【iPS細胞で難聴発症の仕組み解明 慶大などのグループ】

2017年1月5日
朝日新聞

進行性の難聴「ペンドレッド症候群」の患者のiPS細胞から内耳の細胞を作り、発症の仕組みを解明することに、慶応大などのグループが成功した。3日付米専門誌に発表した。

ペンドレッド症候群は、3歳ごろに難聴と判明することが多く、めまいや甲状腺のはれを伴い、言葉の発達が遅れる可能性もある。ペンドリンというたんぱく質を作る遺伝子の異常が原因とみられているが、発症の詳細な仕組みは不明だった。

グループは、患者の血液からつくったiPS細胞から内耳細胞を作製し、健康な人のiPS細胞から作った内耳細胞と比較した。

その結果、患者の内耳細胞ではペンドリンが異常に凝集し、細胞が死にやすくなっていることがわかった。アルツハイマー病などと同様に、細胞に異常なたんぱく質がたまることが原因とみられる。

次に、治療薬の候補を探すために、既存の薬が細胞死を抑えるかどうかを細胞レベルで実験した。その結果、免疫抑制剤として使われているシロリムスが、効果的に働くことを見つけた。グループの岡野栄之教授は「臨床研究の準備を進めている。さらに、iPS細胞から内耳の細胞を作りだすことで、さまざまな難聴の治療法開発にも役立てられそうだ」と話している。

ユニオンからコメント

難聴患者のiPS細胞から細胞を作り、発症の仕組みを解明することに成功したというニュースです。記事では、難聴の治療法開発にも期待が出来ると紹介されています。

これまでソーシャルハートフルユニオンでは、新しい治療法につながる新技術の発見・成功のニュースをいくつか紹介しています。

【うつ病介護、支援アプリ・・・日記形式で家族が記録】

病気の治療法に直接つながる技術開発以外にも、障害者にとって朗報と思える技術開発への取り組みというニュースは少なくありません。

【日産、完全自動運転へ DeNAと提携】

日産自動車のカルロス・ゴーン社長は5日、米ラスベガスでの講演で、人が全く関与しない完全な自動運転車を開発すると発表した。ディー・エヌ・エー(DeNA)と提携し、2017年に日本の国家戦略特区で実証実験を始める方針だ。日産が完全な自動運転車の開発方針を明らかにしたのは、初めてだ。今後は実用化に向けた技術開発を急ぐ一方、無人の輸送サービスの実現などを検討する。20年までに、実証実験を行う地域を首都圏や地方都市に拡大し、車両の台数も増やす。(2017年1月6日 読売新聞)

人間が運転しない「完全自動運転」の研究開発は、AI(人工知能)のノウハウを持つ異業種と自動車大手の提携が相次いでいます。トヨタ自動車は東大発のITベンチャー、プリファード・ネットワークス(PFN)の技術を活用して市販車への応用を探っています。

「完全自動運転」の実現は、肢体不自由の人はもちろん、視覚障害や聴覚障害の人にとっても移動手段が大きく広がる、素晴らしい技術です。
また、誰もがユニバーサルデザイン(UD:文化・老若男女といった違い、障害・能力を問わずに利用できる製品などの設計)の恩恵を受けれられる日も遠くないでしょう。

このように、医療など様々な分野で、いわゆるハード面は日々研究され進歩しています。
しかし、障害者がはたらく職場には、コミュニケーションなどソフト面の充実こそが求められます。革新的な技術開発とは程遠い、不合理な職場も未だに少なくありません。

実際、ソーシャルハートフルユニオンに寄せられる相談は「障害が理解されない。職場で無視されている」「障害者=契約社員。正社員と大きな差があり、教育機会やキャリアパスが用意されていない」など、障害に対するハード面(バリアフリー等)よりソフト面が問題になってしまうケースが多いのです。

今年、2017年は「障害者差別解消法」施行から1年が経過し、精神障害者雇用義務が盛り込まれた「改正障害者雇用促進法」施行の1年前という、谷間の1年です。与えられた時間をフル活用して、会社・障害者の双方が知恵を出しあいながら、「障害者もはたらきやすい職場」に必要なソフト面がより充実されていく1年になることを願います。

出典元:朝日新聞・読売新聞