【うつ病介護、支援アプリ・・・日記形式で家族が記録】

2016年11月27日
読売新聞

うつ病患者の介護を支援するスマートフォン向けアプリを大阪大の工藤喬教授(精神医学)らのグループが開発した。

日々の介護で気づいたことを日記のように家族らが記録する仕組みで、介護疲れで家族までうつになるのを防ぐという。

厚生労働省によると、うつ病など気分障害の患者は国内で110万人を超えるという。多くは家族が自宅で介護しているが、患者とうまくコミュニケーションが取れないなどの原因で、家族まで悲観的な気分になってしまうこともある。家族と患者との関係が悪くなり、病状が悪化するという悪循環に陥っている例も多い。

そこで、「まず介護する家族らを支える必要がある」とアプリを考案。家族らが毎日、「よかった出来事」「悪かった出来事」「今後に活(い)かせること」の3項目を記録する。この作業を通して、患者を客観的に観察できるという。

記録を時系列で一覧表示できるので、患者の感情の起伏の原因を探るヒントにもなる。同じ患者を持つ家族らとネットで匿名で情報共有もできる。アプリはパソコンでも使える。

14組の家族に6週間使ってもらうと、12組で意思疎通がよくなるなどし、症状が改善した患者もいたという。現段階は試作品だが、工藤教授は「さらに大規模なテストで効果を試していく」と話し、実用化を目指すという。

ユニオンからコメント

うつ病患者の介護を支援するスマホ向けアプリを大阪大学が開発したというニュースです。
このニュース以外にも、新しい治療法につながる可能性がある新技術の開発に成功したという情報がいくつか発表されています。

【恐怖の記憶、書き換える技術開発 PTSD治療に効果か】
脳に残る恐怖の記憶を無意識のうちに書き換え、その記憶が引き起こす心身の反応を和らげる技術を国際電気通信基礎技術研究所(ATR)などのグループが開発した。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療につながる可能性があるという。英専門誌電子版に22日発表した。(2016年11月22日 朝日新聞)

【ご参考】「つらい経験を思いだすことなく、無意識のうちに恐怖記憶を消去できるニューロフィードバック技術を開発 」(ATR プレスリリース)

ATR(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)が、国立研究開発法人情報通信研究機構・脳情報通信融合研究センターなどと共同で、「つらい経験を思いださせることなく、記憶によって引き起こされる恐怖記憶を消去する」ことに世界で最初に成功したと発表しました。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、怖い思いをした記憶が心の傷となり、そのことが何度も思い出されて、恐怖を感じ続ける病気です。震災などの自然災害、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれています。

PTSDの症状は、(突然、怖い体験を思い出す)(不安や緊張が続く)(めまいや頭痛がある)(眠れない)といったものです。つらい体験をすれば、誰でも緊張が続いたり眠れなくなったりするものですが、それが数か月にわたって続く場合にはPTSDの可能性があります。さらに、PTSDを発症した人の半数以上がうつ病・不安障害などを併発し、特にうつ病は併発しやすいと言われています。

現在のうつ病治療は、抗うつ薬による薬剤療法、認知行動療法、対人関係療法などが主なものです。新しく開発された技術がPTSDの治療につながる可能性があるということは、うつ病の治療にも応用できる可能性が高いことが期待できます。

また、ATR社は、大阪大学との共同研究でBMI義手(脳の活動をセンサーで測り、信号をコンピューター解析することで、患者が念じたように動く義手)を使った新たな訓練方法を開発、それによって幻肢痛(げんしつう:怪我や病気によって四肢を切断した患者の多くが体験する、あるはずがない手や足が痛む症状)がコントロールできることを世界に先駆けて発見したと発表しています。

【ご参考】「―失われた手の痛みをなぜ感じるのか?― 念じると動く義手で幻肢痛のコントロールに成功」(ATR プレスリリース)

この成功は、幻肢痛の新たな治療法開発につながる成果があり、さらに脳活動を変えることで様々な精神疾患の新しい治療法への応用が期待されています。このような研究が日々進んで、新しい治療法の開発や介護支援技術の進歩が実用化されることを期待します。

出典元:読売新聞・ATR社発表