【日系4世に日本で就労資格、法務省導入へ】

2017年7月31日
読売新聞

法務省は、一定の日本語能力などの要件を満たした海外在住の日系4世が日本で就労できる新たな在留制度を導入する方針を固めた。

制度開始当初は、年間1000人程度の受け入れを見込む。近く意見公募(パブリックコメント)を行い、実施時期を決める見通しだ。

新制度は、日系4世に日本への理解や関心を深めてもらい、将来的に日本と現地の日系人社会との懸け橋になる人材の育成を目的とする。
制度案では、他国で働きながら滞在できる「ワーキングホリデー制度」と同様に、対象年齢を18~30歳に限定し、滞在中は就労が可能な「特定活動」の在留資格を与える。

来日時に簡単な日常会話ができる日本語検定4級(N4)程度、在留資格更新時には複雑な文章も理解できる3級(N3)程度の能力を有することを要件とし、家族の帯同は認めない。

ユニオンからコメント

海外に住んでいる日系4世に、新しい在留制度を導入する方針を法務省が決定したというニュースです。労働人口減少に対応するため「日系4世が日本ではたらきやすい制度を」というのは、安倍政権が掲げる「1億総活躍プラン」で既に提言されています。

【「日系4世や高齢者活用を」自民、1億総活躍で提言書】

自民党の1億総活躍推進本部は11日、日系4世の受け入れや高齢者の就労機会の拡大などを盛り込んだ政府への提言書を、担当大臣に提出した。少子高齢化が進む中、働き手を増やす狙いだ。ブラジルやペルーなどの日系人は、3世までは日本国内の就労活動に制限のない在留資格を持てるが、4世は大きく制限されている。そのため日本語を学びながら働ける、4世向けのワーキングホリデー制度をつくるよう提言。在留資格の拡大も議論するよう求めている。(2017年5月11日 朝日新聞)

【ご参考】【一億総活躍社会の構築に向けた提言】自由民主党(PDF:1.02MB)

日系4世とは、日本から海外に移住した日本人の第4世代を表す言葉で、現在約380万人以上いると推定されています。日本ではたらいている外国人は100万人を超えていますが、さらに「外国人労働者を受け入れて、人手不足が深刻な職場へ」というのが(働き方改革)の方針の一つです。

【ご参考】【海外日系人数】公益財団法人海外日系人協会

【外国人労働者100万人超え 受け入れ政策急務】

日本で働く外国人労働者の数が2016年に初めて100万人を超えた。不足する労働力の一部を外国人が補う構図が鮮明となっている。留学生や技能実習制度といった「サイドドア」から事実上の単純労働力が流入しており、早急に外国人労働者の受け入れ政策を立て直す必要がある。政府は働き方改革実現会議で外国人材の受け入れについて議論する方針だ。
厚生労働省が27日に発表した16年10月末時点の外国人雇用状況によると、外国人労働者数は108万3769人で、前年同期と比べて19%増えた。増加は4年連続で、伸び幅も過去最高となった。政府は高度人材に関しては受け入れに積極的だが、いわゆる単純労働者の受け入れは認めていない。しかし現実には技能実習制度や留学生を通じて事実上の単純労働者の流入が急増している。(2017年1月28日 毎日新聞)

【ご参考】【「外国人雇用状況」の届出状況まとめ】厚生労働省

【働き方改革 外国人受け入れ拡充 政府検討】

9月下旬にも初会合が開かれる「働き方改革実現会議」に関する政府の対応方針の全容が判明した。正規・非正規労働者間の賃金差を縮小する「同一労働同一賃金」の実現や、長時間労働是正に加え、外国人労働者の受け入れに向けた法制の検討も盛り込んだ。外国人労働者の受け入れは現在、研究者や医師など専門分野に限って認めている。その他、技能実習生なども含め約90万人の外国人労働者がいる。しかし、少子高齢化が進む中、将来的な人手不足をにらんで外国人労働者受け入れを求める声が自民党を中心に強まり、同党は5月、人手不足の深刻な介護や農業、旅館などでの推進を提言。これを受け実現会議も見直しの議論を始める方針を決めた。(2016年9月14日 毎日新聞)

外国人労働者が増加している背景には、「サイドドア」と呼ばれる技能実習生や留学生アルバイトの増加が大きな要因になっています。2016年11月に技能実習生の人権保護などを目的とした「外国人技能実習制度適正化法」が成立し、2017年11月から施行されることになりました。主な変更点は(実習期間の延長・受入れ人数枠の拡大・対象職種の拡大)の3つですから、「より多くの職場で、より多く受け入れる」ようにする法律です。

