【<障害者施設>傷害容疑で職員逮捕へ 栃木県警】

2017年9月11日
毎日新聞

栃木県警は11日、宇都宮市西刑部町の知的障害者支援施設「ビ・ブライト」で今年4月、職員が入所者の20代男性を暴行し、腰の骨を折るなどの大けがをさせた疑いが強まったとして、同施設と運営する社会福祉法人「瑞宝会」本部など関係先を傷害容疑で家宅捜索した。捜査関係者によると、県警は複数の職員から任意で事情を聴いており、容疑が固まり次第、関与した職員を傷害容疑で逮捕する方針。

施設などによると、男性の入所は昨年8月で、今年4月16日昼ごろに体調が悪化。
施設などによると、男性の入所は昨年8月で、今年4月16日昼ごろに体調が悪化。自室で休憩していたが、血圧が下がって意識がもうろうとしたため、同日午後8時ごろに救急搬送された。男性は骨折のほか、脾臓(ひぞう)から約1リットルの出血があったといい、一時は意識不明となった。現在は回復しているが、全治6カ月の診断を受けたという。

施設の入所者は約30人で、看護師を含む職員17人が3交代制で勤務。家宅捜索後に取材に応じた瑞宝会の土屋和夫理事長(59)は「事件の可能性が高くなり、非常に残念。真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めたい」と頭を下げた。

ユニオンからコメント

障害者支援施設で職員による暴行事件が起き、元職員の男(22)が傷害容疑で逮捕されたというニュースです。栃木県警は連絡が取れていない施設職員の女(24)についても同容疑で逮捕状を取り行方を追っていることが報じられています。

このニュース以外にも、障害者施設での暴行事件がいくつか報道されました。事件発覚後、責任者らは揃って「深く反省し、再発防止に努めたい」とコメントしています。

【暴行 障害者施設で男性職員 防犯カメラで判明】

知的障害者の入所施設「カザハヤ園」(津市戸木町、定員50人)で、重度障害の男性(33)が、男性職員(36)から暴行を受けていたことが分かった。津市は虐待と認定し、県に報告した。施設は男性に謝罪したという。津市障がい福祉課によると、職員は、施設1階の共有スペースの床に寝そべっていた男性の尻と肩を足で2、3回蹴った。男性にけがはなかった。施設内の防犯カメラの映像で暴行が判明した。職員は施設の聞き取りに対し「男性が暮らす2階に誘導するため移動を促したが、動かなかったので蹴った」と説明したという。運営する社会福祉法人「正寿会」の伊藤重行理事長は市を通じて「深く反省しており、再発防止に努める」とコメントした。(2017年9月5日 毎日新聞)

【知的障害者の顔殴打、元施設職員逮捕】

グループホームに入居する知的障害者の男性(18)の顔を殴るなどしてけがをさせたとして、大阪府警守口署は25日、施設の元職員(37)を傷害の疑いで逮捕した。「けがをさせたのは間違いない」と容疑を認めているという。逮捕容疑は7月20日夜~21日朝、勤務していた同府守口市のグループホームで、知的障害がある入居者の男性の顔を殴ったり、引きずり回したりして顔や腕などに軽傷を負わせたとしている。守口署や施設の運営会社によると、21日朝に出勤した女性職員が男性の顔や体にあざや擦り傷があるのに気付き府警に通報した。(2017年8月25日 毎日新聞)

【知的障害支援学校 「罰ランニング」で熱中症重体】

東京都教委は25日、杉並区永福1の知的障害特別支援学校「都立永福学園」(朝日滋也校長、児童・生徒402人)で、高等部1年の男子生徒(15)が屋外でのバスケットボール部の練習中に熱中症で倒れ、意識不明の重体になったと発表した。顧問の男性教諭(31)が課したタイムを切れなかった罰として、追加で走らされていた最中に倒れたという。走らせた顧問は都教委の調査に「障害のある子でも高いハードルを乗り越えることで大きく育つと思ったが、今は深く反省している」と話したという。都庁で記者会見した朝日校長は「深く反省している。全ての部活動の顧問を呼び、二度とこのようなことがないように指導した」と述べた。(2017年8月25日 毎日新聞)

