【労働基準監督官、増員へ・・・電通の過労自殺受け】

2016年11月5日
読売新聞

政府は、長時間労働の是正を目指し、労働基準監督署の専門職員である労働基準監督官を増員する方針を固めた。

電通の新入社員の過労自殺問題を受け、従業員に長時間労働をさせている企業の監督や取り締まりを強化する必要があると判断したためだ。残業時間を減らすための制度整備と並行して、現場の体制を拡充することで、働き方改革の実効性を高める狙いがある。

労働基準監督官は現在、全国321の労基署に3241人が配置されている。労働者1万人当たりの監督官の数は0.53人で、ドイツ(1.89人)、英国(0.93人)など欧州の先進国と比べて見劣りする。取り締まりを強化しようにも、「マンパワーが足りずに対応が追いついていない」(政府関係者)というのが現状だ。

【ご参考】東京労働局(労働基準監督署の管轄地域と所在地一覧)

【ご参考】東京都の産業分類別事業所数及び従業者数(平成24年2月1日)(PDF:80KB)

ユニオンからコメント

政府が労働基準監督官を増員する方針を決めたというニュースです。
各都道府県にある労働基準監督署の所在地や管轄地域については、各労働局のホームページを参考にしてください。ユニオンのホームページにも、各都道府県の労働局をリンクしています。http://sh-union.or.jp/link/

ソーシャルハートフルユニオンの所在地がある東京都豊島区には、池袋労働基準監督署があります。およそ15名の労働基準監督官が勤務している池袋労基署では、どのくらいの会社を管轄しているのかを見てみます。
池袋労基署の管轄地域は、豊島区・板橋区・練馬区の3区です。
平成26年2月発表の「平成24年経済センサス―活動調査・調査の結果確定値」では、豊島区の事業所数は17,911所、従業者数は252,786人でした。板橋区では18,669所、190,303人、練馬区は 20,194所、167,060人です。

つまり、池袋労基署が管轄する地域には事業所(会社)が56,774社あって、610,149人がはたらいています。そして、労働問題が起きると約15人の監督官が取り締まりなどの実務にあたっているということです。

以前、池袋労基署に勤務している監督官から、「すべての問題にきちんと対処するには圧倒的に人が少ない」と聞いたことがあります。
それでは深刻な問題を抱えて相談に行く人はどうすればいいのでしょうと聞いたところ、「なるべく多くの資料を揃えてほしい。労働契約書、給与明細書、日記、メールなどとともに、何が問題でどう改善してほしいかを明確にしてほしい」と答えてくれました。
サービス残業や長時間労働のトラブルで、定時にタイムカードを押させられているなどのケースでは、日記やメールが「実際は何時まではたらいていたか」の証拠になり得ます。

報道からは、いつまでに、どのくらい増員されるのかは見えてきませんが、労働基準監督官の増員方針は大いに期待できます。一方、現場の監督官の言葉からわかるように、個人個人が日ごろ意識して準備しておくことにも大きな効果があります。

出典元:読売新聞