第3044号【第22回意思疎通とストレス】

決めた範囲で対応を
ストレスからの愁訴注視

特性理解がベースに

コミュニケーションやストレス耐性に問題のある障害者は多い。

上場企業に勤める障害者(精神3級・ADHD)は、コミュニケーションに強い障害があると正直に自己申告して入社した。しかし、配置先の業務は、同僚と緊密なやりとりなしには円滑に進まないものだった。障害者の同僚から、雇用契約はほぼ自動的に更新されると聞いていたのに、雇用契約を打ち切られた。理由を尋ねると、コミュニケーション能力が低いと評価されたためだと伝えられ、「障害を入社前に伝えているのに、これでは障害のみを理由とした差別ではないか」と相談に訪れた。

上司や同僚は、そもそも差別している意識がなく、何が問題か分からず困っている場合が多い。双方の物事の感じ方について大きな差異があるためだ。

コミュニケーションが苦手な障害者は種類を問わず非常に多い。「誰ともかかわりたくない」との要望を持っている人もいる。しかし、会社がそれを理解し配慮できる職場をみつけるのは難しいと感じる。

些細な質問におざなりに答えたら、嫌がらせと捉えられた事例もある。また、障害者からの質問に丁寧に回答しても、反応がなく失望し、不真面目だと感じてしまう人も多い。障害の特性で、一方通行のコミュニケーションになりがちな人も多数いる。

職場でどう接し、どこまで配慮するかについて、会社側で線引きしておくことが解決策の1つになる。私生活に干渉しない、昼食に誘わないなど、健常者が気が咎めるような対応も必要になるからだ。また、障害ごとに特徴があるため、それを多少理解できれば、ある程度の配慮は可能になる。

障害者は全般的に病気や障害からストレスに弱い人が多いが、会社で働くということは、誰でも少なからずストレスを感じるものである。しかし、その弱さは健常者の想像を超えたものがあり、冬になると会社に行けない人たちが数多く存在するほどで、安易な判断が深刻な問題につながる。最初の愁訴を見逃さず、そのタイミングで細かな取り決めができる仕組みを構築するなど、会社独自の合理的配慮ガイドラインを作成することなどが、これからは要求される。

CSR活動へ参画も

会社が業務の中で従業員にストレスをかけるのは仕方のないことだし、コミュニケーションは能力も方法もバラツキが大きい。そのことを割り切って考え、双方が手探りのなか取り組むことが、差別撤廃につながると考える。

健常者に比べ、社内外の研修など社会人としてのスキルアップに取り組む機会がないとよく聞く。また、アフターファイブや私生活が極端に充実していないと感じている障害者も多く存在する。したがって、会社での就業時間が人生の全てであるように感じている人が多く、会社に寄せる期待や依存度も大きなものになってしまう。

教育訓練や研修を自社で行えなくとも、外部の専門的な機関を調べ、利用しやすい環境を構築したり、情報提供を行うと良い。また、会社が行うCSR活動や福利厚生に積極的に参加させるなど、会社を通して”社会に貢献している”と感じる環境を整備するのも効果がある。機会を提示し、参加の可否だけでも聞くのが望ましい。

出典元:労働新聞 2015年12月14日