【精神・発達障害者、働きやすく 神戸で支援策学ぶ】

2017年8月30日
神戸新聞

職場の同僚や部下の障害への理解を深める「精神・発達障害者しごとサポーター」の養成講座が29日、神戸市中央区東川崎町1の神戸クリスタルタワーであった。

厚生労働省は2017年度中に全国で約2万人を養成する計画で、兵庫労働局は今後も兵庫県内各地で開催する。サポーターを増やすことで、障害者が働きやすい職場づくりを促す。

厚労省によると、ハローワークを通じた障害者の就職件数はこの10年で倍増した。うち精神・発達障害者の割合は03年度に15.3%だったが、16年度には44.4%と大幅に増え、兵庫も同傾向にある。

ただ、精神障害や発達障害は目に見えにくいため、周囲の理解が得られにくい面がある。特に発達障害は、大人になってから気づくこともある。職場にうまく適応できずに短期間で辞めるなど、就労後の定着が大きな課題になっている。

養成講座は約2時間で、精神保健福祉士や臨床心理士ら専門の職員が講師を務める。兵庫では10月まで各地で養成講座を開き、希望する事業所には職員が出前講座も行う。

この日は、神戸市内の企業などから約110人が参加した。担当職員が企業や障害者からの相談事例を紹介。「人によって症状や特性が異なり、それぞれに対応のポイントが必要になる。具体的で分かりやすい言葉を使うことが大切」などと説明した。

流通・サービス業の男性役員(44)は「長く職場の戦力になる人材を増やせるよう、企業側も障害について学ぶ必要がある」と話した。

ユニオンからコメント

厚生労働省が創設した、「精神・発達障害者しごとサポーター制度」の養成講座が神戸市で開催されたというニュースです。

この制度は、精神障害者がはたらきやすい職場になるよう、一般の従業員にサポーターとして支援を手助けしてもらうことを趣旨に掲げています。厚生労働省は、2018年3月末までにサポーター2万人を養成する方針を打ち出しました。東京都や神奈川県など、各都道府県のホームページにも講座開講の案内が掲載され始めています。

【ご参考】【精神・発達障害者しごとサポーター養成講座】厚生労働省(PDF:280KB)

【ご参考】【精神・発達障害者しごとサポーター養成講座を開講します!】東京都労働局(PDF:232KB)

【ご参考】【精神・発達障害者しごとサポーター養成講座】神奈川県

【ご参考】【精神障害者、職場に支援役】

就職した精神障害者の多くが短期間で離職してしまう実態は、あらゆる調査結果から明らかです。そのため、職場定着が大きな課題に上げられています。専門知識を身に付けた同僚が増え、職場の理解が深まることは、一定の効果が期待できるでしょう。

ひとつ気になるのは、「支援しなければ」が前提になっていることです。養成事業について説明する厚生労働省の文書には、「精神・発達障害者を暖かく見守り」や「精神・発達障害者に寄り添い」といった言葉が数多く登場します。

現実を見ると、会社で「暖かく見守ってほしい」「寄り添ってほしい」と願っている人は皆無といえます。精神障害者の多くは生活面で自立していますし、ユニオンに寄せられる相談内容を見ても、「支援すること」では解決しない問題のほうが多いように感じます。障害者の多くが「障害を理解してほしい」と願うのは、周囲に知ってもらえなければ「はたらきづらい」からに他なりません。

日々の職場では、「寄り添い、見守る」ことでは解決しない問題も起こるでしょう。1人の社会人として向き合わなければならない場面は少なくありません。「暖かく見守り、寄り添う」だけでない、「対等な労使関係」も職場に備わっていなければならない視点です。

もちろん、精神障害者がはたらきやすいと感じる職場づくりには、ある程度の専門知識が必要ですから歓迎すべきことです。しかし、サポーター養成講座を受講した人が、すべての面で対応するのは無理があると言っていいでしょう。これまで「寄り添い見守って」くれていた人が、急によそよそしくなれば、職場全体が「はれ物に触る」対応になってしまいかねません。職場で選任されている障害者職業生活相談員と連携するなど、「面倒なことはサポーター任せ」にならない取り組みが職場には求められます。

また、職場定着に必要な配慮は、がん患者やLGBTの人への配慮をイメージしたほうが効果的なケースがあります。例えば、ヤフー株式会社は、障害者従業員に(通常の有給に加算して)年6日の有給付与を制度にしました。有給は福利厚生の1つですが、「福利厚生の充実」はわかりやすい制度です。「暖かく見守る支援」ばかりに偏らず、誰もが「はたらきやすい制度を充実させる」企業の工夫や努力にも期待しています。

出典元:神戸新聞・厚生労働省・東京都労働局・神奈川県