【「東建」のパワハラ認定・・・167万円賠償命令】

2017年12月6日
読売新聞

賃貸住宅建設・仲介大手「東建コーポレーション」(本社・名古屋市)の元社員の40歳代の男性が、上司のパワハラでうつ病になり、退職を余儀なくされたとして、当時の上司と同社に計約752万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が5日、名古屋地裁であった。

野村武範裁判官は、元社員へのパワハラがあったと認め、上司と同社に計約167万円の支払いを命じた。

判決によると、元社員は2012年10月に入社し、兵庫県宝塚市の支店に勤務。40歳代の上司から13年12月頃以降、担当を突然はずされたり、「お前みたいながんウイルスがいると雰囲気が悪くなる」と言われたりするなどのパワハラを受けてうつ病になり、14年10月に退職した。その後、労災認定を受けた。

上司は、発言は叱咤(しった)激励の趣旨だったなどと反論したが、野村裁判官は「教育指導の範囲を逸脱し、過大な心理的負担を与えた」などとしてパワハラと認定。また、相談窓口開設などの同社のパワハラ対策は必ずしも効果があったとは言えず、上司の選任や監督に対する注意が不十分だったとして、同社には使用者責任があるとした。

同社は「判決の詳細を聞いていないので、コメントできない」としている。

ユニオンからコメント

裁判所が、「上司のパワハラでうつ病になり、退職を余儀なくされた」労働者の主張を認め、会社と上司に慰謝料の支払いを命じたというニュースです。パワハラが争われる裁判では、会社と加害者個人の双方に賠償命令が出されます。

【スーパー「いなげや」に賠償命令 障害者に女性上司がパワハラ】

首都圏に展開するスーパー「いなげや」で働いていた知的障害がある男性(27)が、上司の女性からパワーハラスメントを受けたとして約580万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、請求を一部認め、同社と女性に計22万円の支払いを命じた。
判決によると、男性は平成20年、障害者の雇用を進めていたいなげやに入り、横浜市の店舗でパンの袋詰めなどを担当。女性から「仕事ぶりが幼稚園児以下だ」などと複数回暴言を吐かれ、25年に退職した。(2017年11月30日 産経新聞)

「いなげや」では、男性社員の過労死が2016年6月に労災認定されています。2003年にも従業員が過労自殺して労災認定されていますが、事件の教訓を活かすことができなかったようです。2017年11月16日に更新された「労働基準関係法令違反に係る公表事案」に掲載される会社数もいっこうに減少しません。

【ご参考】【労働基準関係法令違反に係る公表事案】厚生労働省(PDF:428KB)

労働基準法に違反している職場では、はたらく人に「自分の身は、自分で守る」意識がなければ自覚のないまま精神的に参ってしまうことがあり得ます。無理して仕事を続けて、うつ病になってしまうと正常な判断をすることが難しくなってしまいます。うつ病の新しい治療法が保険適用になるという朗報を紹介します。それでも、一人一人が十分に気を付けることが大切です。

【うつ病を磁気刺激で治す 「rTMS療法」薬事承認】

脳に外部から磁気による刺激を加えることでうつ病の症状を緩和する治療法が注目されている。反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)と呼ばれるもので、2017年9月に厚生労働省が医療機器として薬事承認し、18年中には保険で治療が受けられるようになる。抗うつ剤による薬物療法の効果がなく、長期間苦しむ患者の治療への適用が期待されている。
都内に住む40代の会社員Aさん。約1年前にうつ病と診断され、近くの医院で抗うつ薬を処方された。症状が軽快したため、勤務先の復職支援制度を利用して最初は休職扱いのまま軽作業に従事し、その後、職場復帰した。
だがAさんは復職後に仕事のミスが目立つようになり、複数の業務を並行して行うことも困難になった。そのことを悩むうちにうつ病が再発し、再び休職を余儀なくされた。
Aさんは、大学病院を紹介され、薬物療法と併せてrTMS療法を受けることになった。約6週間の治療後、それまでの抑うつ気分や意欲低下などの症状は軽減した。2カ月後、Aさんは職場復帰を果たした。前回復帰時のような仕事のミスも少なくなり、順調に仕事を続けている。
うつ病は、抑うつ気分や興味・関心の喪失が主な症状で、国内の患者数は100万人以上と推計されている。治療の中心は抗うつ剤による薬物療法だが「約30%の患者は薬物療法の効果がないというデータがある。こうした患者に有望なのがrTMSです」と東京慈恵会医科大学の鬼頭伸輔准教授はいう。鬼頭氏は00年代前半から、杏林大学や国立精神・神経医療研究センターで、うつ病患者へのrTMS療法を臨床研究として約150例手がけてきた。この治療法の日本での第一人者だ。
うつ病患者へのrTMS療法は、磁場をパルス状に連続発生させるコイル装置を患者の頭部に近づける。磁場の働きで生じた渦電流が頭蓋骨の内部まで到達して脳神経細胞に働きかける。うつ病患者の多くは、脳の左前方領域の機能が低下し、神経細胞間で情報を伝えるドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が弱くなっている。磁場によって脳を繰り返し刺激することで、こうした神経の働きが改善されるという。治療期間は通常4週間から6週間。1秒当たり10回の磁気パルス刺激を1日1回40分程度、週5日実施する。患者は入院または通院しながら治療を受ける。磁気刺激の過程で頭部の痛みや不快感を覚える人もいるが、治療を続ける中で痛みなどは軽くなっていくという。磁場を発生させるため、刺激部位付近に人工内耳やペースメーカーなどの金属がある場合は治療をさける。また、まれにけいれんを誘発する場合があるので、このリスクを考慮した治療計画を立てる。
鬼頭氏によると、国内でのこれまでの臨床研究では、患者の36%がうつ病の症状がほぼ消える「寛解」となった。寛解患者の6割は治療効果が持続する一方、3割程度は症状が再発したという。患者の中には、Aさんが最初の職場復帰後に仕事のミスに悩んだように、認知機能の低下がうつ症状改善後も残り、これがうつ病再発のきっかけになることもある。認知機能障害を軽減することが、復職の成否にも影響する。鬼頭氏は「rTMS療法では注意障害や遂行機能障害などの副作用は生じず、むしろ認知機能が治療後に改善したという報告が多い」と説明する。
17年9月、薬物療法が効かない症状が中等症以上のうつ病患者向けにrTMS機器が薬事承認された。ただこの治療を受けられる医療機関はまだ限られており、治療設備の導入と治療に習熟した医師を養成するのが課題だ。鬼頭氏は「治療ガイドライン作りや医師向けの研修を進め、rTMS療法の裾野を広げたい」と話す。(2017年11月30日 日本経済新聞)

出典元:読売新聞・産経新聞・厚生労働省・日本経済新聞