【LGBT偏見、4割が変化・・・「多様な性」授業後】

2017年4月5日
毎日新聞

性的少数者(LGBTなど)への偏見や抵抗感を持っていた高校生の4割以上が、多様な性についての授業を受けた後に認識を改めたことが宝塚大看護学部の日高庸晴教授(社会疫学)の調査で分かった。日高教授らは、授業の普及が差別解消につながるとして、指導上の留意点などをまとめた冊子や授業用のスライドの公開を検討している。

昨年4~11月、奈良県の高校13校で生徒約2100人に、多様な性に関する50分間の授業を実施。授業の前後で「性別を変えたいと思うことはおかしい」「同性愛は理解できない」など14項目について、そう思うかどうかを尋ね、授業の効果を検証した。

「『ホモ、レズ、おかま』などは差別語だ」という項目では「そう思う」との回答が授業前の39%から授業後には65%に上昇した。授業前に「そう思わない」と答えた生徒のうち、半数が差別語と考えるようになるなど、全項目で、授業前に性的少数者への無知や偏見が感じられる回答をした生徒の4~5割の意識が変わったことが分かった。

調査は厚生労働省のエイズ対策研究事業の一環で、日高教授と奈良県高校人権教育研究会の教員が授業の指導案を作成し、同県内の教員が実施した。

2015年に文部科学省が性的少数者とされる児童や生徒へのきめ細かな対応を求める通知を出し、学校で多様な性に関する講演会を開くなどの取り組みが広がっている。日高教授は「普段から生徒に接する教師が教える方が伝わることもあり、教師自身も学ぶことができる」と指摘する。

問い合わせは日高庸晴研究室(hidaka-office@takara-univ.ac.jp

ユニオンからコメント

LGBTに偏見や抵抗感を持っていた高校生が、多様な性に関する授業を受けたところ4~5割の生徒の意識が変わったというニュースです。

差別の根本にある「偏見や抵抗感」を持っていた人たちが、50分の授業を受けたことで、およそ半数近くの人に意識変化が認められたのですから、あらゆる差別の解消につながる高い効果が期待できます。偏見や差別を取り除くには、正しい知識と理解が不可欠という点では、HIV患者を取り巻く環境にも当てはまります。

【ご参考】【HIV・ハンセン病に対する偏見・差別をなくそう】政府広報オンライン

障害者差別解消法、職場での障害者差別を禁じた改正障害者雇用促進法の施行からすでに1年が経過しました。障害者に対する偏見や差別をなくすためにも、障害に対する正しい知識と理解が求められています。

先日発表された「働き方改革実行計画」には「障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進」という項目があります。

【ご参考】【働き方改革実行計画(案)】首相官邸(PDF:1.63MB)

【障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進】

「障害者等に対する就労支援を推進するにあたっては、時間、空間の制約を乗り越えて、障害者の意欲や能力に応じた仕事を提供するなど、障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指していく必要がある」

「近年、障害者の雇用環境は改善してきているが、依然として雇用義務のある企業の約3割が障害者雇用ゼロとなっているほか、経営トップを含む社内理解や作業内容の改善等にも課題が残されている」

「2018 年4月より法定雇用率を引き上げるとともに、障害者雇用ゼロ企業が障害者の受入れを進めるため、実習での受入れ支援や、障害者雇用に関するノウハウを付与する研修の受講を進めるほか、障害者雇用に知見のある企業 OB 等の紹介・派遣を行う」

この項目では、障害者をこれまで以上数多く雇うことに重点が置かれています。あくまでも就労の支援で、障害者の職場定着には触れていません。「希望や能力を活かす」には安心して長くはたらける職場が必要ですし、「障害の特性に応じて活躍」するには職場の理解が欠かせません。

しかし、「障害者なんていないほうがいい」と考える人が、職場にはごく稀に存在します。
偏見とは意識せずに発せられた、悪気のない一言が障害者を傷つけることもあるのです。

無知と無理解が偏見や差別を生んでしまうことは、高校生が受けた「多様性に関する授業」の結果からも明らかです。これから障害者を受け入れる職場でも、障害を理解し偏見を減らすために、この授業を応用した社員教育を取り入れてみてはどうでしょう。

出典元:毎日新聞・政府広報オンライン・首相官邸