【森林環境税24年度導入 住民税、年1000円上乗せ】

2017年12月1日
東京新聞

政府、与党は30日、森林の間伐費用などを賄う新税「森林環境税」を2024年度から導入する方針を固めた。全国約6000万人が負担する個人住民税に1人当たり年間1000円を上乗せして徴収する。資本金1億円超の大企業に対し、20年度から法人税や消費税などの電子申告を義務付けることも確認。いずれも18年度税制改正大綱に盛り込む。

森林環境税の税収は約600億円を見込む。森林面積などに応じて自治体に配分する方針だ。

電子申告の義務化は、企業の手間を省いて生産性を高めるとともに、税務当局のコストを削減する狙いがある。災害やサイバー攻撃などでインターネットが利用できない場合は、例外的に書面での申告を認める。

このほか、宅地相続の優遇措置の適用要件を厳しくする方針も固めた。優遇措置は1人暮らしのお年寄りが亡くなって、別居していた子などが実家に戻って住む場合などに、相続する宅地の相続税を8割減らす仕組み。現在は、相続人が本人や配偶者名義の持ち家に住まず、借り家に居住していることなどが適用要件となっている。

この制度を悪用し、自分の持ち家を親族らに売却して賃貸する形を取ることで優遇措置を受けるケースが増加している。こうした税逃れを防ぐため、3親等内の親族が所有する家に住む人などは優遇対象から外すよう要件を見直す。

一方、自民、公明両党の税制調査会は30日に開いた会合で「観光促進税」を創設することで一致した。観光庁の有識者会議は出国時に1人1回当たり1000円以内を徴収して観光施策に充てる仕組みを提言しており、与党の税調で今後調整する。

■たばこ増税1本3円軸

政府、与党は30日、2018年度税制改正でたばこ税増税に踏み切る方針を固めた。紙巻きは18年10月から4年かけて1本当たり3円引き上げる案を軸に検討。新型たばことして急速に普及してきた加熱式も増税を目指して調整する。

たばこ増税は10年10月以来。自民党税制調査会は30日、増税方針で一致し、時期や幅を引き続き議論する。加熱式も自民党は増税を実施する考えだが、公明党税調の30日の会合で「発売されて間もない」「健康への影響がまだ分かっていない」といった異論が出たため、慎重に調整する。

1本3円の増税となれば、20本入りの1箱当たりでは60円の値上がり要因となる。たばこ離れに拍車が掛かりそうだ。紙巻きのたばこ税は現在、1本約12円。1箱440円の商品の場合、たばこ税は約244円で、消費税を加えると計約277円が課されている計算だ。

ユニオンからコメント

住民税に1000円上乗せされる「森林環境税」が新設されるというニュースです。
2024年度から導入する理由は、現在、住民税に年1000円上乗せされている「復興特別税」が終了するからです。

森林環境や水資源の保全を目的とした税金は、すでに37府県と横浜市が住民税に年300~1200円を上乗せして集めています。

【森林環境税を導入する前に】

手入れがされずに放置されている人工林を集約する新たな制度を林野庁がつくる。森林を適切に管理することは地球温暖化対策として重要なうえ、保水力を高めて土砂災害を防ぐ効果もあるが、問題は財源だ。政府・与党は「森林環境税」の創設を打ち出した。他の予算を見直して財源を捻出するのが先だろう。
「森林バンク」と名付けた新制度は所有者が間伐などをできない場合、市町村が管理を受託し、やる気のある事業者に再委託する仕組みだ。一度に伐採や間伐をする森林を集約できれば、作業効率が向上してコストが下がる。財政力が弱い市町村が継続的に事業に取り組むためには安定財源が要ることは理解できる。しかし、森林環境税は個人住民税に上乗せして徴収する方針だ。直接的な恩恵を感じづらい都市住民の理解を得られるだろうか。
全国の8割の都道府県や横浜市はすでに、似たような税金を徴収している。都道府県と市町村の役割がどうなるのかについても判然としない。人材が乏しい市町村では、都道府県が作業を代行する手もあるだろう。森林整備は必要とはいえ、新税の前に検討すべき課題が多いと言わざるを得ない。(2017年11月19日 日本経済新聞)

【出国税1000円、19年度導入 27年ぶり新税】

政府は日本を出国する旅行者らを対象に、「出国税」として1人あたり1000円を徴収する方向で調整に入った。航空運賃などに上乗せする。年末までにまとめる2018年度税制改正大綱に盛り込み、19年度からの実施を目指す。導入されれば、恒久的に徴収する国税としては1992年の地価税以来、27年ぶりの新税となる。(2017年10月31日 毎日新聞)

【「出国税」改め「観光振興税」に 政府が目的明確化狙い】

政府が、観光政策の財源を捻出するため、来年度税制改正で創設を検討している、出国時に徴収する新税について、名称を「観光振興税」とする方向で調整していることが9日、分かった。これまでは、便宜的に「出国税」という名称が使われてきたが、観光目的の税金であることを明確にする。観光庁の有識者会議が同日、田村明比古長官に手渡した提言では、税の導入時期について「可能な限り速やか」と明記。東京五輪・パラリンピック前の平成31年度までの導入を目指す。
税収の使い道は、欧州や米国など海外での観光PRのほか、最先端技術を活用した出入国管理の保安強化や手続きの迅速化、バーチャルリアリティー(仮想現実)技術を導入した観光案内や標識の多言語対応に充てる方針だ。(2017年11月10日 産経新聞)

森林環境税など、使途を特定のものに限る税金は「目的税」と呼ばれます。特定財源は使い道が拡大しやすく、「無駄遣い」を生む可能性が高いことを指摘されています。すでに同じ目的の税金があるのに、二重負担になる重複課税の問題や使い道のすみ分けなどの議論を待たず「いつから導入するか」だけが議論されています。総選挙で勝ったからなのでしょう、「どこに課税するか」も活発になってきました。消費税の増税時期までに、あらゆる分野に課税してしまおうということなのかもしれません。

2012年に政権を奪還した後の安倍首相は、外遊するたび「シリアの女性支援へのODA3000億円」「難民支援に2850億円拠出」「ASEANに5年間で2兆円規模のODA拠出」「アフリカへ3兆円支援」「インドに5年で3兆5000億円の官民投融資」「アジアのインフラ投資支援に約13兆円を提供」と、世界中にばら撒いてきた税金は総額約40兆円になります。安倍政権は、使い方も豪快ですが、集め方にも容赦がありません。

使われた税金が私たちの将来や生活にどのような恩恵をもたらすのかについては、納税者である私たちが知ることはなかなかありません。もしかすると「騙し取られた」ケースもあったのではないかと疑念を持ってしまうほど不明瞭です。

【ご参考】【公的マネーが大株主 980社】

税金の使い道に、「最先端技術を活用」などの綺麗な言葉が並べられた時には、注意が必要です。賛否について丁寧な議論がされにくくなるからです。「集めた税金がどのように使われて、どのような効果を生んだのか」を、もちろん安倍政権が丁寧に説明をするはずがありません。私たちにできることは「税金がどのように使われたのか」を厳しくチェックして、「集めた目的に見合った効果があったのか」を検証していくことでしょう。

出典元:東京新聞・日本経済新聞・毎日新聞・産経新聞