【スパコン、国から100億円超 関連会社に助成・融資 詐欺事件】

2017年12月17日
朝日新聞

国の助成金をだまし取ったとして東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕されたスーパーコンピューター開発会社社長斉藤元章容疑者(49)の関連会社に、助成金や優遇融資名目で認められた公的資金が100億円を超えることがわかった。特捜部は容疑の助成金以外に不正がないか調べるとともに会社の創業直後から巨額の公的資金が流れ続けた経緯について解明を進めている。

特捜部は、斉藤容疑者が経営する「PEZY Computing(ペジーコンピューティング)」が経済産業省所管の国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から2013年度に助成金約4億3千万円をだまし取ったとして逮捕した。

関係者によると、グループ会社への外注費を水増ししていた。斉藤容疑者は容疑を認め、「別事業の開発に回し、私腹を肥やすためではなかった」と供述。ただ実際には、一部は私的に使ったとみられ、助成金などの使途は社内ではほぼ独断で決めていたという。

P社は社員20人ほどで、設立半年後の10年7月に最初の助成決定を受け、8年間で計約35億円の交付が認められていた。

斉藤容疑者はP社の他にスパコン関連4社の経営に会長などとして関与。このうち「ExaScaler(エクサスケーラー)」(14年設立)は今年、文部科学省所管の同法人「科学技術振興機構」(JST)に産学共同実用化開発事業名目で計60億円の無利子融資決定を受けた。融資の限度額は「原則50億円」だったが、すでに約52億円を受領。スパコン「Gyoukou(暁光)」を開発した。逮捕を受け、JSTは「専門家も入れて融資対象の事業を選び、融資振込時には事業の進捗(しんちょく)も確認した」と説明。一方で、調査を開始した。融資に関する不正の有無や、スパコンの今後の運用などについて聴くという。

「ウルトラメモリ」社(06年設立)も斉藤容疑者が15年に役員に就いて1年余りで、NEDOから少なくとも5億円の助成金を受ける決定を得た。

斉藤容疑者が開発に携わったスパコンは省エネ効率で世界一になるなど注目を集めたが、業界に詳しい複数の関係者は「実用性には乏しかった」と指摘。「部材も高額とは思えず、なぜ100億円もの公金が投じられたのか疑問だ」と話す。
NEDOへの助成金申請を検討したことがある業界関係者も「大量の資料を求められ、審査は厳格。会社設立半年で助成金をもらえるとは驚きだ」と言う。

NEDOは「(助成決定は)定められた手続きを経たと考えているが、どのような成果があったかは捜査に影響があるので公表できない」としている。

ユニオンからコメント

100億円を超える国の助成金をだまし取った詐欺事件の詳細に関するニュースです。
業界関係者の「なぜ100億円もの公金が投じられたのか疑問だ」「会社設立半年で助成金をもらえるとは驚きだ」という声は、「忖度」というキーワードで騒がれた他の助成金詐欺事件でも聞かれました。

【「森友学園」籠池夫妻を逮捕 国の補助金詐取容疑】

学校法人森友学園(大阪市)による国の補助金不正受給事件で、大阪地検特捜部は31日、前理事長の籠池泰典容疑者(64)と妻諄子容疑者(60)を詐欺容疑で逮捕した。
加計学園問題と並び、安倍政権を揺るがした疑惑は、大きな節目を迎えた。
特捜部などによると、両容疑者は豊中市の国有地への小学校舎の建設にあたり、木材建築の普及を目指す国土交通省の補助金を申請。2016年2月下旬、設計業者らと共謀して工事の請負金額を「23億8464万円(税込み)」と水増しした契約書を中間実績報告として提出し、補助金計約5644万円をだまし取った疑いがある。(2017年8月1日 朝日新聞)

