【SDGsへの取り組み「日本企業これから」 初の調査報告書】

2017年4月12日
朝日新聞

未来の子どもたちに向けた企業活動はまだこれから――。
国連の持続可能な開発目標(SDGs<エスディージーズ>)への日本企業の取り組みと課題についての初の調査報告書が11日、公表され、そんな現状が明らかになった。

SDGsは地球環境や経済活動、人々の暮らしを持続可能とするために、すべての国が2030年までに取り組む行動計画。調査は、シンクタンクの地球環境戦略研究機関(IGES)と、企業などでつくる「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)」が、GCNJに加盟する国内233社・団体に昨年9月に実施、147社・団体が回答した。

国連が企業向けにつくったSDGsの行動指針を参考に活動していたのは99社・団体。ただし、半分が「SDGsを理解する」という最初の段階にとどまり、最も進んだ「取り組みについて報告とコミュニケーションを行う」は4%だけだった。

課題は「社内の理解度が低い」「社会的な認知が高まっていない」などが多く挙がった。経営層の認知度は28%、中間管理職では5%だった。IGESの森秀行所長は「日本では企業活動とSDGsの関連への理解は広がりつつあるが、行動はこれからだ」と分析した。

ユニオンからコメント

国連が世界中の企業に向けて作った「SDGs」について、日本企業の取り組みが遅れているというニュースです。

「SDGs」とは、全世界が取り組まなければならない目標として、2015年9月に国連で採択された、「持続可能な開発のための(2030アジェンダ)」に基づき、具体的に(持続可能な開発目標)として設定された17の目標と169の狙いのことです。

アジェンダ(Agenda)とは、公的機関が行う行動計画や日程表、スケジュールを表す言葉です。国連に加盟している日本が守らなければならないスケジュールでもあります。

【SDGsって何?】

SDGs(Sustainable Development Goals)。地球環境や経済活動、人々の暮らしなどを持続可能とするために、すべての国連加盟国が2030年までに取り組む行動計画。15年の国連総会で全会一致で採択された。
「誰も置き去りにしない(leaving no one left behind)」を共通の理念に、平等な教育、気候変動への対策など17分野からなる。「各国の所得下位40%の人々に国内平均より高い所得の伸びを実現」といった具体的な目標は、169項目に及ぶ。

グローバル化した世界では途上国への開発支援だけでは問題が解決しないとの認識のもと、先進国が国内で取り組む課題を新たに盛り込んだ。ジェンダー平等の達成や、国内の不平等を減らすこと、効果的で責任ある包摂的な制度を構築すること、安全で働きがいのある仕事の提供など、日本も取り組むべき課題が入っている。日本政府は昨年5月、安倍晋三首相を本部長とする「SDGs推進本部」を発足。企業やNGO、有識者を招いた「円卓会議」の意見を集約した上で、昨年末に、実施計画を発表した。(2017年1月31日 朝日新聞)

【ご参考】【持続可能な開発目標(SDGs)推進本部】首相官邸

【ご参考】【持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の概要】首相官邸(PDF:88KB)

国連は、「地球規模で人やモノ、資本が移動するグローバル経済の下では、一国の経済危機が瞬時に他国に連鎖するのと同様、気候変動、自然災害、感染症といった地球規模の課題もグローバルに連鎖して発生し、経済成長や社会問題にも波及して深刻な影響を及ぼす時代になってきている」として、世界全体の経済・社会や環境を調和させる統合的取組として(2030アジェンダ)を作成しました。

(2030アジェンダ)は、取り組むべき課題として次のように記しています。

―我々は、2030年までに以下のことを行うことを決意する。
―あらゆる貧困と飢餓に終止符を打つこと。
―国内的・国際的な不平等と戦うこと。
―平和で、公正かつ包摂的な社会をうち立てること。
―人権を保護しジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメント(※能力開化や権限付与)を進めること。
―地球と天然資源の永続的な保護を確保すること。
―そして我々は、持続可能で、包摂的で持続的な経済成長、共有された繁栄及び働きがいのある人間らしい仕事のための条件を作り出すことを決意する。

包摂的(ほうせつてき)とは、「経済や社会は、技術・生物としてのヒト・自然環境・空間など、様々な存在を取り込まない限り存続することができない」ことから、統合的に取り込むということです。

(2030アジェンダ)は、「誰一人取り残さない」を基本理念とし、子供、若者、障害者、HIV(エイズ)と共に生きる人々、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移民などへの取組を各国に求めています。

日本政府は、「国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、これらの脆弱な立場におかれた人々にも焦点を当て、また、人間の安全保障については、SDGsの実施においても一貫して開発協力の指導理念として位置づける」と表明しています。

(2030アジェンダ)には、「透明性と説明責任が重要である」として、「政府の取組の実施の状況について高い透明性を確保し、定期的に評価・公表し、説明責任を果たす」と書かれています。そして「新たな施策の立案や施策の修正に当たっては、公表された評価の結果を踏まえて行う」ことを求めています。

日本版の(SDGs)実施指針には、国連で採択された趣旨を歪曲して「一億総活躍社会の実現」の一文が盛り込まれていますが、「透明性と説明責任」について違和感を感じざるを得ません。SDGsの採択に関わったトーマス・ガス氏(国連経済社会局事務次長補)のインタビューを一部抜粋して紹介します。

「指導者は市民に対して説明責任があります。なぜなら、指導者と人々との間の社会契約が結ばれるからです。説明責任は、【上に向かって・外に向かって】から、【中に向かって・下に向かって】へと移行しつつあります」

「SDGsは、【誰も置き去りにしない】と約束しています。これからは、簡単に最大の効果が出るよう求めて、富が上から下へ滴り落ちるように広がるトリクルダウン効果を狙うだけではいけません。最底辺にいるのが誰なのかを明確にし、彼らを強くしていくことに最初から注力するのです」

(2030アジェンダ)には、労働組合に関する一文があります。

「労働組合は、社会対話の担い手として、集団的労使関係を通じた適正な労働条件の確保をはじめ、労働者の権利確立・人権・環境・安全・平和などを求める国内外の取組を通じ、ディーセント・ワークの実現や持続可能な経済社会の構築に重要な貢献を果たすことが期待される。政府・地方自治体におけるSDGsの関連施策の立案・実施に際し、労働組合の参加と対話を引き続き推進していく」

「障害者のための労働組合」であるソーシャルハートフルユニオンも、はたらく障害者の権利や安全な職場環境を守り、ディーセント・ワークの実現に貢献できるよう、これからも努力を続けていきます。

出典元:朝日新聞・首相官邸