【性的虐待NPOの男性職員、障害者に】

三原市のNPO法人の男性パート従業員が、ガイドヘルパーとして担当する障害のある県内の女子中学生(当時)に性的虐待をしていたことが1日、三原市への取材で分かった。市によると、このNPO法人は障害者福祉施設を運営。男性は2015年ごろから月1回、女子生徒の買い物の付き添いを担当し、16年の夏から秋ごろ、ドライブに誘い、車の中で生徒の体を触ったり、キスをしたという。(2017年9月2日 毎日新聞)

ソーシャルハートフルユニオンの相談掲示板にも(障害者へのセクハラパワハラ行為)のタイトルで相談が寄せられたばかりです。障害者施設からアルバイトに来ている16歳の女性に対し、責任者が飲酒させたり、深夜から早朝まで2人きりで連れ回したりといった内容でした。この責任者は「この事は周りには言わないでね」と口止めをしていたそうです。

【ご参考】【障害者へのセクハラパワハラ行為】

【障害者虐待 最多3154人、施設職員被害が増加】

厚生労働省は16日、2015年度に虐待を受けた障害者数は3154人(前年度2703人)に上ったと発表した。12年度の調査開始以来、最多。親らによる虐待被害は減少しているものの、施設内での職員らによる虐待被害者は569人と増加し、過去最多を更新した。15年度に親や施設職員、事業主などからあった虐待の通報・相談件数は計7458件。国や自治体が虐待と判断したのは2439件で、被害者数は3154人だった。
施設職員らによる虐待の通報件数は2160件で前年度から24%増加し、前年度より28件多い339件が虐待と認定された。障害者虐待防止法(12年施行)に定めた発見者による通報義務が浸透し、軽度のうちに通報する例が増えているという。被害者569人のうち474人が知的障害者だった。自治体が調べた発生要因(複数回答)は「介護技術の問題」(乱暴に扱うなど)が56%、「職員の資質の問題」が51%。一方、「虐待を助長する組織風土や職員間の関係性の悪さ」(25%)、「人員不足や多忙さ」(23%)も少なくなかった。厚労省の担当者は「職場環境も虐待の要因にあり、研修の実施や処遇改善を図りたい」としている。(2016年12月16日 毎日新聞)

【ご参考】【平成27年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等】厚生労働省

【障害者「職場で虐待」972人=給料搾取や暴力】

2016年度に職場で給料の搾取や暴力、わいせつ行為などの虐待を受けた障害者が972人いたことが26日、厚生労働省のまとめで分かった。全国の労働局が障害者虐待防止法に基づき、虐待が疑われるとの通報などを受けて1316事業所を調査した。うち581事業所で虐待の事実を確認し、是正指導などを行った。虐待したのは事業主や上司ら591人。卸売業で働く知的障害の20代女性はプレゼントと引き換えに、上司ら複数の男性から性的関係を強いられていた。このほか、知的障害のある50代男女3人は、住み込みのパート従業員として週40時間以上働いても週給2000~4000円しか渡されず、経営者が最低賃金法違反容疑で書類送検されたケースもあった。事業所を業種別で見ると、製造、医療・福祉、卸売り・小売りの順に多い。規模は従業員50人未満が8割を占め、1000人以上も2カ所あった。(2017年7月26日 時事通信)

【ご参考】【「平成28年度使用者による障害者虐待の状況等」の結果を公表します】厚生労働省

2012年10月1日から障害者虐待防止法が施行され「発見者に通報義務が課された」ことで、事件が表面化しやすくなったことは事実でしょう。しかし、組織的な隠ぺいや、被害者に口止めしたり脅かしたりしている事例もありますから、まだまだ氷山の一角といえます。

「職員の資質」「虐待を助長する組織風土」「人員不足や多忙さ」を理由にして、一向になくならない障害者虐待事件を、どうすれば根絶できるのでしょう。例えば、「再発防止に努める」で許してしまうのではなく、営業停止や補助金の返還、国や市が施設運営に介入するなど、厳罰を科すような議論が必要な時期かもしれません。厚生労働省が実態調査をして虐待件数を公表し、「増加しました、減少しています」で終わらせてしまうのではなく、事件の検証を重ね、根絶に向けた抜本的な取り組みを始めることに期待しています。

出典元:毎日新聞・厚生労働省・時事通信