【体内から信号「デジタル錠剤」 大塚製薬、世界初の承認】

2017年11月15日
朝日新聞

米食品医薬品局(FDA)は13日、錠剤にごく小さなセンサーを埋め込んだ「デジタル錠剤」を承認した。医師の処方通りに患者が薬を飲んだかどうかを第三者が確認できる。効果的な治療ができ、医療費の削減にもつながると期待される一方、患者のプライバシー保護という課題もある。

承認されたのは、大塚製薬が製造・販売する統合失調症などの抗精神病薬エビリファイ(一般名・アリピプラゾール)に米プロテウス・デジタル・ヘルス社が開発した約3ミリのセンサーを組み込んだ錠剤と、貼り付け型の検出器。大塚製薬によると、このような医薬品と医療機器を一体化した製品の承認は世界初という。

患者が飲んだ薬が胃に入ると、胃液に反応してセンサーが信号を出す。患者の脇腹につけた小型装置が信号を検出。薬をいつ飲んだかという情報をスマートフォンやタブレット端末に転送する。患者の同意のもと、医師や介護者、家族らがその情報を共有できる。センサーは一定の時間がたてば、体内で消化・吸収されずに排泄(はいせつ)されるという。

米国内の試算では、処方通りに薬を飲まなかったことで病気が悪化したり、別の治療が必要になったりして年間に計1千億ドル(約11兆円)のコストがかかっているという。この錠剤がうまくいけば、薬を飲み忘れやすいほかの病気のお年寄りらにも応用できると関係者は期待を寄せる。

一方、患者のデータ管理や利用には、より慎重さを求める声が上がる。患者の様子を遠くから監視することにもつながりかねないとの懸念がある。

プロテウス社の社長は「このシステムにより、それぞれの患者の治療計画に役立つ情報を新しい方法で収集できる」とコメント。大塚製薬などはまず、米国の少数の患者を対象に、製品の価値を確認するという。日本での販売は現在予定していない。

ユニオンからコメント

アメリカ食品医薬品局が、薬の錠剤に小さなセンサーを埋め込んだ「デジタル錠剤」を承認したというニュースです。

【ご参考】【米国で新製品承認取得のお知らせ】大塚製薬

大塚製薬のプレスリリースには次のように書かれています。

【「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite®)」米国承認】

「エビリファイ マイサイト」は、エビリファイの錠剤に摂取可能な極小センサーを組み込んだもので、同剤の適応である成人の統合失調症、双極性Ⅰ型障害の躁病および混合型症状の急性期、大うつ病性障害の補助療法において使用されます。
この錠剤を服用するとセンサーが胃内でシグナルを発し、患者さんの身体に貼り付けたシグナル検出器「マイサイト パッチ」がそれを検出します。この検出器は、患者さんの服薬データだけでなく、活動状況などのデータを記録し専用の「マイサイト アプリ」に送信します。アプリには、睡眠や気分などを患者さんが入力することもできます。これらのデータはスマートフォンなどのモバイル端末に転送され、患者さんの同意があれば医療従事者や介護者との情報共有も可能になります。
大塚製薬代表取締役社長樋口達夫は、「当社の精神疾患領域における 25 年以上の経験の中でも、今回の承認は大きな契機になるでしょう。患者さんとケアにあたる方々のために、服薬状況を客観的に把握することでよりよい治療に貢献してまいります。今後、『エビリファイ マイサイト』を利用される医療機関や患者さんからのフィードバックをいただきながら展開していきます」と述べています。

精神疾患の「治療と就労の両立」では、薬の飲み忘れが悪い影響を与えてしまうケースがあります。うっかり薬を飲み忘れてしまい、再発や重症化を引き起こし、体調悪化から休職・退職につながることが少なくないのです。プライバシーの問題はよりいっそう慎重に検討しながら、素晴らしい医療技術へと発展していくことを期待しています。

出典元:朝日新聞・大塚製薬