【NTT、非正社員も同じ福利厚生 健診項目や介護・育児補助、正社員と一本化】

2018年5月2日
朝日新聞

NTTグループは正社員と非正社員の間で待遇差があった福利厚生制度を見直し、1日から健康管理のメニューを中心に正社員の制度に一本化した。非正社員は定期健康診断の受診項目が増え、提携するフィットネスクラブやレジャー施設などを割安で使えるようになる。各種手当だけでなく福利厚生でも格差是正を図る動きが出てきた。

対象は同グループのNTT東日本、西日本、ドコモなどで半年以上働き、NTT健康保険組合に入る計約18万人。非正社員数は非公表だが数万人規模でいる。

労働組合が見直しを要求。会社側が昨年秋から議論に応じ、正社員の制度にそろえることで合意した。非正社員は、介護や育児サービスの利用補助も受けられるようになる。介護・育児に関する専門家の相談窓口も利用できる。会社側は見直しによる負担増がいくらになるか公表していない。ただ、外部業者を利用するため「大企業のスケールメリットを生かした価格交渉はできる」(関係者)とされ、基本給や手当より格差是正をしやすい面もありそうだ。

政府は働き方改革関連法案に、非正社員の待遇改善を図る「同一労働同一賃金」を盛り込んだ。2016年末に示した具体的なルールを定めるガイドライン(指針)の案では、福利厚生は原則として「同一の利用を認めなければならない」としている。

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」の荻野登副所長は「指針が正式に適用されれば、福利厚生の格差も放置できなくなる。NTTの対応は非正社員を多く抱える大企業として将来を見据えたものといえる。人手不足のなか、労働条件を改善して人材をつなぎとめる効果もある」と話す。

ユニオンからコメント

NTTグループが福利厚生制度を見直し非正社員と正社員の制度を一本化したというニュースです。NTTのように非正社員の待遇を上げることで正社員との格差を改善しようとする企業もあれば、正社員の待遇を下げて非正社員との格差をなくそうとする企業もあります。

【正社員の待遇下げ、格差是正 日本郵政が異例の手当廃止】

日本郵政グループが、正社員のうち約5千人の住居手当を今年10月に廃止することがわかった。この手当は正社員にだけ支給されていて、非正社員との待遇格差が縮まることになる。「同一労働同一賃金」を目指す動きは広がりつつあるが、正社員の待遇を下げて格差の是正を図るのは異例だ。同グループは日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の4社でつくる。廃止対象は、原則として転居を伴う転勤のない条件の正社員(約2万人)のうち、住居手当を受け取っている約5千人。毎月の支給額は借家で最大2万7千円、持ち家は購入から5年間に限り6200~7200円で、廃止で年間最大32万4千円の減収になる。(2018年4月13日 朝日新聞)

【手当廃止、正社員危機感も 日本郵政 他企業に広がる可能性】

日本郵政グループが、正社員と非正社員の待遇差の改善を求める労働組合との協議の中で、一部正社員を対象とした住居手当の廃止を打ち出した。正社員の間に「同一労働同一賃金」は待遇の悪化を招くとの危機感が広がれば、非正社員との待遇改善に向けた動きに水を差す可能性がある。
住居手当を支給されなくなる正社員からは、「会社側の説明は納得できない」「生活が苦しくなる」と戸惑いの声が出ている。今春闘ではほかにも寒冷地手当など複数の手当が削減されることになり、扶養手当は継続協議とされた。正社員には、今後のさらなる不利益変更に警戒感が広がる。
同一労働同一賃金は、安倍政権が今国会に提出した働き方改革関連法案の柱の一つだ。厚生労働省が2016年に示したガイドライン案では「各種手当の均等・均衡待遇の確保」をうたい、正社員と非正社員で各種手当の差をつけないよう求めている。住居手当への直接の言及はないが、厚労省は「不合理な差はあってはならない」との見解だ。正社員だけに認められている手当や福利厚生は多く、法律が成立すれば日本郵政のような見直しがほかの企業に広がる可能性もある。(2018年4月13日 朝日新聞)

日本郵政がこのような判断をした背景には昨年の裁判が影響しているのかもしれません。非正社員と正社員との格差が不合理であったと裁判所が判決を言い渡しています。

【契約社員への住宅手当支給命じる「画期的判決」】

東京や愛知など3都県の郵便局に勤務する契約社員3人が、同じ仕事内容の正社員と待遇格差があるのは不当だとして、日本郵便(東京)に正社員との手当の差額計約1500万円の支払いなどを求めた訴訟で、東京地裁(春名茂裁判長)は14日、住宅手当などの不支給は違法だとして、計約92万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
判決は、正社員であれば、一定額が支給される「年末年始勤務手当」や「住宅手当」について、契約社員に全く支払われないのは「不合理だ」と指摘。正社員の8~6割の手当を支払うよう命じた。また、契約社員には夏期・冬期休暇がないことや病気が理由の有給休暇が認められていないことについても、「官公庁や企業で広く制度化されており、不合理だ」などとして違法と判断した。(2017年09月14日 朝日新聞)

同一労働同一賃金は、本来、非正社員の労働条件を底上げする目的で始められた議論でした。いつの間にか、非正社員の給料を上げることではなく、福利厚生など待遇面を同じにしようとする議論になってしまいました。これは、既に労働契約法で禁止されているので、その罰則を強化したり制度運用を見直したりすることでも対応できたでしょう。

(労働契約法第20条)

「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」

【ご参考】【平成29年度 年次経済財政報告】内閣府

【ご参考】【正社員・非正社員の賃金差の現状】内閣府(PDF:564KB)

【ご参考】【労働政策審議会(同一労働同一賃金部会)】厚生労働省

日本郵政は、正社員の待遇を下げることで非正社員の待遇に揃えるという、もっとも本来の趣旨から逸脱した手法を採用しました。安倍政権が労働基準法・労働契約法の議論を、耳障りの良い「同一労働同一賃金」にすり替えたのと同じ手法です。日本郵政はインターバル制度導入については他企業に先駆けた感がありましたが、労使交渉全体を見渡した駆け引きで「痛み分け」を狙ったのかもしれません。

【日本郵政、勤務間休息導入 グループ4社、11時間 新年度中】

日本郵政グループは今春闘の労使交渉で、終業と始業の間に最低11時間の休息を確保する「勤務間インターバル制度」を、グループ4社で導入することで合意した。今春から労使で制度設計を始め、2018年度中に導入する計画だ。金融事業のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険は全社員が対象で、グループ全体では約4万4千人の社員に適用される。
勤務を終えた後、次の勤務が始まるまでに最低11時間の休息を確保するには、たとえば午後11時まで残業すると、翌日の始業時間を午前10時以降に遅らせる必要がある。勤務時間を1日単位で厳しく管理する制度で、長時間労働の是正に有効だとして普及を期待する声は多い。今春闘では日立製作所も導入を決めており、大手企業の導入が相次げば、普及に弾みがつく。
また、日本郵政グループは今春闘の労使交渉で、正社員のみに支給されてきた年始勤務手当を非正社員にも支払うことで合意。正社員だけが取れる夏期休暇、冬期休暇、病気休暇についても、非正社員が取れるよう制度を見直した。正社員と非正社員の待遇差の是正に向け、JP労組の要求の一部を受け入れた。会社側は「社会的要請に加え、非正社員のモチベーションの向上を考慮した」と説明している。(2018年3月16日 朝日新聞)

【ご参考】【終業から始業、最低でも11時間】

出典元:朝日新聞・内閣府・厚生労働省