【ご参考】【森林環境税、住民税に年1000円上乗せ】

安倍政権が次々に「新しい税金」を導入することはユニオンでも紹介しました。その1つ「森林環境税」が使われるであろう森林環境対策の補助金でも不正受給事件が起きています。長野県の大北森林組合は2007~13年度にかけて「森林作業道整備や間伐を実施したように装い」国や県の補助金約14億5千万円を不正受給していました。この事件では、担当職員の過失を認め、職員に対して損害賠償を請求することが決まりました。

【大北森林組合補助金不正受給 11職員に賠償請求決定】

大北森林組合(大町市)による補助金不正受給事件で、県は12日、指導・監督の不備を問われて国から課せられた加算金約3億5300万円について、県職員11人に損害賠償請求する方針を決めた。それぞれの責任の有無や賠償額は、地方自治法に基づき、県監査委員に対して要求監査を行い、判断を委ねることにした。11人は平成21~25年、県北安曇地方事務所(現北アルプス地域振興局、大町市)に在籍。検討委が阿部守一知事に提出した報告書では、林務課の課長1人と係長3人は書類のチェックを怠るなど地方自治法に抵触する「重大な過失」があったとし、担当職員7人に対しては、現地調査を行わなかったなどとして、民法上の過失を認めた。(2017年9月13日 産経新聞)

「森林環境税」が2024年度から導入されるのは、現在、住民税に年1000円上乗せされている「復興特別税」が終了する時期に合わせてということですが、この税金でも不正受給が横行しています。

例えば、福島県には原発被害対策として国から毎年1兆円の特別予算が交付され、復興に向けた新産業創出に使われています。もちろん私たちが収めた「復興特別税」が原資になっています。その1つ「ふくしま産業復興企業立地補助金」は、福島県内に工場などを新設した会社に初期投資費用の最大4分の3を県が負担するもので、これまで支払われた総額は2千億円にも上ります。この補助金では認定の甘さから詐欺事件が続出しています。

【震災復興関連の補助金10億円詐取、容疑の2人逮捕】

東京電力福島第1原発事故の被災地の産業復興を目的とした企業立地補助金約10億円をだまし取ったとして、福島県警は27日、詐欺容疑で印刷関連会社「ルキオ」(東京都世田谷区)を経営していた古谷庄悟容疑者ら数人を逮捕した。県や捜査関係者によると、ルキオは工場を同県南相馬市に建設し、平成26年3月に操業を始めた。県が同年5月に補助金10億7950万円を交付、一部が不正受給と判明していた。南相馬市の立地補助金5000万円も不正受給したとされ、9月25日付で市が告訴した。(2017年9月27日 産経新聞)

【再生エネ会社役員2人逮捕=補助金2億5000万円詐取容疑】

福島県から補助金約2億5000万円をだまし取ったとして、東京地検特捜部は20日、詐欺容疑で再生可能エネルギー会社「CKU(シーケーユー)」(大阪府)の役員2人を逮捕した。
特捜部によると、2人は2014年、福島県が交付する「ふくしま産業復興企業立地補助金」について、内容が虚偽の請求書を県に提出し、補助金をだまし取った疑いが持たれている。
同補助金は、国の税金が原資となっている。(2017年7月20日 時事通信)

【復興補助金4600万詐欺=容疑で社長ら2人逮捕】

東日本大震災で被災した企業などの復旧支援の補助金約4600万円をだまし取ったとして、福島県警は5日、詐欺容疑で食品製造販売会社「鮮味」(同県郡山市、破産)の元社長遠藤久(55)と、元役員山田年雄(35)両容疑者を逮捕した。逮捕容疑は2012年7月ごろ、国が創設した「グループ補助金」を申請、その後施設修繕費を水増し請求し、13年5月までに補助金約4600万円を不正に受け取った疑い。(2017年12月5 時事通信)

