【基幹労連の組合員、自民支持が民進を上回る 昨春調査で】

2017年2月10日
朝日新聞

鉄鋼や造船重機などの産業別労働組合の「基幹労連」(組合員約26万人)が昨春、組合員に支持政党をアンケートしたところ、自民党支持が民進党を上回ったことがわかった。基幹労連は民進党の最大の支持団体・連合の傘下で、連合の神津里季生(りきお)会長の出身母体。自民党支持が民進党(旧民主党を含む)を上回るのは初めてという。

基幹労連によると、昨年4~5月、約2万5500人を対象に生活意識や支持政党などについてアンケートした。約2万4千人から回答があり、自民党の支持が約23%、民進党が約18%だった。支持政党なしは約53%だった。昨年4月の参院選後に再調査したところ、今度は民進党の支持が上回ったという。

基幹労連幹部は昨年7月の参院選に向け民進党が共産党と共闘したことに触れ、「共産党との選挙戦略にかかわるところが数字に出たのかもしれない」と話した。

ユニオンからコメント

連合(日本労働組合総連合会)会長の出身母体である、基幹労連(日本基幹産業労働組合連合会)が行ったアンケートで、自民党支持の割合が民進党支持を上回ってしまったというニュースです。

基幹労連とは、新日鐵住金や神戸製鋼、三菱重工や日立金属などの従業員労働組合で構成された組合員数26万人の連合体で、連合を構成する主要組織の一つです。

【ご参考】【『連合』構成組織一覧】日本労働組合総連合会(PDF:204KB)

現在、連合のトップである神津会長が、基幹労連(新日鐵住金労働組合)出身ということもあって、これまで民進党(旧民主党)を支持してきた連合や民進党議員に大きな衝撃を与える結果になりました。

2017年2月8日に開かれた基幹労連中央委員会では「働く者の声を代表する政党が、組合員の支持を得られていない事実を受け止めるべきだ」との発言があり、民進党議員からは「衝撃的な調査結果。(我々は)職場の声、国民の姿に向き合って行動しているのか」と反省が述べられました。

憲法の第28条「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」が、労働組合の根拠になっています。この団結力で多くの組織内議員を国会に送り出してきた連合の、「団結力が弱くなっている」という見方もできます。

また、この傾向は「基幹労連に限ったものではない」と分析されています。「官製春闘」が続き、働き方改革の動静が広く知られたことで、他の労働組合でも同じ傾向が見られます。
つまり、所属する労働組合ではなく、政府が給料を上げてくれている。残業時間の上限を決める話し合いもちゃんと行われている、ならば「自民党でもいい」ということです。

連合は、非正規雇用について「長期不況のなかで、正規雇用から非正規雇用への置き換えが進み、初職が非正規雇用である人の増加等は社会的な問題となっています」としています。さらに、「非正規雇用で働く人たちの多くが、低い賃金・労働条件で働かざるを得ない状況に置かれ、不当な扱いを受ける例も後を絶ちません」と指摘しています。

【ご参考】【主な活動 非正規雇用】日本労働組合総連合会

「非正規雇用の処遇改善は喫緊の課題」と考える連合は、「非正規労働センター」を設置し、非正規雇用問題に取り組んでいますが、そこに(内部の矛盾)を抱えてしまいます。

実は、連合や基幹労連のような主要労働組合は、所属する組合員のほとんどが正社員です。極端な言い方をすれば、「非正社員の処遇を改善することは、正社員の処遇を改悪する」可能性があるので、利害が対立しかねないのです。

現在、正規雇用されている人が「非正規雇用へと置き換えられ、低い賃金・労働条件で働かざるを得ない状況」にはなりたくないと考えることはごく自然です。現実は、非正規雇用の処遇改善より、正規雇用されている自分の処遇を守ることのほうが重要なのです。
加えて、ここ数年は首相がベアを要求する異常事態が続いていますから、大規模な労働組合の機能・役割そのものが不鮮明になっているのかもしれません。

ソーシャルハートフルユニオンは、「政治運動や社会運動をしない」という活動方針なので、特定の政党を支持することはないのですが、この報道から懸念していることがあります。

それは、「非正規労働者の処遇改善が話し合われる」働き方改革実現会議に、非正規労働者を代表する意見を伝えることが出来るメンバーがいない中、労働者側を代表するのが、神津連合会長ただ1人だということです。出身母体の自民党支持が大きくなることで、労働者側の「発言力が弱まってしまう」のではないかと一抹の不安を感じます。

【ご参考】【働き方改革実現会議の開催について】首相官邸(PDF:124KB)

「働き方」の改革を実現するための会議なら、例えば、為替変動やインフレのリスクを、雇用や従業員の給料で調整するのではなく、企業の内部留保を緩衝材にする。そのような政府・会社側からは決して出てこない意見も出されるべきでしょう。

「はたらく側から出される意見がまったく反映されない。そもそも意見が出ない」であれば、経済政策や日銀の金融政策を言い訳に使われ、改革の方向性が変わってしまったり議論がすり替えられたりする可能性があります。たった一人の労働者代表という気概を持って、現場からの当事者の声を届け続けてもらうことに期待しています。

出典元:朝日新聞・日本労働組合総連合会・首相官邸