【ご参考】【新たな外国人技能実習制度について】厚生労働省(PDF:3.23MB)

【ご参考】【外国人技能実習機構】外国人技能実習機構

【外国人技能実習制度 介護職に拡大へ】

発展途上国の労働者が日本で技術を学ぶ「外国人技能実習制度」の適正化法は18日午前の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。日本で介護福祉士の国家資格を取得した外国人が継続的に働けるよう、在留資格に「介護」を設けることを柱とした改正入管法も成立。いずれも公布日から1年以内に施行される。政府は、適正化法の施行と同時に技能実習の職種に「介護」を追加する方針。人手不足の介護現場で外国人の受け入れ拡大にかじを切ることになる。(2016年11月18日 毎日新聞)

【ご参考】【外国人技能実習制度への介護職種の追加について】厚生労働省

外国人技能実習制度は「技能実習生が本国で修得することが困難な技能であること」が原則です。しかし農業や漁業・建設業など、受け入れが認められている(74職種・134作業)には単純作業も多く、「人手不足を補う単純労働」との批判は避けられません。国外からは強制労働と非難され、国内では不正行為が減少しないなど、問題点が多く残っています。

【ご参考】【技能実習の職種・作業の範囲について】公益財団法人国際研修協力機構

【米の人身売買報告書、中国が最低ランクに】

米国務省は27日、世界各国の人身売買に関する2017年版の年次報告書を発表した。「最低基準を満たしておらず、改善への取り組みもみられない」として中国の評価を昨年から1段階引き下げ、4年ぶりに4段階中の最低ランクに位置づけた。最低ランクは中国のほか、イランや北朝鮮、ロシア、シリアなど。日本は主要7カ国で唯一、上から2番目の「対策不十分」だった。「外国人研修・技能実習制度」の研修生の一部が「強制労働下に置かれている」と指摘。(2017年6月27日 日本経済新聞)

2016年版人身取引報告書(日本に関する部分)でも、「強制労働の事案は、政府が運営するTITP(外国人技能実習制度)において発生している。この制度は本来、外国人労働者の基本的な専門的技能を育成することを目的としていたが、事実上の臨時労働者事業となった。脱走を防ぐために技能実習生のパスポートを取り上げ、移動を制限する雇用主もいる」と指摘されています。

【ご参考】【2016年人身取引報告書(日本に関する部分)】在日米国大使館・領事館

【昨年の不正行為、最多383件 外国人実習生の受け入れ先】

法務省は8日、外国人技能実習生に時間外賃金を支払わないなど、実習生の受け入れ先の不正行為が昨年1年間で383件に上ったと発表した。前年より13件増え、現在の制度となった2010年以降では最多となった。不正行為の内訳では、賃金の不払いが121件で最多。不正発覚を免れるために賃金台帳を書きかえるなど偽造・変造した文書の使用が94件。実習生のパスポートや在留カードを取り上げたケースも16件あった。外国人技能実習生は、製造業や農業などの現場で受け入れが進んでおり、昨年6月時点で過去最多の21万人に達している。不正行為が発覚すると実習生の受け入れが一定期間できなくなるが、それでも低賃金や長時間労働などの問題は後を絶たないのが現状だ。(2017年3月9日 朝日新聞)

【ご参考】【平成28年の「不正行為」について】法務省入国管理局

日本は外国人の単純労働を認めていませんが、抜け穴になる制度が用意されれています。国際貢献を(建前)に掲げる技能実習制度ですら、多くの実習生が低賃金で単純労働の作業に従事しているのが現実です。実習生の失踪、劣悪な職場環境の実態が報道されることも少なくありません。

【実習生という労働力 人手確保の光と影】

人手不足の日本。働く外国人材は1年で2割増え、2016年に108万人と過去最高を更新した。最大の伸びはベトナム人の前年比56.4%増。ベトナムは外貨獲得と雇用対策を兼ね、国策として「労働力の輸出」を進める。15年10月末からの1年で働くベトナム人は留学生も含め11万人から17万人に増え、日本の人手不足を補っている。だがこんな例もある。昨年、東日本クリーニング協同組合(仙台市)で受け入れた技能実習生50人のうちベトナム人2人が失踪。法務省によると、16年に失踪した実習生は全国で5058人。ベトナム人の2025人は中国人の1987人を上回る。人口が細り、日本は外国人材なしに豊かで便利な暮らしを保てない現実に直面している。正面からの議論を避け、国際貢献や留学を口実にサイドドアから受け入れるやり方はもう限界だ。(2017年3月21日 日本経済新聞)

