【クレディセゾン、全従業員を正社員に 雇用制度発表】

2017年8月14日
日本経済新聞

クレジットカード大手のクレディセゾンは14日、9月からアルバイトを除く全ての従業員の雇用形態を正社員に一本化すると発表した。1時間単位での有休取得を可能にするなど福利厚生を充実させ、1つの雇用制度でも柔軟な働き方に対応する。

全社員約4100人のうち、約2200人が対象となる。テレワークや、部門ごとのフレックスタイム制も順次導入する。雇用形態は1つでも一人一人が働き方を選びやすくする。介護や育児以外にも、それぞれの事情に合わせて働けるようにする。

当初は年間数億円のコスト増になる見通し。雇用契約を無期化するだけではなく、確定拠出年金や賞与といった福利厚生なども含めて全ての社員の待遇を同じにするのはきわめて珍しい。

ユニオンからコメント

クレディセゾンが「全従業員を正社員にする」と発表したというニュースです。

全社員の半数以上が対象で、時給制のパート社員を月給制・無期雇用の正社員に転換し、年2回のボーナスを支給、福利厚生を向上させるなど待遇を改善して人材確保につなげる狙いがあるようです。

【全従業員を正社員に 2200人転換、人材確保】

クレジットカード大手のクレディセゾンは9月、従業員の雇用形態を正社員に一本化する。
パートタイムや嘱託などの区分をなくし、正社員と同じ給与体系や福利厚生などの待遇を適用する。「同一労働・同一賃金」を踏み込んで先取りし、人材確保につなげる。
クレディセゾンでは、役割に応じて正社員、専門職社員、嘱託社員、パートタイム社員の4つの雇用形態がある。正社員以外は賞与がなかったり福利厚生が限定的だったりしている。9月中旬から正社員以外の雇用形態をなくす。正社員になるための勤務期間の条件はなく、改めて登用試験なども実施しない。賞与を含めた賃金体系を正社員と同じにするほか、有給休暇や確定拠出年金などの福利厚生も得られるようにする。同社は時短勤務やテレワークの導入で、雇用を一本化した後も柔軟な働き方に対応できるようにする。雇用契約の期限をなくしたり、「限定正社員」などに切り替えたりする例は多いが、全従業員を限定なしの正社員に切り替えるケースは珍しい。(2017年8月11日 日本経済新聞)

【ご参考】【持続的成長に向けて、人事制度を改革】株式会社クレディセゾン(PDF:528KB)

クレディセゾンの新人事制度では、「全員を無期雇用・役割等級の元同一労働同一賃金を実現(職能・職務等級を廃止)・全員に年2回賞与を支給・確定拠出年金制度等、福利厚生の統一」が実施されます。人事評価でも、年齢・キャリアではなく、全員に同じ評価基準を適用する「役割等級」を導入することで、意欲のある社員が早期に難易度・期待度の高い役割につくことが可能になるようです。

また、「労働時間・労働スタイルの(選択肢を拡充して)働きやすい環境を整備する」ため、有給休暇を1時間単位で取得可能に、(育児・介護に限らず)自己啓発のための短時間勤務も認め、テレワーク・フレックスタイム制を実施するとしています。政府は気づいていませんが、働き方改革成功のカギは「(労働者の)選択肢の広がり」に尽きます。

安倍政権が掲げる「同一労働同一賃金」は、ガイドライン案で(正規・非正規の不合理な待遇差を是正する)として、社員食堂の利用や慶弔休暇を取り上げている程度です。政府案がみすぼらしく見えてしまうほど鮮やかな改革です。さらに、2018年4月1日からの「無期転換ルール」を問題視すらしていません。

【ご参考】【同一労働同一賃金ガイドライン案】首相官邸(PDF:280KB)

【ご参考】【有期契約労働者に関する調査】

これは、働き方改革の実現を待たずに民間企業がいち早く「同一労働同一賃金」を導入したということに他なりません。新しい制度が浸透すれば、ILOが理想に掲げる「同一(価値)労働同一賃金」もいすれ実現するでしょう。他にも、テレワークや週休3日制など、多くの会社が「柔軟な働き方」への取り組みを模索し始めました。

【五輪見据え「テレワーク・デイ」 働き方改革へ、広がるか】

東京五輪の開会式まで3年となった24日、会社に出勤せず自宅などで働くことを政府が呼びかける「テレワーク・デイ」が初めて実施され、官公庁や民間企業900社超(総務省調べ)が参加した。五輪期間中の道路や交通機関の混雑緩和が狙いだが、「働き方改革」にもつながる。テレワークが広がるきっかけになるか。カルビーでは、東京・丸の内の本社に勤務する330人のうち約270人がテレワークを利用した。NTTデータでもこの日、首都圏に勤務する7600人がテレワークや時差通勤を利用した。日本航空のテレワークは原則として勤務場所を自宅に限っているが、今年から7~8月は旅行先でも仕事をしたとみなすしくみが採用された。(2017年7月25日 朝日新聞)

【宅配業界、広がる多様な働き方 佐川は週休3日制導入、他社も検討】

宅配便大手の佐川急便は6日、正社員のトラックドライバーに週休3日制を導入したと発表した。ドライバーの安定的な確保につなげるほか、政府が進める働き方改革に対応した環境を整える狙いがある。物流業界は深刻な人手不足に陥っており、待遇改善や多様な働き方の採用は業界全体に広がりを見せている。ヤマト運輸は19日の発送から宅配便の時間帯指定サービスを見直すなど労働環境の改善に取り組む。3日制も働き方改革の一環として視野に入れており、「労使で議論を積み重ねた上で、採用するかどうかを検討したい」としている。日本郵便は、一部郵便局で1日8時間の平均労働時間を6~10時間に増減できる制度を試験的に導入している。日本通運は5月に多様な人材が働きやすい環境づくりを促す「ダイバーシティ推進室」を新設。3日制についても「将来的に検討の可能性はある」という。(2017年6月7日 産経新聞)

「人手不足にどう対応するか」を企業が模索するなかで、「労働環境や待遇を良くする」ことに行き着いたようです。思いがけず、人手不足がもたらした労働者への朗報です。もちろん、このような取り組みに積極的な会社ばかりではないでしょう。しかし、現在の風潮は待遇改善を求めるチャンスでもあります。「うちの会社はどうせ無理」とあきらめる前に、声を上げることから始めてみる。それが労働者から取り組む「働き方改革」になります。

出典元:日本経済新聞・株式会社クレディセゾン・首相官邸・朝日新聞・産経新聞