【「自殺考えた」微増23.6% 厚労省調査】

2017年3月21日
日本経済新聞

厚生労働省は21日、自殺に関する成人の意識調査の結果を公表した。「自殺したいと思ったことがある」と答えた人は23.6%に上り、2012年の前回調査より0.2ポイント上昇した。相談ダイヤルなど行政の対策が認知されていない実態も明らかになった。

厚労省によると、昨年の自殺者は2万1898人と7年連続で減少しているが、厚労省の担当者は「自殺者はなお多く、対策の充実が必要だ」と強調。「新たな自殺総合対策大綱に調査結果を反映させていきたい」と話した。

調査は昨年10月に全国20歳以上の男女3千人を対象に実施。2019人(回収率67.3%)から回答を得た。「本気で自殺したい」と考えたことがある人の割合は女性が25.6%、男性が21.4%だった。

年齢別にみると、50代が30.1%で最多。30代が28.7%、40代が24.3%と続く。20代は23.0%、60代は20.2%と2割を超えた。70代は19.1%だった。

自殺を考えた人の中で、1年以内に考えていた人は18.9%に上った。

自殺を考えたとき、どのように乗り越えたか複数回答で聞いたところ、「趣味や仕事など他のことで気を紛らわせるように努めた」が36.7%で最も多く、「身近な人に悩みを聞いてもらった」が32.1%で続いた。

今後必要な対策としては、59.9%が「子供の自殺予防」を挙げた。「相談窓口の設置」(51.2%)「職場におけるメンタルヘルス対策の推進」(47.2%)とする回答も多かった。

自治体の電話相談に全国共通の電話番号を設定した「こころの健康相談統一ダイヤル」は47.6%、厚労省の補助事業で運営されている電話相談「よりそいホットライン」は71.8%が、「知らない」と回答し、対策の認知度不足が浮き彫りになった。

ユニオンからコメント

成人のおよそ4人に1人が「自殺を考えたことがある」ことが厚生労働省の調査で分かったというニュースです。過去に実施した平成19年度、平成22年度の調査と比べて、わずかに増加していることがわかりました。

【ご参考】【平成28年度自殺対策に関する意識調査】厚生労働省

【ご参考】【平成23年度自殺対策に関する意識調査】厚生労働省(PDF:112KB)

【ご参考】【平成20年度自殺対策に関する意識調査】厚生労働省

【自殺者「1万5000人以下」へ 政府、10年後に先進国並みを目標】

政府が自殺防止に向けて、10年後に自殺者を「1万4千~1万5千人以下」とする目標の提示を検討していることが4日、分かった。人口比の自殺率では先進国並みの目標となるが、日本は自殺者が平成10年に3万人を超えて以降、突出して高い水準が続いているため、関係者は「かなり意欲的な数値」としている。

月内に自殺対策に関する報告書案の骨子をまとめ、目標数値を盛り込んだ「自殺総合対策大綱」を今夏にも閣議決定する。関係者によると、検討中の目標は、先進国の数値を参考にする。日本の人口に換算すると、1万4千~1万5千人になるという。

日本の自殺者数は、平成に入ってから15年の3万4427人をピークに減少傾向にあるものの、28年は2万1764人(速報値)と多い。長時間労働などを原因として、20、30代の若い労働者の自殺が自殺率を引き上げている。子供のいじめ自殺も後を絶たず、対策の強化が検討されている。(2017年3月5日 産経新聞)

【ご参考】【自殺総合対策大綱】厚生労働省(PDF:268KB)

政府による自殺防止への取り組みが「かなり意欲的」なことは期待できます。ここ数年、自殺者数は減少傾向にありますが、目標を達成するにはさらに効果的な施策を行うことが急務です。その理由は、自殺未遂や自傷行為を繰り返してしまうと精神科に強制的に入院させられることがありますが、その患者数が増加しているからです。

【精神科の隔離、初の1万人突破 平成26年度 厚労省、実態調査へ】

精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束や、施錠された保護室への隔離を受けた入院患者が平成26年度にいずれも過去最多を更新したことが、厚生労働省の集計で分かった。隔離は調査が始まった10年度以来、初めて1万人を突破した。
精神保健福祉法では、患者が自らを傷つける恐れがある場合などに指定医が必要と判断すると、拘束や隔離が認められているが、人権侵害を懸念する声も上がっている。拘束は453人増の1万682人。調査項目に拘束の状況が加わった25年度以降、増加の一途をたどっている。(2017年3月21日 産経新聞)

精神科病棟での身体拘束や隔離の実態調査は、通称「630調査」といい、厚生労働省が毎年6月30日付で都道府県に報告するよう求めている調査です。正式名称は「精神保健福祉資料」といいます。

【ご参考】【精神保健福祉資料】国立精神・神経医療研究センター

精神障害の病状には「希死念慮(自殺したい気持ち)」を常に抱えている人が少なくありません。治療や支援を受けて、やっとの思いで就労した人に適切な配慮がなければ、職場で心理的ストレスを与えてしまう可能性は高くなります。特に、精神障害者に対するパワハラ・いじめ行為は、その人の命を危険にさらす行為です。

職場の自殺防止には、周囲の関心が大切です。身近な人が「自殺を考えたり、実際に自殺に及んだりしてしまう」ことは、決して珍しいことではないと新聞記事は伝えています。顔色が悪い、いつもと行動が違うなどの「小さなサイン」を見逃さない注意が必要です。

また、誰もが、日ごろから自分の精神状態を把握して、「自分自身で気をつける」ことも重要です。例えば、「限界まで自分を追い込まない」「退職・転職をタブーと考えない」そのような意識を持つべきでしょう。具体的なヒントやチェックポイントは、厚生労働省のホームページ経由で数多く紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。

【ご参考】【自殺対策】厚生労働省

出典元:日本経済新聞・厚生労働省・産経新聞・国立精神・神経医療研究センター