【「のろま」「使い物にならん」蹴られ・・・パワハラ相談、過去最多7万件に】

2017年6月16日
産経新聞

労使間のトラブルを扱う全国の労働局の労働紛争相談に寄せられた職場の「いじめ・嫌がらせ(パワハラ)」相談が、平成28年度は過去最多となる7万917件に上ることが16日、厚生労働省の集計で明らかになった。全体の相談件数は前年度より4.2%増の25万5460件となった。

集計によると、パワハラに関する相談は、前年度比6.5%増で、5年連続でトップ。辞めたくても辞めさせてもらえないといった「自己都合退職」4万364件(前年度比7.2%増)、「解雇」3万6760件(同2.7%減)も多かった。

厚労省の担当者は「職場におけるいじめやパワハラに対する社会的関心が高まったことで、積極的に相談するようになり、泣き寝入りするケースが減ったのではないか」と分析している。 

パワハラの事例として、上司から「のろま」「お前は使い物にならん」などの暴言を日常的に受け、「後ろから腰を蹴られ転倒するという暴行を受けた」ほか、「異動先の上司から無視されるようになり、それをきっかけに精神状態が不調となった。会社が解決金として50万円を支払うことで合意」などがある。

解雇に関する相談では、社長に「日曜日を休日にしてほしい」と伝えたところ、「繁忙の日曜日に休む人はいらない。1カ月後に解雇」といわれ、労働局の助言に基づき、当事者で話し合いが行われ、解雇が取り消された事例がある。

ユニオンからコメント

全国の労働局に寄せられた労働相談の件数を厚生労働省が発表したというニュースです。

【ご参考】【「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します】厚生労働省

総合労働相談は9年連続で100万件を超え、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が5年連続で最多になりました。過去最高を記録したパワハラの相談件数よりも、増加率が高かったのが、「会社が辞めさせてくれない」といった自己都合退職に関する相談(7.2%増の4万364件)です。

【ご参考】【平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況】厚生労働省(PDF:664KB)

総合労働相談コーナーに寄せられた約113万件の相談のうち、約21万件については労働基準法違反の疑いがあるとして労働基準監督署に送られています。法制度の確認・問い合わせが約71万件でした。

パワハラ・解雇など、個別労働紛争に関する相談は約26万件ありましたが、そのうち、(労働局長による助言・指導)が8976件、(紛争調整委員会によるあっせん)は5123件と、極端に少ないと感じます。さらに、(助言・指導)で解決しなかった人が(あっせん)を利用するケースもありますから、この数字は重複しています。

(都道府県労働局長による助言・指導)は、個別労働紛争の問題点を指摘して紛争当事者による自主的な解決を促す制度で、法的な強制力はありません。(紛争調整委員会によるあっせん)にも法的拘束力がありませんが、双方が参加して合意したあっせん案については民法で定められた「和解契約の効力」を持ちます。

(紛争調整委員会によるあっせん)で合意(解決)した件数は、2,003件でした。つまり、約26万件寄せられた個別労働紛争相談の中で、(裁判より手続きが迅速で簡便な)国の制度を利用して解決に至ったのが2000件(0.007%)ということです。ほとんどの人が訴訟を起こしたり、労働組合に加入したりしなければ解決しないのが現実です。

職場での問題に悩み、何とかしてほしいと訪ねるのが総合労働相談コーナーです。厚生労働省は「積極的に相談するようになり、泣き寝入りするケースが減った」と分析していますが、解決しなければまったく意味がありません。公表された数字からは、諦めてしまう人、泣き寝入りしている人が、まだまだたくさんいるという事実が浮かび上がります。

出典元:産経新聞・厚生労働省