【企業で働く障害者、過去最多】

2016年12月14日
朝日新聞

厚生労働省は13日、企業で働く障害者の人数が今年6月1日時点で、過去最多の47万4374人になったと発表した。1年前より2万1241人(4.7%)増えて、13年連続で過去最多を更新した。精神障害者の雇用の伸びが目立つ。雇用率も同0.04ポイント増の1.92%で、こちらも5年連続で過去最高を更新した。従業員50人以上の企業8万9359社を対象に集計し、2016年の障害者雇用状況としてまとめた。

ユニオンからコメント

厚生労働省が、障害者雇用状況を集計し結果を公表したというニュースです。「雇用率が5年連続で過去最高を更新した」とはいえ、法定雇用率を達成できている企業は、半数に満たない48.8%に止まりました。

【ご参考】【平成28年 障害者雇用状況の集計結果】厚生労働省(PDF:3.61MKB)

「13年連続で過去最多を更新した」雇用障害者数ですが、この4年間を見てみると、「過去最多を更新」は毎年恒例のフレーズになっています。

【ご参考】【平成27年 障害者雇用状況の集計結果】厚生労働省(PDF:3.83MB)
「雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。雇用障害者数は45万3133.5人、対前年5.1%(21,908.0人)増加」

【ご参考】【平成26年 障害者雇用状況の集計結果】厚生労働省(PDF:3.82MB)
「雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。雇用障害者数は43万1,225.5人、対前年5.4%(22,278.0人)増加」

【ご参考】【平成25年 障害者雇用状況の集計結果】厚生労働省(PDF:4.13MB)
「雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。数、率の伸び幅も過去最高。雇用障害者数は40万8,947.5人、対前年7.0%(26,584.0人)増加」

【ご参考】【平成24年 障害者雇用状況の集計結果】厚生労働省(PDF:1.96MB)
「雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。雇用障害者数は38万2,363.5人と前年より4.4%(16,164.5人)増加」

毎年「雇用障害者数が増え、雇用率が増加する」ことは、「本当に障害者のためになるのか」 については、慎重に検証していかなければいけません。大切なのは、雇用者数や雇用率の増加ではなく、安心して長くはたらける障害者が増えることだからです。

ここ数年で、精神障害者の雇用者数だけが大幅に伸びました。平成28年度調査では、前年比21.3%増の4万2028人に上ります。主な理由として、2018年の「精神障害者雇用の義務化」を控え企業が採用を増やしていることが考えられます。身体・知的障害者の多くは既に就職していることから、求人に対して応募する精神障害者が多いのも実情です。

2014 年 3 月に「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が発表した調査結果によると、精神障害者の約3分の1が3か月未満で離職し、1年以上定着したことが確認された人は約4割でした。つまり、就職した精神障害者のおよそ60%が1年以内に会社を辞めていることになります。こうした状況の改善を目指すことが何よりも重要です。

【時間外労働に罰則付き上限 自民特命委が中間報告案】

自民党の働き方改革特命委員会(委員長・茂木敏充政調会長)は13日、役員会で中間報告案をまとめた。長時間労働是正のため、時間外労働に罰則付きの上限を設けることや、退社から翌日の出社まで一定時間を確保する「インターバル規制」を導入した中小企業への助成金制度創設などを盛り込んだ。(2016年12月14日 朝日新聞)

電通の事件から、活発に議論され始めた長時間労働の問題ですが、主題は労働時間を厳しく規制することになりつつあります。しかし、長時間労働の問題は、突き詰めると「人手不足」の問題です。長時間労働がなくならない理由について、労使共に「人員の不足」を挙げていることからも明らかです。極端な言い方をすれば、長時間労働を減らすにはもっと人を雇うしかないのです。

労働力人口の減少傾向という現実から、高齢者・女性の労働力に注目が集まりがちですが、障害者の労働力にも期待ができます。今まで以上にはたらきたいと考えている障害者は少なくありませんから、社員教育を受け労働者・人材として有効活用されるような障害者雇用の姿を企業は模索すべきでしょう。雇用率達成という、企業のCSRやコンプライアンスとしての、いわば美談として語られる障害者雇用から、労働力として期待される本格的な障害者雇用へと変化していくことが求められます。

年々障害者雇用数が増加している背景には、障害者を雇う企業に対して手厚く用意された助成金の影響が考えられます。悪い言い方をすれば「雇えばお金がもらえる」のですから、とりあえず雇ってみようと考える会社も少なくありません。しかし、雇った障害者に定年まではたらいてもらおうと考えるのはずっと先の話のようですから、就職した障害者が無防備であってはいけません。障害者にも労働者としての自覚や努力が必要なのです。

障害者のための労働組合として発足したソーシャルハートフルユニオンは、間もなく設立3周年を迎えます。円満な職場で誰もが充実した毎日を過ごせるなら「ユニオンが目立たなくてもいい」との思いから、活動実績として会社の実名を挙げてアピールすることは一切していません。それでも、これまで100社以上の会社と交渉をしてきました。また、個人加入できる一般的なユニオンの会費(月額3000円ほど)に比べ、月額1000円と低く抑えているのは、一人でも多くのはたらく障害者に加入してもらいたいとの思いからです。

出典元:朝日新聞・厚生労働省発表