【<ヤフー>障害者に特別休暇制度 通院や入院に対応】

2017年6月1日
毎日新聞

ヤフーは31日、障害のある従業員が有給休暇に加えて年6日の特別休暇を取得できる新制度を導入する方針を固めた。通院や入院、体調不良の時に安心して休めるようにするのが目的で、実際の従業員の声を反映させた。

障害者手帳を持ち、会社に申請済みの従業員が半日から休める。6月1日から適用する。現時点で対象となる従業員は、身体障害者と精神障害者を合わせて約100人いるという。

障害者雇用を巡っては、厚生労働省が30日、民間企業に義務付けている割合(法定雇用率)を2020年度末までに現行の2%から2.3%へ引き上げることを決定。企業の受け入れ体制整備が課題となっている。

また、ヤフーは社内規定の「配偶者」の定義を見直し、同性や内縁のパートナーに対しても同等の福利厚生を適用する。性的少数者(LGBTなど)がパートナーシップ証明書や同一世帯の住民票などの書類を提出して受理されれば、休暇や慶弔金などで夫妻と同様に扱われる。ヤフーは「より多様な人材が働きやすく安心して活躍し続けられる環境をつくりたい」と説明している。

ユニオンからコメント

ヤフー株式会社が、障害者やLGBTの従業員を支援するための新しい制度を導入したというニュースです。

休暇制度に掲げられている「ノーマライゼーション」とは、障害者と健常者が平等に生活する社会を実現させる、という社会理念の一つです。「実際の従業員の声を反映させた」ことを高く評価したいと思います。

【ご参考】【プレスルーム】ヤフー株式会社

2017年5月16日に経団連が「いま、ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包摂)社会の実現が、わが国の最重要課題の一つとなっている」として意見書を公表しました。
内容は「取り組みが急務であるLGBTの人に関する対応」に主眼が置かれています。

【ご参考】【ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて】一般社団法人日本経済団体連合会(PDF:720KB)

ダイバーシティ・インクルージョン社会を実現するには、障害者雇用の問題を避けて通ることはできません。2018年4月1日からの障害者雇用率引き上げで、増加が予想される精神障害者雇用についても、経団連は2016年12月13日に提言書を公表しています。

【ご参考】【障害者雇用率の見直しに向けて ~分け隔てない共生社会の実現~】一般社団法人日本経済団体連合会(PDF:312KB)

提言書の前半では、主に、平成28年11月21日に厚生労働省が公表した資料からの引用に基づき、障害者雇用納付金制度の見直しを提言しています。

【ご参考】【第72回労働政策審議会障害者雇用分科会 説明資料】厚生労働省(PDF:1.86MB)

精神障害者については、「多様な障害特性に加え、疲労やストレスに弱いので症状が安定しない傾向があり、【就労の困難度(職業能力)】を見極めることが難しく、職場定着の課題が多い」ことを理由に、「短時間勤務でも雇用率にカウントする」ことや、「助成金を拡充すべき」と提言しています。さらに、「精神障害者の職業能力(就労の困難度)や適性を把握・判定する制度の創設」を掲げました。

障害者雇用促進法第5条には、事業主の責務として、「すべて事業主は、障害者の雇用に関し、社会連帯の理念に基づき、障害者である労働者が有為な職業人として自立しようとする努力に対して協力する責務を有するものであつて、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るように努めなければならない」と明記されています。

つまり、障害者の「能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与え適正な雇用管理を行う」ことは企業に課せられた責任と義務です。「精神障害者は難しく課題が多い。だから法改正して助成金を増やせ」では、この条文に真っ向から反対しているように見えてしまいます。

また、経団連が精神障害者を指して言う「就労の困難度」とは、悪い言い方をすれば、「仕事の出来なさ」です。さらに、「仕事の出来なさ」を判定する制度を新たに作るよう提言しているのは、言い換えると「ダメな精神障害者を辞めさせやすくしてほしい」ということに他なりません。

経団連が実現を目指す「ダイバーシティ・インクルージョン社会」には障害者が含まれていません。そして「分け隔てない共生社会の実現」には、障害者雇用促進法の改正と助成金の拡充が必要だと訴えます。「障害者雇用は大変だから後回し」という本音が透けて見える提言です。

確かに、ここ数年で急増している精神障害者雇用には現場の困難が伴うことは事実でしょう。実際に、職場定着率の低さは障害者雇用全体の中で突出していますし、適切な配慮をイメージしにくいのも現実です。しかし、法律で定められた責務を放棄し、精神障害者だけを悪者にして(被害者面)していては、課題はいっこうに解決しません。

これからは、会社が試行錯誤を繰り返しながら、障害者雇用に向き合う姿勢が問われます。まずは、「うまくいかなくて、当たり前」と考え、職場と精神障害者の双方が手探りでルールを作っていく。障害者側の問題を指摘するだけではなく、会社が新しいルール作りに取り組む姿勢そのものに大きな効果があるはずです。

出典元:毎日新聞・ヤフー株式会社・一般社団法人日本経済団体連合会・厚生労働省