【名目賃金、7月は0.3%減 14カ月ぶりマイナス 毎月勤労統計】

2017年9月6日
日本経済新聞

厚生労働省が6日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、名目賃金にあたる現金給与総額は前年同月比0.3%減の37万1808円だった。

減少は14カ月ぶりで、減少幅は2015年6月(2.5%減)以来25カ月ぶりの大きさだった。
ボーナスなど特別に支払われた給与が減少したことが響いた。

内訳をみると、特別に支払われた給与は前年同月比2.2%減少した。一方、基本給にあたる所定内給与は0.5%増、残業代など所定外給与は0.1%増だった。

物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.8%減だった。名目賃金の減少に加えて、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が0.6%上昇し、実質賃金を抑制した。

パートタイム労働者の時間あたり給与は2.9%増の1115円だった。パートタイム労働者比率は30.62%と0.08ポイント低下した。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。

ユニオンからコメント

厚生労働省が毎月勤労統計調査を公表したというニュースです。
政府が2%を目標にしている消費者物価指数は0.6%上昇し、それ以上に上昇していなければならない実質賃金指数が0.8%の減少でした。つまり、物価は上がっているのに、給料が減っている実態が明らかになったということです。

【ご参考】【毎月勤労統計調査 平成29年7月分結果速報】厚生労働省(PDF:124KB)

【GDP年率4.0%増 4~6月実質、内需けん引】

内閣府が14日発表した2017年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.0%増、年率換算で4.0%増だった。企業の収益増や雇用環境の改善を受け、内需が成長をけん引した。実質GDPの増加率は市場予測の中央値(年率2.4%増)を大きく上回った。6四半期連続のプラス成長は戦後最長の景気回復期だった05年1~3月期から06年4~6月期以来、11年ぶり。年率換算で4%の伸びは、16年1~3月期から1年半続くプラス成長の期間で最も高い成長率となった。生活実感に近い名目GDPは1.1%増、年率換算で4.6%増だった。(2017年8月14日 日本経済新聞)

【ご参考】【2017(平成29)年4~6月期四半期別GDP速報】内閣府(PDF:336KB)

【いざなぎと並ぶ景気回復 経財相が認識 8月の月例経済報告】

政府は28日まとめた8月の月例経済報告で、国内景気の基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」として据え置いた。据え置きは2カ月連続。昨秋にまとめた経済対策の効果が出始めたことを受け、公共投資の判断を引き上げた。茂木敏充経済財政・再生相は同日の記者会見で「戦後2位のいざなぎと並ぶ景気回復になった可能性が高い」との認識を示した。(2017年8月29日 日本経済新聞)

【ご参考】【月例経済報告主要経済指標】内閣府(PDF:28KB)

GDPなど、様々な指標には「景気が回復している」ことが表れています。景気回復は数字から明らかになり、物価も上がっているのに、どうして給料が減ってしまうのでしょうか。
原因の一つは、安倍政権が掲げる「経済の好循環」の恩恵を受け、利益を増やした企業が従業員の給料を増やさないことにあります。政府は、「ため込んだ内部留保を社員の賃金アップに使うよう」求めていますが、企業側は応じていません。法人税減税などの恩恵だけを受けながら利益を溜め込んでしまう経営姿勢に問題があると、ここ数年指摘され続けています。

【内部留保、過去最高406兆円に・・・法人企業統計】

財務省が1日発表した法人企業統計によると、企業の利益の蓄積にあたる「内部留保」が2016年度末時点で、406兆2348億円に達した。15年度末(377兆8689億円)からの1年間で約28兆円増えて、5年連続で過去最高を更新した。好調な業績にもかかわらず、将来の景気への不安などから賃上げや設備投資をためらい、内部に利益をため込む日本企業の姿が浮き彫りになった。16年度末の内部留保約406兆円は、日本の名目国内総生産(GDP)の7割に相当する。このうち大企業(資本金10億円以上)は7.6%増の196兆78億円と半分近くを占めた。(2017年9月1日 読売新聞)

【ご参考】【四半期別法人企業統計調査概要-平成29年4~6月期-】財務省(PDF:544KB)

【企業の内部留保が過去最高、給与に回らず春闘も期待薄】

企業の利益剰余金の蓄積である内部留保が、2016年末に過去最高の375兆円に達した。10年前の水準から135兆円増加したが、企業は人手不足にもかかわらず、利益を人件費に回すことはなく、16年末の労働分配率は43%台と過去最低水準だ。SMBC日興証券によると、大企業の付加価値に占める労働分配率は10─12月期に43.7%。過去30年間で最低だった07年1─3月期の43.4%と並ぶ低い水準だ。日本総研チーフエコノミスト・山田久氏は、トランプ政権誕生に伴う先行き不透明感や、働き方改革による非正規労働者の処遇改善、長時間労働是正による労働投入量減少が重しとなり「正社員の賃上げは、抑制方向の要因が多い」と指摘する。政府内では、30~40代の正社員の収入が伸び悩んでいることに注目し「長時間労働是正が、かえって働き手にマイナスになりかねない」との声がある。企業には事実上の賃下げにならないよう、残業代減少分を賃金や子育て手当てに回すよう求めている。(2017年3月9日 ロイター)

