【知的障害者施設で虐待 暴言、使い込み横行 天草】

2016年11月16日
西日本新聞

熊本県天草市の知的障害者の入所支援施設で、職員が利用者の所持金を使い込んだり、差別的な発言や襟首をつかむ虐待をしたりしていたとして、県が障害者総合支援法に基づく改善指導をしていたことが15日、分かった。昨年8月にも虐待があったと認定され、指導を受けていた。県は「改善勧告や措置命令などの重い処分ではない」との理由で、いずれも公表していない。

県が虐待を確認したのは、社会福祉法人啓明会が運営する「苓山寮」と「第二苓山寮」で、利用者は計90人。県が情報提供に基づき、今年6月と9月、両施設に立ち入り調査した。

県や施設によると、50代の女性職員が利用者の代行で買い物をした際、私物を購入したり、品物を横領したりしていたのが今春、発覚して解雇された。別の職員たちも襟首をつかむ虐待のほか、「ばか」と暴言を吐いたり、嫌がる利用者に「山に連れていこうか」と言って怖がらせたりした虐待が確認された。県は、施設では過去にも利用者の預かり金の紛失が数件発生するなど、不適切な金銭管理を確認したという。

県は施設側に、12月までに具体的な再発防止策などを示した計画書の提出を求めている。両施設の飽田一夫施設長(67)は西日本新聞の取材に「昨年、県の指導を受けて職員の研修をしてきたが、こういう事態になり、利用者に申し訳ない」と話した。

ユニオンからコメント

熊本県の知的障害者入所施設で、障害者に対する虐待が繰り返し確認され県が指導していたにもかかわらず、その事実は公表されていなかったというニュースです。「障害者総合支援法」とは、「障害者自立支援法」に変わって平成25年4月1日から施行された法律です。

その前年の平成24年10月1日には「障害者虐待防止法」が施行されています。今年4月から障害者差別解消法が施行されるなど、法整備は整いつつありますが、障害者施設や特別支援学校で虐待が行われたというニュースは跡を絶ちません。

【同時期に3人頭けが 島田・障害者暴行、施設側通報せず】
島田市落合の障害者支援施設に入所している重度心身障害者が施設職員から暴行を受けたとされる事件で、施設側が同事件の被害者とは別の入所者3人の頭部のけがを同時期に確認していたことが15日、関係者への取材で分かった。静岡県によると、施設側は当初、3人のけがを「事故」と判断し、県の担当部署などに通報していなかった。(2016年11月16日 静岡新聞)

【<女性教諭>知的障害の子3人の口を粘着テープでふさぐ体罰】
福島県立の特別支援学校で50代の女性教諭が授業中、知的障害のある子ども3人の口を粘着テープでふさぐ体罰をしていたことが15日、県教委への取材で分かった。県教委は女性教諭を処分する方針。(2016年11月16日 毎日新聞)

【京都の障害者施設、新たに4人の虐待判明】
京都市左京区の知的障害者支援施設「わかば」で7月、個室のドアノブを取り外し、内側から開閉できない閉じ込め状態にしていた「虐待」が発覚した問題で、同市は4日、新たに4人の入所者が不当な身体拘束を受けていたことが判明したと発表した。市は同日、同施設に障害者総合支援法などに基づき「改善勧告」を行った。(2016年11月5日 産経新聞)

【「障害を自慢しとんのか」元障害者施設長が利用者虐待】
香川県坂出市の障害者福祉施設「アルシオーネ作業所」を利用する障害者に、60代の元施設長の男性が不適切な発言や暴力などの虐待を繰り返していたとして、県は1日、同施設に対し、障害者総合支援法に基づき障害福祉サービス事業者の指定を取り消す処分をしたと発表した。足が不自由な利用者に「障害を自慢しとんのか」と差別的な発言をしたこともあったという。(2016年11月2日 朝日新聞)

障害者虐待防止法の施行から、既に4年が経過しました。この法律は、職場での障害者虐待を禁じ、禁止する虐待の範囲に(心理的虐待)を加えました。記事に見られる「暴言を吐いたり、怖がらせたり」や「差別的な発言をした」行為がまさに心理的虐待です。

これまでソーシャルハートフルユニオンに寄せられた相談の中にも、(心理的虐待)を疑わざるを得ない内容が少なくありません。対処が難しいのは、障害者虐待に(虐待行為を立証する証拠集めが難しいこと)と(組織的に隠ぺいされてしまいがち)という特徴があるからです。多くの法律や報道が、逆に「障害者差別・虐待は存在するもの」と固定化させてしまうのではないかという不安もありますが、障害者虐待事件が世の中に広く報道されることが、虐待を思いとどまる(抑止力)につながることに期待します。

出典元:西日本新聞