【障害者差別・偏見「ある」が8割 内閣府世論調査】

2017年10月1日
朝日新聞

内閣府は30日、「障害者に関する世論調査」を発表した。前回調査よりもやや割合は減少したものの、国民の8割が「世の中には障害のある人に対して差別や偏見がある」と思っていることが明らかになった。

「差別や偏見がある」と思う人は83.9%で、2012年の前回調査から5.3ポイント減った。「ない」と思う人は4.5ポイント増の14.2%。

「ある」と思う人のうち「5年前と比べて差別や偏見は改善されている」と答えたのは50.7%、「改善されていない」は41.5%だった。

「障害のある人が身近で普通に生活しているのが当たり前」と思う人は88.3%で、思わない人の7.2%を大きく上回った。年金・手当の充実や、障害のある人に配慮した建物・交通機関の整備などの障害者施策が「進んだと思う」は54.4%、「進んでいないと思う」は33.3%。

障害のある人もない人もともに暮らせる社会を目指し、16年4月に施行された障害者差別解消法では手話や移動の補助といった「合理的配慮」を求めている。同法を「知っている」は21.9%で、「知らない」は77.2%にのぼった。

調査は今年8月、18歳以上の男女3千人を対象に面接で行い、1771人から回答を得た(回答率59.0%)。前回まで調査対象は20歳以上だった。

ユニオンからコメント

内閣府が「障害者に関する世論調査」の結果を公表したというニュースです。

【ご参考】【「障害者に関する世論調査」の概要】内閣府(PDF:696KB)

【ご参考】【障害者に関する世論調査】内閣府

調査結果によると、80%以上の人が「世の中には障害者に対して差別や偏見がある」と答えています。そして、70%以上の人が「知らない」と答えているのが次の3項目です。

「障害者権利条約の周知度」では「知らない」と答えた人の割合が77.9%でした。「障害者差別解消法の周知度」は「知らない」と答えた人の割合は77.2%、「障害者週間の周知度」では76.1%の人が「知らない」と答えています。

つまり、80%以上の人が世の中には差別や偏見があると考えているのに、75%以上の人が「差別や偏見の解消」には無関心だともいえます。無関心からは、無理解や差別・偏見しか生れません。この「障害者に関する世論調査」以外にも、圧倒的多数の回答が同じだったのが文化庁が行った「国語調査」です。

【本音伝えるなら・・・若者ほど「直接会って」国語調査】

「考えていることはできるだけ言葉に表して伝え合う」「相手や場面を認識する能力が必要」――。文化庁が21日に発表した2016年度の「国語に関する世論調査」で、より高いコミュニケーション能力を重視する傾向が強くなっていることが浮き彫りになった。
「コミュニケーション能力は重要か」という新設した問いでは、全ての年代で9割以上、20代では全員が「そう思う」と回答。「最も親しい人に自分の本音を伝えやすい手段は何か」の問いには90.1%が「直接会って会話」と答えた。「携帯電話での通話」(30.0%)や「メール」(17.3%)などの手段を大きく引き離した。文化庁国語課は「企業が採用試験でコミュニケーション能力を求める傾向があり、対応した若者たちが人間関係を重視している一面もあるのでは」と話した。
■「SNSの普及に伴い、相手を尊重し、他人の目に自分がどう映るかを気にする人が増えた。コミュニケーション能力が飛躍的に高まったともいえる」。国語に関する世論調査の結果について、東京大学大学院の橋元良明教授(コミュニケーション論)は、そう分析する。
「ネットやSNSを重視すると実社会での人間関係が希薄になるとのイメージを抱く人もいるが、実態は違う」と橋元教授。文化庁の調査で、親しい人に本音を伝える手段として若い人ほど「直接会っての会話」を重視する傾向が見られた。「SNSなどで交流していると実際に会いたい思いも強くなる。若ければ若いほど、実社会での社交性も高くなっている」と話す。(2017年9月21日 朝日新聞)

【ご参考】【平成 28 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要】文化庁(PDF:900KB)

ほとんどの人が重要だと考えているコミュニケーション能力ですが、そこに問題を抱えてしまう精神障害が少なくありません。「コミュニケーションの障害」と説明される発達障害では、多くの人が「とても重要」と思うことが、「とにかく苦手」です。

偏見や無関心を解消するには、コミュニケーションが大切なのは言うまでもありません。それは職場でも同じです。2018年4月1日から障害者雇用率が2.2%(現在2%、2021年までに2.3%)に引き上げられることで、はたらく精神障害者が飛躍的に増えるはずです。受け入れた職場で、双方向のコミュニケーションが成立しなければ、お互いが共感したり理解したりすることがとても難しくなってしまいます。

例えば、車イスの人を見ると多くの人が「日常生活でも大変だろう」と共感し、「段差があったら困るだろう」と理解することができます。ところが、発達障害の場合、コミュニケーションが難しいので「サボりたいだけだろう」「なんでそんな意味に受けとめるのか」と反感を感じる人も少なくありません。発達障害の特性や苦しみを自分に置き換えてイメージすることが出来ず、関心を持てないので共感や理解が難しいのです。

コミュニケーションを重要視し過ぎると、誰もが無意識に信じている価値観・正義感に頼ったり相手に押し付けたりしてしまいがちです。「打てば響く」ようなコミュニケーションが出来ない相手への関心は日々薄れていってしまうでしょう。それがいずれ、偏見や職場からの排除につながりかねないのです。

「世の中には差別や偏見がある」なら解消を目指すべきです。「コミニケーション能力は重要だ」なら、「重要だからこそ」苦手とする人への想像力や発想の転換が必要になるのではないかと考えてみる。そのように柔軟な考え方が出来る職場なら、きっと誰もがはたらきやすい職場になっていくでしょう。

出典元:朝日新聞・内閣府・文化庁