【個人景況感が2期連続で改善 1年後の予想物価上昇率は3.9%】

2017年7月7日
日本経済新聞

日銀が7日発表した6月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、景気が1年前と比べ「良くなった」と答えた割合から「悪くなった」を引いた個人の景況感DIはマイナス16.2と3月の前回調査(マイナス18.1)から1.9ポイント改善した。改善は2四半期連続。景気判断の根拠は「自分や家族の収入の状況から」が59.3%で最多だった。1年後の景況感DIもマイナス17.3と前回(マイナス18.0)を0.7ポイント上回った。

収入が「増えた」との回答割合から「減った」を引いた収入DIは前回(マイナス22.1)から2.2ポイント改善し、マイナス19.9だった。比較可能な06年9月以降で最高となった。1年後の収入DIもマイナス22.2と、前回(マイナス24.4)からマイナス幅が2.2ポイント縮小した。

1年後の物価が「かなり上がる」または「少し上がる」と答えた割合は75.4%で前回(67.0%)から8.4ポイント上昇した。上昇は2四半期連続で、16年3月(75.7%)以来の高さとなった。1年後の物価の変化についての平均値もプラス3.9%と前回(プラス3.5%)から上昇し、16年3月(4.3%)以来の高さとなった。中央値はプラス2.0%で前回と同じだった。日銀の情報サービス局は「足元の一部で値上げの動きが実際に生じたことが影響した可能性がある」と分析している。

5年後の物価も「かなり上がる」と「少し上がる」の合計が82.3%と前回(79.3%)から3ポイント上昇し16年6月(83.6%)以来の高さとなった。5年後の物価の変化(毎年の平均)についての平均値もプラス3.8%と前回(3.4%)を0.4ポイント上回り、15年9月(3.9%)以来の高さとなった。中央値はプラス2.0%で前回と同じだった。

現在の物価が「上がった」と感じる割合も上昇した。物価が1年前より「かなり上がった」「少し上がった」と答えた割合は67.4%と前回(63.8%)から3.6ポイント上昇した。

調査は日銀が年4回実施する。全国で満20歳以上の4000人を対象に調査し、有効回答者数は2198人(有効回答率は55.0%)だった。回答期間は5月12日~6月7日。

ユニオンからコメント

日本銀行が「生活意識に関するアンケート調査」の結果を公表したというニュースです。
1年前と比べて景気が「変わらない・悪くなった」と答えた人の割合が(93.2%)から(93.0%)に改善したことが大きく取り上げられてます。現在、「景気が良い」と感じている人の割合は(0.8%)で、1年後の景気について「変わらない・悪くなる」と答えた人が(92.0%)という結果でした。

【ご参考】【「生活意識に関するアンケート調査」(第70回)の結果】日本銀行(PDF:700KB)

アンケート結果では、「1年前と比べてあなたの暮らしはどう変わりましたか?」との質問に(93.3%)の人が「どちらとも言えない・ゆとりがなくなってきた」と回答しています。その理由でもっとも多かったのが「物価が上がったから(51.6%)」です。

(67.4%)の人が、1年前と比べて物価が「かなり上がった・少し上がった」と答え、物価が上がったことを(78.9%)の人が「困ったことだ」と回答しています。さらに、これからの消費について「価格が安い」ことを重視すると回答した人は(51.6%)に上りました。

現在、日本銀行が推し進めている金融政策は、安倍政権が掲げる「アベノミクス」と足並みを揃えています。アベノミクスが「三本の矢」と名付けた政策の「大胆な金融政策」には(2%のインフレ目標・無制限の量的緩和・日本銀行法改正)が挙げられています。

アンケート結果からは、政府や日銀の思惑が大きく外れ、多くの人がデフレマインド(将来を不安に思い、節約してお金を使わないよう考える)にあることを浮き彫りにしました。その原因は、労働者の賃金上昇が物価上昇に追いついていかない「悪いインフレ」にあることが考えられます。

今回のアンケート結果では、1年前に比べて物価上昇の実感は4.3%(平均値)でした。さらに、1年後には物価上昇の実感は3.9%(平均値)と予想されています。ところが、政府が目標に掲げている賃金上昇率は3%程度ですから、そもそも目標値が物価上昇に追いついていないのです。

日本銀行と安倍政権は、景気を良くするために2%の物価上昇率達成を目指しているはずです。ところが、調査結果からは「物価が上がって、生活にゆとりがなくなった」人が圧倒的多数だとわかりました。一般に、緩やかなインフレは経済に良い状態といわれますが、それは物価上昇以上に収入が増えていることが大前提です。目標を先送りする前に、問題の本質を議論すべきでしょう。

【物価上昇2%、「18年度ごろ」へ先送り】

日本銀行は1日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを「2017年度中」から「18年度ごろ」に先送りした。物価目標の達成時期の先送りは今年3度目で、大規模緩和開始からは5度目となる。日銀は会合で、3カ月に1度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しを下方修正した。16年度平均は7月時点の見通しのプラス0.1%からマイナス0.1%に、17年度は1.7%から1.5%に、18年度は1.9%から1.7%にそれぞれ引き下げた。(2016年11月1日 朝日新聞)

アンケートには「日本銀行の外部に対する説明はわかりやすいと思いますか」という質問があります。(93.2%)の人が「わかりやすいとは言えない・わかりにくい」と答えています。また、日本銀行を信頼していない理由として、「中立の立場で政策が行われていると思わない」が半数以上(51.8%)に上りました。

今回の調査結果を見ていても、「景況感D.Iは改善した」「暮らし向きD.Iは悪化した」等、わかりにくい表現での説明に終始しています。わかりやすく言うと「90%以上の人が景気が良くなっているとは感じていない」と回答しているのですが、日銀は「(景気が)変わらない・悪くなった」と答えた人が(93.2%)から(93.0%)に改善したと発表します。

日本銀行法で定められた(金融政策の独立性)を投げ捨て、わかりにくい説明をしていれば、日銀が国民から信頼されることはありません。中立の立場を守らず、説明責任を果たさず、信頼を得ようとしない姿勢についても、安倍政権と足並みを揃えようとしているのかもしれません。

出典元:日本経済新聞・日本銀行・朝日新聞