【パワハラ防止へ対策話し合う検討会 厚生労働省】

2017年5月19日
NHK

職場でのいじめや嫌がらせといったパワーハラスメントを防止するため、対策について話し合う、厚生労働省の検討会が開かれました。

この検討会は、ことし3月に示された政府の働き方改革実行計画で、パワハラへの対策の強化が盛り込まれたことを受けて初めて開かれたもので、労働組合や経済団体の代表などが出席しました。

去年、国が行った調査では、過去3年間にパワハラの被害を受けたと感じている人が、働く人の3人に1人に上るなどパワハラは深刻な問題になっています。

19日の検討会では、専門家から「パワハラと指導との線引きが難しく、現場の管理者も頭も悩ませている」という指摘があったほか、労働組合の代表から「小規模な企業などでは対策が進んでいないところもあり、法整備も含めた検討が必要だ」といった意見が出されました。

厚生労働省は今後、パワハラの規制やガイドラインの作成も含めて検討を進め、遅くとも今年度末までに議論をまとめることにしています。

ユニオンからコメント

厚生労働省が設置した「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」の第1回が開催されたというニュースです。

【ご参考】【職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会】厚生労働省

厚生労働省が行った「パワハラ調査」については、ユニオンでも紹介しています。

【ご参考】【3人に1人パワハラ受けた 厚労省調査】

法律で明確に禁止されていないパワハラを、どのように防止していくのか。あらゆる専門家が、立場を超えて議論することが大切です。司法の現場では、すでに判例や法理が積み上げられつつあります。

【「50代は転勤願出せ」女性社員らへのパワハラ認定判決】

医療機器販売会社「フクダ電子長野販売」(松本市)の代表取締役から2013年、パワーハラスメントを受けたなどとして、従業員だった50~60代の女性4人が、同社と代表取締役に計約1700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、長野地裁松本支部であった。松山昇平裁判長は「代表は年齢のみで原告らの能力を低くみる発言をした」などとして、4人へのパワハラを認め、会社と代表に計357万円余の支払いを命じた。判決によると、代表は2013年4月に着任。その後、「50代はもう性格も考え方も変わらないから」「4人の給料で、若い営業員を入れてこき使った方がいい」などと発言。当時50代後半で営業統括事務係長だった女性にも「おばさんたちの井戸端会議じゃないから、議事録を作れ」「倉庫に行ってもらう」などと発言。4人は同年9月までに退職した。松山裁判長は、会社側に4人への慰謝料の支払いを命じた。同社は医療用電子機器大手のフクダ電子(本社・東京都文京区)の完全子会社。(2017年5月17日 朝日新聞)

【パワハラ訴えた元社員とALSOK和解 70万円支払い】

警備大手「綜合警備保障」(ALSOK)に勤務していた大阪府東大阪市の男性(51)が、パワハラや障害者差別を受けたとして、同社に550万円の損害賠償を求めていた訴訟が、大阪地裁で和解した。4月20日付。同社が解決金70万円を支払う。訴状によると、男性は2004年に嘱託職員として入社。翌年、営業担当の正社員になった。12年、休日出勤の途中に駅のホームで倒れ入院、心臓機能障害で身体障害者手帳4級の交付を受けた。約1年後に復職したが、上司から「死なん程度にこきつこたらええ」「身障者ねんから昇級せんでええやろ。働かせてもらってるだけでありがたいと思え」などの暴言を受けた。男性は知人を通じ社内のパワハラホットラインに相談したが、同社は適切に対処しなかったとしている。15年に上司から迫られ、退職したという。(2017年5月1日 朝日新聞)

「パワハラを我慢しなければ、退職」は現実です。ターゲットにされた人の多くが力尽き、職場を去っています。加害者は勝ち誇った気分で反省せず、見て見ぬふりをしてきた職場は被害者を「弱い人」と敗者のように扱い、次の攻撃目標を探します。

さらに、パワハラは被害者に深刻な精神的ダメージを与えます。もっとも深刻なのは「再就職・復職に大きな困難を伴う」ことです。次の職場でも「また同じ目にあうのではないか?」と、PTSDやフラッシュバックに悩み苦しむ人が少なくありません。

つまり、一度パワハラ被害に逢うと、被害者はその後も長期間苦しむということです。社会的に許されない行為であることは間違いありませんが、日常的に起きているのも事実です。パワハラには副作用があると知り、自己防衛を考えなければいけません。例えば、「PTSDを防ぐ」は、パワハラの副作用から身を守る方法の一つです。

【PTSD防ぐテトリス】

災害や事故などに遭ったとき、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防には、ブロックを組み合わせるコンピューターゲーム「テトリス」が有効との研究結果を、スウェーデン・カロリンスカ研究所などが国際科学誌「モレキュラー・サイカイアトリー」に発表した。画面の上から次々と落ちてくる様々な形のブロックを隙間なく並べる作業に追われ、ショックな場面が記憶に焼き付くのを防げる効果が期待できるという。研究チームは2014~15年、英オックスフォードの病院で、自動車事故に遭ったり目撃したりした71人を対象に実験した。半数の人には事故から6時間以内にゲーム機「ニンテンドーDS」を渡し、テトリスをしてもらった。その後、1週間で、事故を急に思い出すフラッシュバックの回数を調べると、テトリスをしなかった人は平均23回だったのに対し、テトリスをした人は平均9回に抑えられたという。PTSDを防ぐために様々な研究が進むが、研究チームは「テトリスは低コストで簡単。対処法として有望だ」としている。(2017年4月20日 朝日新聞)

検討会には、効果的で即効性の高いパワハラ防止のアイデアがいくつも出される、活発な議論を期待します。そして、議論の推移や法規制をただ待つだけではなく、一人一人が(自分を守る知識・情報・手段)を身につけていくことも、パワハラ防止につながります。

出典元:NHK・厚生労働省・朝日新聞