【「向いてない。辞めろ」陸自パワハラで退職の元自衛官が提訴】

2017年9月15日
産経新聞

陸上自衛隊那覇駐屯地(那覇市)に所属していた元自衛官の男性(20)が、上司ら4人から暴行や暴言のパワハラを受け、退職を余儀なくされたとして、国に200万円の賠償を求める訴訟を15日までに長崎地裁大村支部に起こした。提訴は8月18日付。

訴状によると、男性は高校卒業後の平成27年4月、陸自に入隊。配属された那覇駐屯地で28年3月ごろから、上司らから繰り返しパワハラなどを受けたという。

同年10月には、上官の2等陸曹から「向いていない」「辞めろ」などと言われ、胸ぐらをつかまれてロッカーに体をぶつけられたり、靴で頭をたたかれたりした。翌月には3等陸曹に腹を殴られた。他の上官2人からの暴行もあり、男性は今年3月に退職した。「違法な暴行や暴言で精神的苦痛を受けた」と主張している。

陸自側は2月、2曹と3曹の暴行を認め、2人を減給の懲戒処分とし、7月にはもう1人の上官について戒告とした。

陸自側は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。

ユニオンからコメント

陸上自衛隊に所属していた元自衛官が、上官らによるパワハラ行為に対して賠償を求める裁判を起こしたというニュースです。他にも、ハローワークやNTTの関連会社、外国人実習生に対するハラスメントで訴訟が相次いでいます。

【ハローワークでパワハラ、国など提訴】

静岡労働局管内のハローワークで仕事中に上司から暴力を受けたとして、窓口を担当する40代の女性職員が10日、国と当時の上司に対し、慰謝料など計約630万円の損害賠償を求めて静岡地裁に提訴した。訴状によると、2015年1月の勤務時間中、この女性職員と窓口を統括する50代の課長職の男性が、他の職員の勤務態度について話している時に、男性が突然激高。背後から大声で怒鳴りながら女性の左腕を拳で3回たたくなどした。男性は日頃も他の職員に威圧的な態度を取ることがあったという。静岡労働局は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。だが、朝日新聞のこれまでの取材に対し、労働局総務課は「パワーハラスメントと思われる行為があった」と認め、「男性を処分する方針だが、処分の程度について現在も協議している」と説明している。(2017年8月10日 朝日新聞)

【「セクハラ訴え雇い止め」 ドコモ子会社提訴】

NTTドコモの子会社で働いていた元契約社員の30代女性が、セクハラを訴えたのに適切に対応せず、雇用契約も更新しなかったとして、子会社と元同僚の男性に慰謝料330万円と地位確認を求める訴えを大阪地裁に起こした。女性はうつ病などで休職。天満労働基準監督署(大阪市)は昨年5月、セクハラとの因果関係を認めて労災認定している。訴状によると、2014年6月ごろから勤務中や飲み会で同僚男性から性的な発言をされたり胸を触られたりするようになった。女性が会社のコンプライアンス窓口へ通報すると、上司から「なぜ僕らに相談しなかった」「(男性を)誘ったんやろ」と非難された。うつ病とPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し同年10月から休職。同社は15年3月、契約期間満了で退職扱いとした。NTTドコモの広報担当者は「裁判中で答えられない」と話している。(2017年9月13日 毎日新聞)

【「アホ」「死ね」パワハラで鬱病、34歳カンボジア人を労災認定】

東京都内の建設会社で勤務していたカンボジア国籍の技能実習生の男性(34)が、上司から「アホ」「死ね」などの暴言を含むパワーハラスメント(パワハラ)を受け鬱病になったとして、立川労働基準監督署(東京)が労災認定していたことが12日、分かった。労基署の調査復命書などによると、男性は平成26年6月に来日後、建設会社で配管工として働き始めた。直後から言語などの問題で、上司から暴言を吐かれ、工具でヘルメットをたたかれるなどの暴行も受けた。27年9月、現場で作業中に電気のこぎりに巻き込まれ、左手人さし指の先端を切断。事故後、社員から「金欲しさにわざと切ったのだろう」などと暴言が繰り返され、病院で鬱病と診断された。(2017年9月12日 産経新聞)

ハラスメントとは、嫌がらせや相手を不快にさせる行動のことです。代表的なパワハラやセクハラ以外にも、マタハラ(マタニティ・ハラスメント)、モラハラ(モラル・ハラスメント)等、何かの単語にハラスメントをくっつけた言葉が30種類以上も誕生しています。これは、ハラスメントの対象範囲がとても広いことをあらわしています。

ここで問題になるのが、(業務の適正な範囲)との線引きです。範囲が広がることで「どこからがハラスメントに該当するのか」に個人差を生じさせてしまい、判断を難しくさせてしまいます。厚生労働省の解説も、「それがパワーハラスメントであったかどうか判断をするには、行為が行われた状況等詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や裁判例も参考にしながら判断しましょう」に止めています。

【ご参考】【あかるい職場応援団】厚生労働省

(適正な範囲)であれば、指導・注意を不満や不快に感じた場合でも、上司の権限や業務上の指揮監督・教育指導を妨げることはできません。一方、被害を感じた側も「他の人なら気にならないレベル」と言われて納得がいくものではありません。この、受け取り方や感じ方の問題と言われかねない(あいまいさ)が、問題点や責任の所在をうやむやにしてしまい、円満な解決を難しくしてしまう原因になっています。

実際、NTTドコモ子会社では上司から「なぜ僕らに相談しなかった」「(男性を)誘ったんやろ」と非難されていますし、外国人実習生は指の切断を「金欲しさにわざと切ったのだろう」と暴言を吐かれています。ハローワークでは、女性が被害を申告しているにもかかわらず調査や処分を行っていませんでした。いずれも加害者側に「悪いことをした自覚」がないからです。

しかし、最近の傾向では、労災認定される事案が増えています。「どこからか」の判断が難しいと躊躇せず、まずは線引きを厳しくすることが、職場からハラスメントを一掃する第一歩になります。ガイドラインや就業規則の懲戒規定に、改めて一文を書き加えることには大きな効果があるでしょう。

【「ハラスメント行為」を新設・県教委が懲戒処分の指針を一部改正】

教職員の懲戒処分の指針について長野県教育委員会は、「セクハラ」や「パワハラ」など様々なハラスメントに関する規定を新たに設けました。県教委は懲戒処分の指針の中で、これまで教職員のハラスメント行為についてセクハラは「わいせつな行為」、パワハラは「暴行などの行為」の項目で適用してきました。しかし、他にも妊娠や出産を期に降格や解雇を迫るといった「マタニティハラスメント」が問題になるなどハラスメントも多岐に及ぶため、今回新たに項目を設けました。原山隆一教育長は「教職員がハラスメントを念頭に置くことで自分の行動を見直すことができ、指針のようなものになると思っている」と述べました。新たな指針にはハラスメント行為の程度や被害者の心的ストレスの度合いによっては免職処分も含まれ、今日から適用されます。(2017年8月24日 SBC信越放送)

出典元:産経新聞・朝日新聞・毎日新聞・厚生労働省・SBC信越放送