ない。それでも首相はこの身勝手な解散に打って出るのか。そうだとすれば、保身のために解散権を私物化する、あしき例を歴史に刻むことになる。(2017年9月20日 朝日新聞)
出典元:毎日新聞・時事通信・産経新聞・厚生労働省・朝日新聞