【現代の蟹工船、外国人実習生の失踪者が急増】

怒鳴られ、殴られ・・・。それも毎日。「僕は動物じゃない」。長崎県にある入国管理センターの面会室で、ベトナムから来日した20代のトゥオンさんは切々と訴えた。外国人技能実習生として2015年5月から横浜市にある建設会社に受け入れられた。日本語がよく分からず、理解できたのが「ばか」「国に帰れ」。いじめだった。2カ月で会社を飛び出した。都内の公園で4カ月を過ごし、その後の2カ月は新潟県の工場で働いた。実習生は原則転職できない。不法就労が警察にばれて、昨年1月、入管難民法違反の容疑で逮捕された。入管センターには、出国を拒み続けて収容が長期に及んでいる外国人が、全国の入管から移送されてくる。昨年末時点で82人。失踪した実習生も少なくない。法務省によると、5年で4倍近くと急増している。外国人労働者100万人時代に入ってなおも「移民政策」を否定する政府の建前と、少子高齢化が進む社会で不可欠な労働力となっている現実。原則週28時間まで就労可能な留学生については、国が30万人計画(2020年)を掲げる一方、不法就労が横行している。(2017年3月8日 西日本新聞)

【「串カツだるま」社長ら6人書類送検 留学生17人を違法就労させた疑い】

法定時間を超えて外国人留学生を働かせたなどとして、大阪府警天王寺署などは14日、入管難民法違反(不法就労助長)などの疑いで、人気串カツチェーン店「串かつだるま」の運営会社「一門会」(大阪市浪速区)の男性社長(55)ら幹部6人と、法人としての同社を書類送検した。社長は「就労制限は知っていた。認識が甘かった」と容疑を認めているという。(2017年3月14日 産経新聞)

コンビニエンスストアや飲食店など、様々な場所で外国人労働者を目にするようになりました。もはや外国人と一緒にはたらくことは普通のことになりつつあります。しかし、雇用した外国人を「人手不足解消の単なる労働力」としてだけ見ていれば、休ませなかったり、乱暴に扱ったりしてしまいがちです。「雇ってみたら思っていた人と違った」と安易に解雇してしまうようなケースもいずれ起きるでしょう。

政府は「日系4世が日本ではたらきやすい制度」を作ります。今後ますます外国人労働者は増加していきますから、雇用する会社の(コンプライアンス意識の向上)が不可欠になります。そして、会社が法律を守ることは、障害者雇用や違法残業・賃金未払いに対しても同じでなければいけません。

【障害者「職場で虐待」972人=給料搾取や暴力】

2016年度に職場で給料の搾取や暴力、わいせつ行為などの虐待を受けた障害者が972人いたことが26日、厚生労働省のまとめで分かった。全国の労働局が虐待が疑われるとの通報などを受けて1316事業所を調査した。うち581事業所で虐待の事実を確認し、是正指導などを行った。虐待したのは事業主や上司ら591人。卸売業で働く知的障害の20代女性はプレゼントと引き換えに、上司ら複数の男性から性的関係を強いられていた。このほか、知的障害のある50代男女3人は、住み込みのパート従業員として週40時間以上働いても週給2000~4000円しか渡されず、経営者が最低賃金法違反容疑で書類送検されたケースもあった。(2017年7月26日 時事通信)

【ご参考】【「平成28年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します】厚生労働省

【書類送検〝ブラック企業″334件 HPに初公表】

厚生労働省は10日、労働基準関係法令に違反したとして最近半年間に書類送検し、社名を公表した全国334件の一覧表を初めて作成し、同省ホームページ(HP)に掲載した。昨年末に発表した「過労死等ゼロ」緊急対策の一環で、担当者は「一覧表にすることで社会に警鐘を鳴らす狙いがある」と説明する。従来は47都道府県にある労働局のHPに載せてきたが、報道発表で社名を明らかにしたのにHPでは伏せた事例もあったほか、掲載期間もまちまちで統一基準がなかった。同省は送検を公表した日から約1年間掲載し、毎月更新すると決めた。(2017年5月10日 毎日新聞)

【ご参考】【労働基準関係法令違反に係る公表事案】厚生労働省(PDF:388KB)

出典元:読売新聞・朝日新聞・自由民主党・公益財団法人海外日系人協会・毎日新聞・厚生労働省・外国人技能実習機構・公益財団法人国際研修協力機構・日本経済新聞・在日米国大使館領事館・法務省入国管理局・西日本新聞・産経新聞・時事通信