【「日本で働きたい」・・・グエン・ドクさんはそう申し出た】

2017年3月30日
産経新聞

医師、看護師ら約70人は、12時間にわたって小さな体に向かい合っていた。
ベトナム・ホーチミン市の病院で1988年10月に行われた、「ベトちゃんドクちゃん」の分離手術である。2人は腰から下を共有する結合双生児として生まれた。ベトナム戦争中に米軍がまいた枯れ葉剤の影響とみられる。

日本側から、器材や薬品が提供された手術は、奇跡的に成功する。兄のベトちゃんは術後、寝たきりの状態が続くが、弟のドクちゃんは順調に回復した。失われた左足の代わりに、日本から義足が贈られた。その後何度も来日するドクちゃんの近況は、現地からも頻繁に伝えられた。

家族とともに病院に引き取られたドク君は、兄の介護を手伝いながら、学校に通う。コンピューターとサッカーに夢中の少年は、やがて病院の職員となり、ボランティア活動で知り合った女性と結婚する。

兄は26歳で亡くなった。最期をみとったドクさんから連絡を受けた日本の知人は、電話口で号泣を聞いた。2年後、障害が遺伝する可能性を医師から示されながら、子供を持つことを選ぶ。兄によって生かされた自分の子孫を、どうしても残したかったからだろう。授かったのはなんと、自分たちと同じ双子だった。

今月初め、ベトナムを訪問された天皇、皇后両陛下との面会も実現した。「ちゃん」「君」から「さん」と呼び方を変えながら、成長を見つめてきたグエン・ドクさんも、今や36歳である。

来月には、広島県の広島国際大学の客員教授に就任する。昨年10月に東広島市で講演した際、大学の関係者に「日本で働きたい」と申し出て実現した。自らの経験をもとに、命の大切さについて講義する。これからは、グエン教授と呼ぶとしよう。

ユニオンからコメント

ソーシャルハートフルユニオンのサポーターをしていただいているグエン・ドクさんが、広島国際大学に客員教授として招かれました。

2017年4月1日から年に数回大学を訪れ、医療福祉学部の客員教授として教壇に立ち、自らの体験を基に「福祉を考えるうえで欠かせない平和や命の尊さ」について学生に講義を行う予定です。大学広報室によると「単位取得にかかわる授業としてではなく、講演という形になるのではないか。細かいことはこれから詰めていく予定」としています。

【ご参考】【広島国際大学がグエン・ドクさんを客員教授に招聘】大学プレスセンター

【本件に関する問い合わせ先】
広島国際大学広報室(担当:坂井・上田)TEL:0823-27-3102

出典元:産経新聞・大学プレスセンター