【人手不足など議論 日商が夏季政策懇】
2017年7月19日
産経新聞
日本商工会議所は19日、東京都内で、全国の商工会議所の会頭らが集まり、中小企業の課題や政策要望を議論する「夏季政策懇談会」を開催した。深刻化する人手不足や事業承継問題が大きな議題となり、外国人労働者の活用や、事業承継関連税制の改正を求める意見が集中した。
人手不足については、人工知能(AI)、ロボットなどの活用を拡大させるべきだとの意見が多い中、中小企業での先行導入事例を紹介し、情報を共有することを決めた。また、三村明夫会頭は「中小企業で、外国人労働者のニーズが拡大する中、今年度末までに日商としての意見をまとめたい」と説明した。
事業承継では、欧米よりも日本での税負担が大きいため、各種の措置で、世界標準(グローバルスタンダード)レベルに引き下げていくよう、政府に要望することを確認した。
ユニオンからコメント
経済3団体の一つである日本商工会議所が懇談会を開催したというニュースです。
経済3団体とは、日本経済団体連合会(経団連)、日本商工会議所(日商)、経済同友会のことです。経団連は政治に強い影響力を持ち、日商は中小企業の利益を代弁する立場で、経済同友会は経営者個人が参加し政策提言を行うことが特色に挙げられています。
各団体では、政府への政策提言をまとめるセミナーをこの時期に開催しますが、団体ごとに違った特徴が見て取れます。安倍政権が名付けたキャッチフレーズ「ソサエティー5.0」を重視している経団連では、成長戦略についての議論をするようです。
【経済団体・夏季セミナー始まる 人手不足や改憲など議論】
経済団体の夏季セミナーが始まった。各団体は人手不足とその対応策としての生産性向上のほか、憲法改正、成長戦略などを議論する。経団連は20、21日に開催。混迷する国際情勢への対応や、今後の成長戦略の柱である人工知能(AI)やビッグデータを活用し快適な社会を実現させる構想「ソサエティー5.0」などについて議論する予定。
13、14日に開催する経済同友会は「持続可能な社会の構築」をテーマに、財政健全化目標の達成や社会保障改革、働き方改革と生産性向上を議論する。日本商工会議所は19日に中小企業で深刻化する人手不足問題について討議。また後継者不足で廃業を余儀なくされるケースも増えていることから事業継承も議論する予定だ。また経団連と経済同友会は、安倍晋三政権が掲げる改憲に対し、経済界としての考え方を取りまとめるための議論を予定している。(2017年7月6日 産経新聞)
【ご参考】【Society 5.0実現による日本再興~未来社会創造に向けた行動計画~】経団連(PDF:2.35MB)
一方、他団体では、露骨に安倍政権に対する批判の声が上がりました。「Japan 2.0」を掲げる経済同友会では安倍政権の財政政策に対して「姑息な手法」との意見が出され、日本商工会議所ではプレミアムフライデーを否定する意見が多かったようです。
【安倍政権の財政政策に批判相次ぐ 経済同友会セミナー】
経済同友会の夏季セミナーが14日、2日間の議論を終えた。経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)など安倍政権の財政政策に対し、厳しい言葉が相次いだ。
国内総生産(GDP)に対する債務残高の比率を安定的に下げることを、政権が財政目標に加えたことについて、商船三井の武藤光一会長は「GDPが増やせれば借金を増やしてもよい、という極めて姑息(こそく)な一時しのぎの指標」と指摘した。社会保障費が財政を圧迫している現状にも懸念が示された。日産自動車の志賀俊之取締役は「研究や教育など将来への投資が抑えられ、バランスを欠いている」。東京海上ホールディングスの隅修三会長は「(消費税率は)10%以上を言わないといけないが、言えていない。政治がシルバー(高齢者)デモクラシーから脱却できていない」と批判した。憲法が抱える課題についても議論を始め、年内にも論点整理を取りまとめる。(2017年7月14日 朝日新聞)
【ご参考】【軽井沢アピール2017「持続可能な社会の構築に向けて」】経済同友会(PDF:156KB)
【プレ金、いったん総括を―日商会頭】
日本商工会議所の三村明夫会頭は19日、夏季政策懇談会後の記者会見で、月末金曜日の退社時間を早めて消費を喚起するプレミアムフライデー(プレ金)について、「(開始から)6カ月たつ。一つの評価を下した方がいい」と指摘し、半年の節目でいったん総括して評価すべきだとの認識を示した。日商は、プレ金の取り組みを各地域の判断に任せているが、懇談会では否定的な見解を示す地方の商工会議所が複数あった。プレ金は今年2月にスタートしたが、午後3時に社員を退社させるなどの対策を取る企業に広がりを欠き、手詰まり感が出ている。(2017年7月19日 時事通信)
経済3団体に加盟している会社ではたらいている労働者は相当な数に上ります。その労働者を代表しているはずの連合本部が、労働者のデモに囲まれるという異常事態が起きました。連合執行部が安倍政権にすり寄ったのですから当然の結果かもしれません。それぞれの経済団体は、人手不足解消に外国人労働者の活用・憲法改正など、私たちの生活に直接関係するテーマを盛んに議論しています。労働者を代表する連合がしっかりとした議論を積み上げて政策提言をしなければ、労働者の権利は弱まっていくばかりです。
【連合へ働き手が異例のデモ 「残業代ゼロ、勝手に交渉」】
「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を条件付きで容認する方針に転じた連合への抗議デモが19日夜、東京都千代田区の連合本部前であった。日本最大の労働組合の中央組織として「労働者の代表」を自任してきた連合が、働き手のデモに見舞われる異例の事態だ。
連合傘下でない労組の関係者や市民らがツイッターなどで呼びかけたメッセージは「連合は勝手に労働者を代表するな」などのキーワードとともに拡散。都内の清掃作業員は「労働者に囲まれ、デモまでされる労働組合とは一体何なのか。恥だと思ってほしい」。連合執行部に対しては、傘下の労組や過労死遺族の団体などからも反発の声が続出している。
■揺らぐ連合の存在意義
連合は680万人ほどの組合員を抱える日本最大の労働組合の中央組織だ。厚生労働省の労働政策審議会の労働側委員は連合が独占。政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)にも神津会長が労働側の代表として加わり、残業時間の罰則付き上限規制といった重要政策の決定に関わってきた。「労組に守られていない8割以上の労働者がいる。連合はそこに向かってどう力を発揮するのかが問われている」。神津会長も繰り返しそう発言してきた。今回のデモの呼びかけ人の一人は「連合は労働者の代表としての自覚を持ってほしい」と話す。(2017年7月19日 朝日新聞)
出典元:産経新聞・一般社団法人日本経済団体連合会・日本商工会議所・公益社団法人経済同友会・朝日新聞・時事通信