【ご参考】【四半期別法人企業統計調査概要-平成28年10~12月期-】財務省(PDF:684KB)

【27年度の内部留保は過去最高 くすぶる課税案】

内部留保は、安倍晋三政権発足後に急増。日銀の金融緩和と企業減税などで企業は業績が改善したが、新興国経済減速に伴う世界経済の下ぶれ懸念などのリスク要因に対応するため、利益をため込んでいる。安倍政権は企業のもうけを設備投資の拡大や賃上げにつなげ、個人消費を上向かせる「経済の好循環」を目指してきた。しかし、4~6月の統計では、設備投資は前年同期比3.1%増えたものの、伸び率は1~3月期(4.2%)より鈍化。従業員給与はほぼ横ばいの約28兆円だった。政府・与党には、法人税の負担軽減などを実現したにもかかわらず、企業が利益を積み上げる現状に不満を抱く向きが多い。企業に設備投資や賃上げを促すため、内部留保に課税すべきだとの声が強まりそうだ。(2016年9月2日 産経新聞)

【ご参考】【四半期別法人企業統計調査概要-平成28年4~6月期-】財務省(PDF:668KB)

2012年の安倍政権発足後に内部留保が急速に増えたのは、企業の安倍政権に対する不信感の表れなのでしょう。「面従腹背(めんじゅうふくはい)」とは、表面だけは服従するように見せかけて内心では反対することをいいますが、今の日本企業そのものに見えます。つまり、安倍政権にへつらっていれば減税してくれるので利益は溜め込める、でも使い道については安倍政権の指図なんか受けませんということです。一方の、安倍首相は総選挙のために延期してきた消費税増税を、自身の総裁選のために増税するようですから「同じ穴の狢(むじな)」に過ぎません。

労働分配率(人件費の割合)が過去最低水準にあるということは、企業が儲けを給料に回していないというに外なりません。従業員満足度の向上を掲げている多くの企業は、従業員に対しても「面従腹背」のようです。日本郵便の社長は、これまで「従業員に犠牲を強いるビジネスモデル」で経営してきたと公に認めてしまいました。あらゆるものが値上げし始め、消費税増税を控えた多くの労働者にとって、「景気回復」は受け入れ難いものに変わりつつあります。

【宅配急増 3社値上げ、そろい踏み ゆうパック、平均12%発表】

日本郵便は5日、宅配便「ゆうパック」の料金を来年3月1日に値上げすると発表した。 宅配便大手3社のうち、ヤマト運輸は10月から、佐川急便は11月からの値上げをそれぞれ決めている。記者会見した横山邦男社長は「過重労働、低賃金という形で社員に犠牲を強いるビジネスモデルには限界がある」と述べ、人件費高騰が値上げの主な理由と説明した。親会社の日本郵政は、子会社の不振を受け2017年3月期決算で巨額の損失を計上した。報道陣から「利用者へのつけ回しではないか」と問われた横山社長は「値上げは安定的なサービス提供のため必要。利用者の理解は得られる」と述べた。(2017年9月6日 朝日新聞)

【首相 「成長重視」抑制、消費増税明言】

内閣支持率の下落で政権の求心力が低下し、アベノミクスの実効性に批判もくすぶる中、首相は2019年10月の消費税率10%への引き上げを「予定通り実施する」と明言するなど、経済成長を重視する従来の姿勢を抑制。来年9月の自民党総裁選をにらみ、増税の是非が争点になるのを避けたいという思惑もありそうだ。
首相は5日の読売テレビ番組で「19年の消費税引き上げは予定通り行っていく」と表明した。これまで首相は一貫して「大切なのは経済を成長させることだ」という姿勢を崩さず、第2次安倍政権以降で2度延期された消費増税の行方が注目されてきた。内閣支持率が低下する中、地方選挙で「有権者にアベノミクスを訴えても聞いてもらえない」(中堅議員)とぼやきが漏れている。総裁選で3選を目指す首相は自身の経済政策に批判が強まることを懸念し、成長重視の発言を抑制したようだ。(2017年8月16日 毎日新聞)

出典元:日本経済新聞・厚生労働省・内閣府・読売新聞・財務省・ロイター・産経新聞・朝日新聞・毎日新聞