【3人に1人パワハラ受けた 厚労省調査、民間企業 前回よりも7ポイント増】

2017年4月29日
産経新聞

厚生労働省は28日、全国の企業・団体に勤める1万人を調べた結果、平成28年までの3年間で、職場でパワーハラスメント(パワハラ)を受けたと回答した人が32.5%に上ったと発表した。

24年の前回調査よりも7.2ポイント増加した。企業への調査でも、パワハラ相談を受けたとの回答が36.3%に上った。

厚労省による調査は2回目。同省の担当者は「理解が広がり、長時間の叱責など、かつては該当しないと思われていたものも、パワハラとして認識されてきたのではないか」と分析している。

パワハラに関しては、政府の働き方改革の実行計画でも対策強化が盛り込まれており、厚労省は同日、有識者や労使関係者からなる防止対策の検討会を設置した。

調査は昨年7~10月に実施。働いている人たちにはリサーチ会社を通じて調査し、企業に対しては従業員30人以上の2万社に質問を郵送し、4587社から回答を得た。

ユニオンからコメント

厚生労働省が、職場のパワハラに関する調査結果を公表したというニュースです。
過労自殺の大きな要因とされるパワハラについて、防止対策が急務と考える厚生労働省では、新たに検討会を立ち上げました。

【ご参考】【平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査】厚生労働省(PDF:572KB)

【ご参考】【「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」を設置しました】厚生労働省

パワハラ防止への取り組みは、(職場のメンタルヘルス対策)の重要課題として挙げられています。対策では「メンタルヘルス不調で休業した従業員の職場復帰支援を充実させる」ことを会社に求めていますが、それに逆行するような行為をした会社に対し、厳しい判決が下されています。

【元社員を提訴した会社に110万円支払い命令】

IT会社がうつ病で退職した元社員の男性(28)を相手取り約1270万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(石橋俊一裁判長)は30日、「不当訴訟によって男性が精神的苦痛を受けた」として、逆に会社に110万円の支払いを命じた。
判決などによると、男性は2014年4月、神奈川県内のIT会社に入社したが、長時間労働や上司のパワハラが原因でうつ病となり、同12月に退職した。会社が15年5月に「詐病で退社して会社に損害を与えた」と提訴してきたため、男性も反訴した。
判決は「会社側が主張する損害は生じ得ない」と指摘。訴状が届いた直後から不眠を訴えるようになるなど男性が精神的苦痛を受けたと認定した。(2017年3月31日 毎日新聞)

【「詐病で退社」訴えられた社員が反対提訴】

うつ病を理由にIT会社を退職したところ、「詐病で退社した」と会社から1200万円の損害賠償を求めて提訴された元社員の男性(26)が11日、会社に330万円の損害賠償を求めて横浜地裁に反訴した。IT会社は神奈川県鎌倉市の「プロシード」。
男性は2014年4月に入社、コンピューターエンジニアとして基盤システム作りなどをしていた。連日の仕事が長時間に及んだことや「こいつは腐っている」と罵倒されるなどのパワーハラスメントを受けたことで体調を崩し精神疾患を発症、同年12月に退職した。会社側は、15年5月に「詐病で会社を欺き退社した」と主張して男性を相手取って横浜地裁に提訴した。(2015年11月11日 毎日新聞

厚生労働省の調査結果では、パワハラを受けたと感じた人の約4割が「何もしなかった」と回答しています。その理由として「何をしても解決にならないと思ったから」、「職務上不利益が生じると思ったから」と答えています。

しかし、「パワハラを受けた経験があると、怒りや不満、仕事に対する意欲の低下などの心身への影響が多く見られる。不眠、休み、通院、服薬などのより深刻な心身への影響は、パワハラを受けた頻度が高くなるほど比率が大きく高まる」のも事実です。

3人に1人が受けたと答えているパワハラ行為は、被害者の心身に深刻な影響を与えます。
自分の身を守るためには、「自分はいま、パワハラ被害に遭っているのか?」を判断したり把握したりすることがスタートです。

パワハラは、次の6種類に分類されています。

  1. ①身体的な攻撃(暴行・障害)
  2. ②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
  3. ③人間関係からの切離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強要、仕事の妨害)
  5. ⑤過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない)
  6. ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

「どこから」の定義が難しいパワハラですが、厚生労働省が開設しているホームページで詳しく解説しています。自分が該当するかどうか判断に迷うようなケースは、同ホームページ(裁判例を見てみよう)から、自分に似た事例を探してみるのも一つの方法です。

【ご参考】【あかるい職場応援団】厚生労働省

【ご参考】【裁判例を見てみよう】あかるい職場応援団

職場では、誰もが健康で意欲的にはたらきたいと考えているはずです。そのためには、上司や同僚との良好な人間関係は欠かせません。厚生労働省が新たに設置した検討会から、実効性・即効性の高いパワハラ防止策が次々と提案されることに大いに期待します。

出典元:産経新聞・厚生労働省・毎日新聞