第3039号【第17回難病】

精神的なケアが必要
公的制度の活用に支援も

病名を聞いても戸惑わない

パーキンソン病など、国が指定する難病は現在100種類以上ある。原因不明で治療法がなく、後遺症が残るおそれもあり、精神的負担も大きい。

職場では、健常者だった従業員が突然難病に罹患し、身体だけでなく精神障害者になってしまった場合の対処が課題になる。会社が途方に暮れ、放置や来社拒否など非人道的な対応をしているケースも存在する。身体障害者を雇用する際の配慮に加え精神的なケアも必要となる。

大手自動車メーカーに勤務する精神障害者A(精神3級)は、発病後長らく治療に専念していた。医師から復職可能と診断を受けたが、「任せられる仕事が何もない」と伝えられ、露骨な退職強要を受け悩んでいると相談に来た。

会社は、初めて聞く病名に戸惑い、Aの生命の安全確保が最重要かつ二度と働けないと勝手に判断していた。面談や検討を経て、就労と治療のバランスを取りつつ働くことで解決した。

上場企業で働く精神障害者B(精神2級)は、身体機能が徐々に奪われる難病になり、投薬に伴う強い副作用で精神障害となった。会社が職場や業務を見直し継続就労していたが、段々と簡単な作業に回され、「以前は部下だった者が上司になりバカにされ差別されている」と相談に訪れた。会社は、Bの要望すべてに応じることが配慮だと思い込み、そう振る舞っていた。だが、Bはそれを偏見や同情だと感じていた。Bは自身が難病や障害者になったことを強く悲観し、会社の過剰な配慮が被害妄想的な発想につながっていた。直属の上司と医師を交えて検討し、以前の業務で得た経験を生かせる職場に配置され、現在も円満に就労している。

絶望で自殺願望を抱く例も

健常者が障害者になったケースでは、治療と就労のバランスについて丁寧に話し合うことが解決につながる。重要なのは、経済的な問題も議題にすることだ。障害者は、これまでの人生設計が突然狂ってしまい、また高額な治療費ものしかかり大変な思いをしている。

会社ができることに限りはあるが、公的な支援を含めてある程度の収入を確保したり、制度の活用などを専門家に依頼したりと積極的かつ真摯に対応することが必要となる。

そもそも国が難病と指定するほどの病気であり、身近に経験することも乏しい。会社には、精神的なケアが強く求められる。自分は何も悪くないのに病気のせいで身体・精神障害者になったと悲劇的に捉えている人が非常に多く、絶望的であることは容易に想像できる。また、薬の副作用などで強い言語障害を伴う場合が多く、従前のようなコミュニケーションをとるのが難しい。さらに、一定期間を経て復職すると、周囲の視線に偏見や同情を感じてしまい、他者を攻撃する事例も多い。絶望から強い自殺願望を抱く例も存在した。

このように、症状が複合的であり、全ての精神障害者に共通するような配慮が要求される。

身体および治療への配慮は当然必要だが、今までのキャリアに対する評価を検討し、たとえば後進の指導やマニュアルの作成など、何らかの成果が残るような業務を任せることが望ましい。その場合でも合理的な判断に基づくものでなければならず、また私情や同情は禁物である。

出典元:労働新聞 2015年11月9日