【企業物価指数、3.4%上昇・・・9年ぶり高い伸び】

2017年11月13日
読売新聞

日本銀行が13日発表した10月の国内企業物価指数(2015年平均=100、速報値)は99.4で、前年同月より3.4%上昇した。

10か月連続の上昇で、伸び率は消費税の増税による影響を除くと、2008年10月の4.5%以来、9年ぶりの高い水準となった。

企業物価指数は企業同士が売買するモノの価格の動向を示す。品目別では、世界経済の回復を受けて銅などの「非鉄金属」が22.4%、産油国の減産による原油価格の上昇で、「石油・石炭製品」が15.8%、それぞれ上昇した。

ただ、「国内需要の強さで伸びたのはわずか」(日銀)で、仕入れコストが上がっても、消費者物価の上昇につながるかどうかは見通せない状況が続いている。

ユニオンからコメント

日本銀行が10月の国内企業物価指数を公表したというニュースです。

【ご参考】【企業物価指数(2017年10月速報)】日本銀行(PDF:316KB)

公表されたデータを詳細に見ていくと、「輸入物価指数」が前年比で15.3%と大きく伸びています。私たちが気になるのは、輸入品の値上がりなど、消費者物価とどう関わってくるかについてです。

「消費者物価指数」と「企業物価指数」は必ず一致するということではありません。それは、消費者物価指数には「企業物価指数」が対象としていない授業料や家賃、外食などのサービスの価格が含まれているからです。また、企業物価指数には「消費者物価指数」が対象としていない原油などの原材料や建設機械などが含まれます。

大まかに言うと、「企業物価指数」は間接的に「消費者物価」に影響を与えるということです。この2つの指数を比較するため、消費者物価指数の「生鮮食品を除く財」と、国内企業物価指数を「最終消費財」だけに限定して比較すると、両者はほぼ同じ動きになります。

今回公表された企業物価指数の「最終消費財」の中では、(輸入)が前年比5%の上昇でした。つまり、消費者物価指数でも、輸入に頼るものが値上がりする可能性が高いということになります。実際、消費者物価指数のエネルギー関連(電気・ガス・灯油及びガソリン)が7.6%と大幅に上昇しています。その他、上昇率が高いのは、保健医療の(1.8%)や、生鮮食品の(1.2%)など、節約や我慢が難しい分野の物価上昇(値上がり)が顕著になっています。

【ご参考】【消費者物価指数 全国 平成29年(2017年)9月分】総務省統計局(PDF:68KB)

【日銀総裁「物価上昇圧力は強まっている」】

黒田東彦日銀総裁は6日、足元の物価の動きは弱めとしながらも、目標の2%に向けて企業や投資家の行動、消費者の認識に変化がみられているとし、むしろ物価上昇圧力は強まっていると強調した。具体的な変化として、宅配大手の値上げを例に挙げて「吸収しきれなくなってきた賃金コストの上昇分を価格に転嫁していく動きが広がっている」ことや、消費者の「値上げに対する許容度も少しずつ増してきている」と語った。また、「上場企業である外食チェーン店の中には、値上げの発表が好感され、株価が大きく上昇したケースがみられている」とし、投資家は値上げによる売り上げ減少リスクよりも「採算改善効果が期待されている」との見方を示した。(2017年11月6日 ロイター)

日銀総裁の言う、「値上げの発表が好感され、株価が大きく上昇した」ことと、「消費者の値上げに対する許容度が増した」がどこでどうつながるのか理解に苦しむところです。一般に、「株価が上昇した」ことを喜ぶ投資家たちは外食チェーンにはあまり行きませんし、値上げを受け入れたくない消費者は外食を控えるしか方法がありません。値上げを「仕方なく受け入れる」と、「許容する」では少し意味が違います。

いずれにしても、これからあらゆる物価が上昇することはほぼ間違いないようです。消費税の増税など、「生活のランニングコスト」だけが上昇してしまえば、対抗手段は「給料が上がる」と「労働時間を増やす」以外にありません。国民生活を破たんさせることがないよう、格差の解消を目指す政策を打ち出すことが政府に与えられた喫緊の課題です。

出典元:読売新聞・日本銀行・総務省統計局・ロイター