【違法残業、社名公表厳しく 厚労省、月80時間超を対象】

2016年12月27日
日本経済新聞

厚生労働省は26日、長時間労働による過労死防止に向けた緊急対策をまとめた。違法な長時間労働を放置する企業の社名公表基準を厳しくし、これまでの「月100時間超」から「月80時間超」に広げる。複数の事業所で過労死や過労自殺が確認できた企業も社名公表の対象に加える。是正指導や立ち入り調査も強化するが、実効性が問われることになる。

厚労省は電通社員の過労自殺への社会的な関心を受け、同日の長時間労働削減推進本部で対策をまとめた。早ければ来年1月から始める。

違法な長時間労働が発覚した企業の社名公表ルールを厳しくするのが柱。公表の条件を月80時間超に引き下げる。またこれまで長時間労働の実態が3カ所で確認できた企業を公表の対象としたが、今後は2カ所でも公表するとした。

厚労省は問題企業に対し、まず幹部を呼び出し、労働基準監督署長が長時間労働の是正を指導する。その後、抜き打ちの立ち入り調査で違反が是正されていなければ社名を公表する。過労死や過労自殺で労災の保険給付が決まった従業員が2カ所で確認された企業も社名公表の対象とする。

これまでの社名公表基準は、月100時間超の長時間労働をしている労働者がいるかどうかに置いていた。

だが、従業員に占める比率や事業所数でも一定以上の条件を設けていたため、ほとんど該当する企業がなかった。昨年5月の制度導入後、社名の公表は1件にとどまり、効力が乏しいとの声が出ていた。

ユニオンからコメント

厚生労働省が、過労死防止の緊急対策として企業名公表の基準を厳しくするなどの対策を発表したというニュースです。

【ご参考】【「過労死等ゼロ」緊急対策】厚生労働省(PDF:236KB)

発表された過労死防止緊急対策の主な内容は次の通りです。

(長時間労働の防止策)

■労働時間の適正把握を徹底するため、実労働時間と自己申告が違う場合、企業に実態調査をさせる
■違法残業などによる是正勧告を年間に複数の事業場で受けた企業に対し、本社の幹部を直接指導
■違法残業があった企業の社名公表基準を見直し。公表基準となる違法残業の時間を月80時間超に引き下げ、過労死認定を要件に追加
■残業時間の上限を労使協定(36協定)で定めていない企業への指導を徹底

(メンタルヘルス対策・パワハラ防止策)

■精神障害の労災認定が3年間に複数あった企業の本社に特別指導。過労自殺を含む場合は改善計画を策定させる
■月100時間超の残業をした社員の情報を産業医に提供することを企業に義務づけ

(その他の取り組み)

■経団連など経済団体に対し、違法残業の防止や短納期発注の是正などを緊急要請

これからは、過労死・過労自殺が起きたり、違法な長時間労働をさせたりした会社名が公表されやすくなります。これまで表面化しなかった事件が、公表される可能性が高くなるということです。企業名の公表は大企業が対象になりますが、大企業は「ブラック企業」と呼ばれるのを嫌がりますので、一定の効果は期待できます。ただし、会社から労働時間を打ち切られることで、結果「持ち帰り残業」や「自宅残業」のような、見えない長時間労働が増えてしまうことにならないような注意も必要です。

厚生労働省の調査によると、2015年度に月80時間以上の残業をして過労死・過労自殺と認定された人は151人に上ります。緊急対策では、「過労自殺者を出した会社には改善計画を策定させる」としていますが、ひとたび失われた命が戻ることは決してありません。
自分は大丈夫なのか?はたらき過ぎではないか?と自分自身のメンタルヘルスに高い関心を持つことこそが防止策になります。

出典元:日本経済新聞・厚生労働省