雇用をめぐる助成金の不正受給では、いわゆる「プロフェッショナル」が介在するなど、取締り対策が後手に回っています。例えば、障害者が就職した時に支給される「特定就職困難者雇用開発助成金」では、「平成26年度・不当と認める支給額 15,088,752円」「平成27年度・不当と認める支給額 26,310,191円」と、障害者の雇用数増加に伴い不正受給も増加しているようです。所轄する厚生労働省も、「打つ手がない」ことを認めています。

【コンサル業者、不正受給を助言も 雇用助成金詐欺事件】

国の雇用助成金をめぐっては、中小企業に申請を呼びかけるコンサルタント業者の勧誘が激しくなっている。全国社会保険労務士会連合会の調査では、企業にファクスで営業をかける業者が2014年度は3社、15年度は5社確認できたが、16年度は21社に急増したという。助成金の申請は、社会保険労務士でなければできないと社労士法に定められている。連合会によると、コンサル業者に相談した企業が、雇用実態などを偽るように助言され、結果的に不正受給となるケースもあったという。
連合会は今月から、全国の社労士に、こうした勧誘に注意するよう顧客に伝えるよう要請している。担当者は「助成金制度の趣旨を理解して、きちんと申請できるよう社労士に直接相談してほしい」と話した。経営難の企業向けの雇用調整助成金は、直近3カ月の売上高などの月平均が前年同期比で10%以上減ったことなどが要件。不正受給が後を絶たず、13~15年度は総額約54億3千万円にのぼり、うち4割超が返還されていないことが厚生労働省の調査で明らかになっている。(2017年6月14日 朝日新聞)

【ご参考】【雇用調整助成金54億円不正受給】

【「国が不正に目をつぶってくれた」見せかけ〝教育訓練″に震災助成金6億円】

未曾有の被害を出した東日本大震災は3月11日で発生から丸5年。被災地の復興が進む中、国から震災復興制度の助成金約5億9千万円をだまし取ったとして、詐欺容疑で人材育成会社の社長が大阪府警に逮捕された。男は2月に開かれた初公判で、「国側が不正な内容の申請に目をつぶってくれた」と驚くべき持論を展開した。不正受給が横行した背景には、膨大な申請処理に追われる国側のチェック機能の限界も浮かんだ。
逮捕、起訴された大阪市中央区の人材育成会社「ビジービー」が不正受給していたとされるのは、「中小企業緊急雇用安定助成金(現・雇用調整助成金)」。不況で業績が悪化した中小企業が従業員を休業させたり、教育訓練を受けさせたりした際、企業側が支払う休業手当や賃金の8割を国が助成する制度だ。同制度はもともと、平成20年秋のリーマン・ショック後に企業による解雇が増えたことから、雇用悪化に歯止めをかけるため同年12月に創設された。23年3月の東日本大震災の発生直後、特例制度として被災地での売り上げが全体の3分の1以上を占める企業も支給対象に加えられた。
厚生労働省によると、同助成金(25年4月から雇用調整助成金)の申請件数は26年度までの6年間で約206万件あり、支給総額は約1兆3800億円。このうち不正受給は同期間で1403件、約206億円にのぼった。
雇用を守るための助成金制度にも関わらず、その根幹を揺るがしかねない不正受給。厚労省の担当者は「残念ながら抜本的な不正防止策は見つかっていない。企業訪問などを地道にやっていくしかない」と話している。(2016年3月9日 産経新聞)

安倍首相による「税制を含む大胆かつメリハリのきいた対策を」の掛け声のもと、2018年度税制改正大綱が決定されました。「経済の好循環」「3%の賃上げ」も大切ですが、私たちが収めた税金が「食い物」にされない対策も重要な課題です。「賃上げした会社」への優遇措置が、「賃上げしたことにしてしまった会社」の私腹を肥やすことに使われない対策が必要です。抑止力を強めると同時に、「不正を見抜けなかった職員は損害賠償を請求される」など、即効性の高い対応策を早急に講じるべきでしょう。

出典元:朝日新聞・産経新聞・時事通信