【自動運転中の事故、所有者に責任・・・有識者報告書】

2018年3月20日
読売新聞

国土交通省は20日、自動運転中の車が事故を起こした場合の自動車損害賠償責任保険(自賠責)のあり方に関する有識者研究会の報告書を公表した。

原則として所有者に責任があることを確認し、車のシステムに明確な欠陥がある場合は、自動車メーカー側が製造責任を負うことにした。

自動運転の実用化に向けては、事故が起きたときの賠償のあり方、道路交通法などの交通ルールの整備、車両の安全基準の策定などを進める必要がある。多くの課題がある中で、自動車の所有者がすべて加入する自賠責のルール整備に着手した。

報告書によると、基本的な原則として、人ではなく車が運転の主体となる高度な自動運転中の事故であっても、事故の責任はこれまで通り、所有者が負うとした。

ユニオンからコメント

国土交通省が、「自動運転の車が事故を起こした場合」の損害賠償に関する研究会報告書を公表したというニュースです。

【ご参考】【自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書(概要)】国土交通省(PDF:272KB)

【ご参考】【自動運転における損害賠償責任に関する研究会 報告書】国土交通省(PDF:920KB)

報告書には「自動運転については、一般的に人間のみが行う運転よりも安全かつ円滑な運転を可能とするとされていることから、自動車事故の削減に加え、交通渋滞の緩和、環境負荷の軽減等、従来の道路交通社会の抱える課題の解決に大きく寄与すると考えられる。また、高齢者等の移動手段の確保に資する等、移動に係るこれまでの社会的課題に対しても新たな解決手段を提供する可能性がある」と書かれているいっぽう、「自動運転に関して、自動運転システムの欠陥が原因の事故が相対的に増える可能性も考えられることや、データの誤謬、通信遮断、ハッキング等の今までとは異なる原因による事故も想定されることから、事故時における責任関係について検討を行う必要がある」としています。

皮肉なことに、国土交通省が報告書を公表した日に、時速約60キロで完全自動運転していた自動車が通行人を死亡させたという事故が報道されました。

【ウーバー自動運転車が死亡事故】

米配車アプリ大手のウーバー(Uber)は19日、アリゾナ州で同社の自動運転車が死亡事故を起こしたことを受け、自動運転車の試験走行を停止したと発表した。同社によると、事故は18日夜、アリゾナ州テンピ(Tempe)で発生。運転席にオペレーターが座った状態で自動運転を行っていた車が、通りを歩いていた女性をはねた。女性は病院に搬送されたが、後に死亡した。自動運転車が通行人を巻き込む死亡事故を起こしたのは初めて。
2016年には米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)が自動運転車業界で初の死亡事故を起こしており、今回の事故を受け、同業界が自動運転車の導入を急ぎ過ぎているのではとの懸念が高まることが予想される。(2018年3月20日 時事通信)

日本では、安倍首相の「2020年までに、運転手が乗車しない自動走行によって、地域の人手不足や移動弱者を解消します」との発言を受けて、無人運転実現に向けた公道試験走行が活発に行われています。

【ご参考】【自動運転、誤差数センチ】

完全自動運転の実現は、視覚障害の人や車イス利用者にとって大きな期待を抱かせる夢の技術です。しかし、それと同時に一般の人には理解できないほど複雑な技術でもあるはずです。利用者が免責される「車のシステムに明確な欠陥がある」ことを見抜ける人はまずいないでしょう。ところが、国土交通省は原則として「自動運転中の事故は所有者に責任がある」としました。

海外では実際に完全自動運転での死亡事故が起きてしまいました。新技術開発に携わる開発者の人たちには、改めて「事故は必ず起きるもの」と想定した、冷静で緻密な開発・実験を期待します。

出典元:読売新聞・国土交通省・時事通信